空き家を購入して活用することは、国をあげての取り組みとして大きな課題になっています。
そのような空き家に愛着を持ち、リフォームして住む人は実は少なくありません。
今回は空き家を探してリフォームし、自分の理想とする生活を手に入れた方たちの体験談をご紹介します。
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空き家をカフェ兼設計事務所兼自宅に活用
建築士として設計の仕事をしている方の空き家活用体験談です。
もともとは神奈川の古民家を借りて自宅兼事務所としていましたが、家を購入することを検討し、金沢の築80年以上の町屋を購入して自ら改修しリニューアルしました。
購入当時の空き家はかなり腐食が進んだ状態だったようです。
外観はモルタル壁に覆われ、床は相当に腐食していたとのこと。すでに20組ほどが内覧していたのですが、あまりの惨状に諦めたような物件です。
しかし建築士であるご本人の目には、すでにこの腐敗した空き家の未来の姿が浮かんでいたようです。
そこでこの空き家を改修するにあたり、利用できる制度について調べることからスタートしました。
まず金沢では、重要伝統的建造物群保存地区にある町屋の外観・構造の修理と復元に最大8割(1,500万円まで)の補助金が交付される制度を利用できるか確認したとのこと。
そしてその補助金交付の対象となることがわかり、この空き家の購入と改修に必要な費用は地元の金融機関から借り入れ、2年かけて修繕したそうです。
生まれ変わった町屋にはカフェスペースと2つの茶室、オフィス兼自宅スペースという贅沢な空間が生まれました。今では金沢の四季を楽しみながらここで生活しているそうです。
広島県坂町のデイサービス兼自宅
広島県坂町は海あり山ありの自然に恵まれた町です。
ここに移住してきた施主が空き家だった古民家を改修して、放課後等デイサービスのスペースも備えたリフォームを施しました。
放課後デイサービスのスペースを作ったのは、奥様が障害のある子どもや発達に特性のある子どもたちが放課後に利用できる福祉サービスを提供したいという希望があったからだそうです。
しかしこの空き家のリフォームにはかなり手こずったそうです。
長く空き家として放置されたことから、建物にゆがみが生じていたからです。これを直すために柱を継ぎ足し、なんとか垂直に戻したとのこと。
リフォームコストを抑えるため、自分たちでできることはなるべく自分たちで行ったそうです。
自宅スペースはもともと納屋や牛舎だったところを改修しています。
しかし本来は居住用ではないため、天井がかなり低かったそうです。ここをリビングキッチンスペースとするため、低い天井を高くするかわりに地面を手で60センチメートル以上も掘ったとのこと。
そのような苦労の甲斐があって、満足できる居住空間が生まれたと語っています。
空き家バンクを利用して購入した物件価格は870万円、リフォーム費用は1,600万円ほどで、自宅部分の費用は800万円とのことです。
海を一望できるゲストハウスに
こちらも広島県での空き家活用事例です。施主はすでに数軒の空き家をリフォームしてきた、空き家活用のセミプロとも言える方です。
もともとはお医者さんの別荘だった空き家が気に入り、持ち主と掛け合うこと2年、ようやく売りに出たので購入したそうです。
海を見渡せるロケーションを生かそうと、居住空間を一部残してゲストハウスとしてリフォームすることにしたとのこと。
内装業を営むためリフォームは大半が自分でできたそうです。しかし、シロアリによる腐食は修繕に時間がかかり、水回りも大工さんに手伝ってもらって1年ほどの期間をかけて完成させました。
物件の購入金額は800万円、リフォーム費用は最終的に800万円になったとのことです。
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築古物件を次々とレスキュー
兵庫県で空き家をDIYして自らが住み、その後は賃貸を予定している方の体験談です。
この方はすでに複数の廃屋を自分で修繕し、そこに住みながら改装するという作業を繰り返してきています。
やがて改装を終えた廃屋の空き家は賃貸に出して、次の空き家を探すという生活をしているそうです。
賃貸に出した家は、賃借人に自由に改装してもらっているとのこと。そもそも、なぜこのような生活を始めたのでしょうか。
きっかけは、賃貸で借りていた住宅を自分で修繕していたところ、家主さんから「そんなに気に入ったのなら一棟丸ごと購入してみては」と提案され、その賃貸物件を購入して大家さんになったことだそうです。
その出来事を皮切りに、団地やシェアハウス、戸建て住宅やビルなども次々とDIYで改修し賃貸に出しては次の物件を探すようになったとのこと。
そして廃屋となった空き家を見つけては購入し、自らが住みながら改修して賃貸物件にするということを繰り返すようになったのだとか。
兵庫県で現在改修中の空き家も、すでに借り手は見つかっているのだそうです。
外国人のスタッフ2人とともに改修作業を急ピッチで進め、作業が終わると近くの温泉で汗を流すのが現在の日課になっています。
築130年の古民家を長屋オフィスに
こちらも兵庫県の事例です。長田区にある築130年以上という空き家の古民家を長屋風オフィスに改装した事例です。
仲間たちと手作業で床や壁をはがし、自分たちで改修作業を行ったとのこと。時には近所の子どもたちが集まり、作業を手伝ってもらったそうです。
庭の竹垣用の竹を調達しに、丹馬の小集落へ足を運ぶことも。当然、自分たちで竹を切り、枝打ちからバーナーでの炙りまで行ったとのこと。
改修後は自分たちのオフィススペースに加えて、近所の人が集まる喫茶スペースも設けています。下町の喫茶として、たくさんの人が集まり笑い声が絶えないそうです。
移住のために古民家をリフォーム
最後は広島市内から山県郡安芸太田町に移住したご家族の体験談です。
移住の理由は、自然の多いところで子育てをしたいという願いがあったことだそうです。
移住する前にインターネットで空き家バンクをこまめにチェックし、気になった物件があったので見学に行ったとのこと。
交通は不便ですが日当たりがよく、物件も割と綺麗だったので購入を決めたそうです。
リフォームは広島で古民家改修の実績がある業者を探し、3カ月ほどの期間で改修は終わったとのこと。
お気に入りは土間をイメージしたダイニングキッチン。掘りごたつのようにしたダイニングテーブルがあり、そこに子どもたちが座るとキッチンから目線が合うそうです。
キッチンはコストカットのためシステムキッチンは入れず、手持ちのコンロをそのまま使っているとのこと。その代わりにトイレやお風呂などの水回りは全面的にリフォームしたそうです。
物件の購入価格は550万円、改修費用は900とのことです。
まとめ
今回は6件の空き家活用体験をご紹介しました。
それぞれ購入目的やリフォームの方法などが異なり、空き家にはいろんな活用方法があることがわかります。
意外なことに、自分でDIYによる改修を行う人が多いようです。予算を削減するという理由もあるのでしょうが、手作りにこだわっているという印象も受けます。
長く使われずに腐敗が進んだ空き家でも、このように必要としている人がいるのだということがわかります。
自分では使い道がないと思える空き家でも、誰かがそれを必要としているということがわかると思います。
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