あれからどうなった? 横浜市のマンション傾き問題。

マンションが傾くなんて!?

2015年、住宅関連のニュースの中でも特に印象的だったのが横浜市で発覚したマンションの傾き問題でした。

施工不良による建物の傾斜、データの偽装・改ざんなど問題が次々と発覚し国土交通省も動き出すほどの大問題となりました。

発覚から1年半が過ぎた今、そのマンションや住人たちはどうなっているのでしょうか?

「問題の概要と今」について解説をします。

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問題となったマンション

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問題となったマンションは、2007年11月に神奈川県横浜市都筑区に完成した「パークシティLaLa横浜」です。

隣接するショッピングモール「ららぽーと横浜」と一体で開発されたマンションで、鉄筋コンクリート造の地上12階建て、敷地面積30,380平米、占有面積は80平米が中心の4棟705戸からなる大規模の分譲マンションです。

パークシティLaLa横浜の売り主は《三井不動産レジデンシャル》施工の元請けは準大手ゼネコンである《三井住友建設》杭打ち施工の一次下請けが《日立ハイテクノロジーズ》杭打ちの二次下請けで実際に杭打ち施工をしたのは旭化成の子会社《旭化成建材》でした。

傾斜の発覚

「西棟と中央棟をつなぐ渡り廊下の手すり部分が2cmほどずれている」という複数の住人からの指摘により、売主の《三井住友レジデンシャル》と元請けの《三井住友建設》が2015年8月に調査を行ったところ4棟のうち1棟で傾きが確認されました。

傾いた棟には合計52本の杭打ちがなされていましたが、そのうち「支持層(地盤が強固な層)」に達していない杭が8本、長さ不足の杭が2本見つかりました(その後の調査でさらに45本の杭の強度偽装も発覚しています)。

《三井住友建設》がさらに調査したところ、地盤調査を行なったと見せかける虚偽データが作られていたことが発覚しています。

業界最大手の不動産デベロッパーである《三井住友レジデンシャル》が売主であったことや、問題が発覚してからは下請け業者同士の責任のなすり合いなどが行われたことも連日のように大きく報道されました。

なお、その後の調査で発覚したことですが、杭打ち以外にも大きな問題がありました。

それがこちらです。

横浜市都筑区のマンション傾斜問題で、市は10日、マンション全4棟の地下部分で鉄筋の周囲を固めたコンクリート部分の厚さが足りず、建築基準法に違反していたと発表した。

市は「安全性に問題はなく、全棟建て替えで解体工事が4月から始まるため、是正勧告はしない」としている。

市によると、全棟の22カ所で、鉄筋からコンクリート表面までの厚さが不足していた。

一部はコンクリートから鉄筋が見えていた。同法違反が見つかったのは2回目。

市は昨年8月、傾いた棟が中規模の地震や建物自体の重さに耐えられない可能性があり、同法に違反するとして是正勧告していた。

引用:産経ニュース「横浜マンション傾斜問題で建築基準法違反 コンクリの厚さ不足」

杭が支持層に到達していない上にデータを偽装・改ざんしたのに加え、基礎コンクリートの量までもが改ざんされていたというのです。

あまりに杜撰すぎる報道に怒りを覚えた方も多いのではないでしょうか。

もちろんこのような状態ですから耐震性も確保されておらず、中規模程度の地震でも損傷してしまう恐れがあると指摘されました。

2011年の東日本大震災で大きな被害を受けなかったことは不幸中の幸いと言えるかも知れません。

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責任の所在はどこに?

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最も争点になったのは「責任の所在」です。

通常であれば、杭打ち作業は施工管理者がグラフ画面などを確認しながら行うことになっています。

杭がきちんと支持層まで到達しているかいないかは、グラフの波形で即座に分かるようになっています。

この時の施工管理者は二次下請けの《旭化成建材》の男性社員です。

グラフが書かれたデータを紛失してしまい、別の棟のデータを無断で転用したと話しています。

紛失してもデータを改ざんする必要性はなく、杭が支持層に到達していないことを知っていながら隠すために改ざんをしたのではないかと言われています。

また本来であれば杭打ちの本数や設計などを指定して指示を出している元請けの《三井住友建設》が、指示通りに施工されているかを確認する義務があったのですが、《三井住友建設》は不正を見抜くことができませんでした。

「データを改ざんした」のが《旭化成建材》の男性社員のため、メディアなどでは《旭化成建材》が最も悪いと連日のように報道され、それを見ている私たちもそのように情報を叩き込まれていたように思いますが、実は《三井住友建設》は2m短い杭を《旭化成建材》に発注していたとも言われています。

そもそも短い杭を発注していること、最終確認を行わなかったこと(不正を見抜けなかったこと)からも、社会的に最も責任が大きいのは元請けである《三井住友建設》という見方が強くなっています。

確かに、常識的に考えると末端の作業員が勝手に判断して杭の長さを変えることはできませんし、もし本当にそうであればこの男性社員はすでに刑事告訴されていてもおかしくありません。

それがないということや、あまりに早かった《三井不動産》による「全面建て替え」「これまでの市場の最高値での買取提案」(しかも調査中の段階で)などを考えると、やはり最も重い責任は《三井住友不動産》にあると言えるのではないでしょうか。

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三井住友建設が過去に起こした問題

《三井住友建設》は、その名前からも分かるように《三井建設》と《住友建設》が合併してできた会社ですが、実は《三井建設》《住友建設》ともに、過去にも同じような欠陥マンションの問題を起こしていたのです。

三井建設が起こした問題

「耐震スリット」が1箇所も入っていないという、まさに前代未聞の欠陥マンションを建設しています。

設計をしたのが、耐震偽装をした浅沼・元二級建築士ということも世間に大きな衝撃を与えました。

住友建設が起こした問題

設計図に描かれている「耐震スリット」を正しく入れていなかったために、福岡西方沖地震の際、福岡市中央区のマンションで壁の崩壊によって住民が玄関から避難できなくなるという状況を招きました。

耐震スリットとは?

RC造の建築物の柱と壁の間に設けられた耐震用の建築材料や隙間のことです。

このような過去を鑑みても《三井住友建設》の体質が垣間見えます。

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全棟の建て替えが決定!

パークシティLaLa横浜のマンション管理組合は、2016年9月19日に住民による建て替え決議集会を実施し、建て替えに必要な全所有者の5分の4以上の賛成を得たと発表しました。

これにより、全4棟の建て替えが正式に決定しました。

いよいよ解体開始

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2017年5月から着工し、2020年秋頃に完成予定とのことです。

建て替えが終わるまでの手厚い補償

《三井不動産レジデンシャル》は住民に対し、非常に手厚い補償を用意しています。

例えば一時的に住む住宅の家賃は上限が1坪あたり1万2000円(30万円程度の家賃補償を受ける人がほとんど)まで、引越し代の実費、その他には諸経費として40万円、慰謝料として全戸一律300万円など、建て替え費用300億円以外に住人に対しておよそ100億円もの補償を用意しています。

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今度こそまともなマンションを!

住人の方々は手厚い補償を受けられるため、災難ではありましたが結果的に良い方向に向かっていけるのではないかと感じています。

しかし、結局のところ、まだ責任の所在が明確になっていません。

まさか同じようなことを繰り返すとは思いたくはありませんが、特に耐震性においては巨大地震がいつ起こるか分からないと言われている時代ですから、家を買う人にとっては非常に重要な問題です。

《三井住友不動産》には、今度こそ「まともなマンション」の建設を願いたいところです。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

35年で過去5,000棟の解体工事を手がけた解体専門店・市川工業の責任者であり、解体協会の理事も務めています。 建物解体工事を中心に産業廃棄物のリサイクル業務を中心に、毎年、年間300件以上の解体工事でお客様とふれあう中で「より良いサービスを提供する解体企業になる」をモットーに、業界のイメージと解体工事の品質向上に力を注いでいます。 現在は新潟県解体工事業協会の理事を務め、解体業界全体の品位向上に力を注いでいます。 資格:一級土木施工管理技士、リサイクル施設技術管理者、解体工事施工技士