ゼロエネルギー住宅
最近、インターネットやテレビなどでも良く見聞きするようになった「ゼロエネルギー住宅」という言葉。
「ゼロエネルギー」というところからも何となく省エネ的なイメージは伝わりますが、具体的にどんな意味なのでしょうか?
太陽光発電やスマートハウスなどとの違いと併せて、最新の住宅事情を解説いたします。
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大きく変わりつつある日本の住宅事情
1990年代頃から、地球温暖化への対策として様々な取り組みが行われて来ました。
例えば大企業などが生産時に発生するCO2の排出量を減らす努力をしていく一方で、私たち一般消費者においては「省エネ」という言葉や意識が強く普及して来ました。
この「省エネ」を「住宅における省エネ」に的を絞ってみてみると、実は日本の住宅はヨーロッパなどの環境先進国の基準と比べて大きく遅れをとっているのです。
また、2011年3月に発生した東日本大震災において、原子力発電に対する不安や恐怖を目の当たりにしながらも、電力不足に陥らないためには頼らざるを得ないという深刻な現実を突きつけられました。
こういった様々な事態がきっかけとなり、日本の住宅事情が大きく変わり始め、ているのです。
ゼロエネルギー住宅とは?
そんな中、日本の経済産業省は「エネルギー基本計画」において「住宅については2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均で住宅の年間の一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロとなる住宅(以下「ZEH」という)の実現を目指す」とする政策目標を掲げました。
ZEHとは?
ZEH(ゼッチ)と読みます。
具体的には「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」のことで、住宅の高断熱化と高効率設備により、快適な室内環境と大幅な省エネルギーを同時に実現した上で、太陽光発電等によってエネルギーを創り、年間に消費する正味(ネット)のエネルギー量が概ねゼロ以下となる住宅です。
これを一般んにゼロエネルギー住宅と呼んでいます。
なお、余談ですが、本来「エネルギー(Energie)」はドイツ語であり、英語では「エナジー(Energy)」になります。
その意味からすると「ネット・ゼロ・エナジー・ハウス」が正しいのですが、日本では「エネルギー」が広く浸透しており、英語と同じように使用されているため、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」として表記をいたしております。
太陽光発電やスマートハウスとの違いは?
ニュアンスが似ている言葉で「太陽光発電」「スマートハウス」などがあります。
それぞれどういう意味なのか、簡単に解説をいたします。
太陽光発電
自宅の敷地内などに設置した太陽光発電システム(ソーラーパネル)で発電する仕組みのことです。
スマートハウス
「省エネ=我慢」という構図では人々はもちろん、経済にも悪影響を与えてしまいますよね。
そこで、電気やガスを我慢するのではなく「使っても省エネになる」ように考えられたのがスマートハウスです。
例えば太陽光発電によって作られた電力、電力会社からの提供される電力、あるいは蓄電池に貯めた電力などをバランス良く(賢く)使う家のことを指します。
省エネ型機器などを使用すると同時に、電気を創る装置も取り入れられた家です。
ゼロエネルギー住宅の三本柱は「断熱」「創エネ」「省エネ」
ZEHをもう少し分かりやすく説明すると
(1)省エネによって、消費されるエネルギーをできる限り減らすこと
(2)また、消費したエネルギー量と同等以上のエネルギーを創り出すこと
(3)年間を通した時にその住宅で消費したエネルギー量よりも創り出したエネルギー量の方が多いまたはプラスマイナス0になる住宅を目指すこと
となります。そのための三本柱が「断熱」「創エネ」「省エネ」です。
①断熱
高い断熱性を備えた住宅にすることで、夏は涼しく冬は暖かく保たれますので、空調の使用なども必要最小限に抑えることができます。
つまりエネルギーを極力必要としない住宅を作ることが可能なのです。
②創エネ
創エネのメインは太陽光発電システムによってしっかりと発電をすることになります。
また、同時に家庭用年用電池あるいは蓄電池などと組み合わせて貯めておくことで(=蓄エネ)、日常から緊急時まで、非常に幅広く役に立ちます。
③省エネ
空調、照明、給湯、換気など特にエネルギー消費量が大きいこれらの項目においてはHEMS(*)を取り入れたり、省エネ効果が高い設備や製品などを取り入れることで、エネルギーを上手に(効率よく)使う住宅を目指します。
*HEMS(ヘムス)とは?
「Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)」の略で、スマートホームで取り入れられている、エネルギー節約のための管理システムです。
家電や電気設備に接続し、モニター画面で電気やガスの使用量を一目で把握することができたり、状況に応じて家電機器を「自動制御」してくれるシステムです。
これらを組み合わせることによって、その住宅の「年間一次エネルギー消費量」が、おおむねゼロになる住宅のことを「ゼロエネルギー住宅」としているのです。
一次エネルギーとは?
自然界に存在するエネルギー源のことを「一次エネルギー」と呼んでいます。
具体的には、「化石燃料」「核燃料」「太陽熱」「太陽光」「水力」「地熱」「風力」などがあります。
この一次エネルギーを、私たちが利用しやすいようにしたものを二次エネルギーと呼んでいます。
二次エネルギーは「電気」「ガス」などのことです。
ゼロエネルギー住宅における消費エネルギーは、これらの二次エネルギーを一次エネルギーに換算して算出されます。
ゼロエネルギー住宅は本当にメリットがある?
これだけの設備を必要とするからには、当然、建築費用も高くなります。
「本当に元が取れるのだろうか?」という疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。
普通の住宅と比較すると一目瞭然です。国土交通省の参考資料を元にご紹介します。
年間コストの比較
一般的な住宅(新築)の場合
家電等:87,000円
給湯:96,000円
冷暖房:88,000円
合計:271,000円
ゼロエネルギー住宅の場合
家電等:0円
給湯:0円
冷暖房:0円
合計:0円
いかがでしょうか。
自家発電でまかなうことが目標なので当たり前の結果と言えばそれまでですが、実際にこうして見ると非常に大きなメリットがあることが分かります。
さらに、それだけではありません、補助金制度もあるのです。
ゼロエネルギー住宅には補助金制度がある
ゼロエネルギー住宅に対しての補助金制度には2種類あります。
一つは「住宅のゼロ・エネルギー化推進事業」で、国土交通省が行っている中小工務店を対象とした補助金制度です。
そしてもう一つが、経済産業省が行っていて、私たち一般消費者が対象の「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業」です。
ゼロエネルギー住宅の設備・建設などの工事費の50%以内(最大で350万円)を上限に補助をしてくれるというものです。
「断熱」「省エネシステム」「省エネ設備」「創エネシステム」などを設置することが必須条件となります。
*内容の変更等により誤解を与えてしまう可能性を防ぐために、細かい条件などについては経済産業省のホームページにて最新情報をご確認ください。
経済産業省
近い将来、ゼロエネルギー住宅が標準仕様に!?
今回は最新の住宅事情についてのお話しでした。
いま、日本の住宅事情は大きく変わろうとしています。
そして政府は「2020年までにネット・ゼロ・エネルギー・ハウスを標準的な住宅にする」としています。
広く普及するためにはまだまだ多くの問題を抱えてはいますが、近い将来、電気は自給自足する社会が来るかも知れませんね。