不動産を売る時にはプロの不動産業者に相談するのが一般的ですが、自分で手続きを進めることも不可能ではありません。
ただ自分で進める場合にはデメリットやリスクがあるので、理解の元に進めないと不利益を被る危険があります。
本章ではマンション売買を想定し、個人で売却を進める場合と業者を使う場合の違いや注意点等について解説します。
【あわせて読みたい。こちらの記事もご覧ください】
個人でも可能だが難度は高くリスクも生じる
現状で不動産を売却しようとする時に不動産業者を使わなければならないという法律上の決まりはないので、自分で買い手を探して取引に臨むことも決して不可能なわけではありません。
ただ実際には様々な面で不都合が生じるため、結局のところプロの不動産業者を利用した方が安全に、確実に売買を成功させることができるので、多くのケースで業者が利用されます。
不動産業者がどのような実務を行っているのかが分かれば、自分でやるとした場合の手間やリスクについての理解がしやすくなると思いますので、次の項では不動産売却の流れを簡単に確認してみましょう。
不動産売却の流れと手続きを確認
不動産売却は以下のような流れで進行します。
①相場の調査
対象物件を売り出すにあたり、相場となる価格を調査します。
価格調査に失敗すると他のライバル物件と比べられた時に高すぎて敬遠されたり、相場よりも安く買われてしまい損を被ることになります。
②必要書類の用意
売買取引に必要な資料として登記簿や印鑑証明、固定資産税の納税通知書、修繕積立金の支払い証明など各種の資料を集めます。
③宣伝広告を打つ
売り出す物件の情報を市場にいる見込み客に届けなければ、マンションが売りに出されていることを知ってもらえません。
そのため様々な手段を使って広告を打ち、見込み客に物件情報を発信しなければなりません。
広告には問い合わせのための電話番号や住所を載せなければならないので、自分でやる場合は自宅の電話番号や住所の公開が必要になることもあります。
④問い合わせへの対応
興味を持ったお客さんからの連絡や訪問に対応するため時間の確保が必要です。
⑤内見案内
内見を希望するお客さんに対しては部屋の案内対応も必要です。
内見案内中、物件を良く見せるために気を遣った会話ができなければ、相手は買う気がうせてしまいますから、丁寧な対応が求められます。
⑥交渉
内見をして購入の意思を持ったお客さんとは様々な交渉が入ります。
価格面の交渉はもちろんですが、引渡し時期や瑕疵担保責任(契約不適合責任)についてなど多数の交渉項目が存在します。
⑦契約書の作成
交渉がまとまったら契約書の形にしてまとめます。
不動産の取引はトラブルが生じやすいので、必要な取り決めに漏れがあると後で問題になることがあるので注意が必要です。
⑦代金の受領
売買代金の支払いのタイミングや支払い回数、支払い方法はケースバイケースですが、多くの場合、売買契約締結時に幾らか支払い、残額を以下の⑧引き渡し時に支払うのが一般的です。
⑧引き渡しと登記
売買契約で定めた期日に物件の引き渡しを行います。
引渡しにおいてはカギやその他物件使用に必要となるもの全てを買い手に引き渡しますが、これに漏れがあると後で苦情が来ます。
事前に引き渡す物品をもれなく用意しておき、これを相手に引き渡す際には引き渡し確認書にサインをしてもらうなどの工夫が必要です。
物件引き渡し後はすぐに所有権の変更登記が必要です。
業者を使う場合、基本的には登記も含めて業者側が必要な手配をしてくれます。
以上簡単に流れを見てきましたが、次の項では上記の各ステージに照らしながら個人で売買を進める際のハードルや注意点を個別に確認していきます。
【あわせて読みたい。こちらの記事もご覧ください】
個人で売買を進める難しさやリスク、注意点を確認
業者を利用する場合、前項でみたステージのうち①相場の調査、③広告宣伝、④問い合わせへの対応、⑤内見案内、⑦契約書の作成、⑧引き渡しと登記は基本的に業者側が実務を引き受けてくれるので、売り主は丸投げすることができます。
逆に言えば、自分で進める場合はこのパートを自分の責任で進めなければならないということです。
②必要書類の用意は業者を使う場合は担当者が指示してくれますが、そうでなければ必要書類を自分で調べなければいけません。
⑥の交渉については交渉項目によって対応の仕方を考える必要があり、買い手候補からの提案にどう答えるべきか、売り主として決断しなければなりません。
値下げ要求に応じるべきか、次の候補者を待つべきかなどを素人が決断を下すのは難しいですが、業者を使う場合は担当者が助言してくれるので的確な対応が望めます。
⑦の引き渡しと登記についても業者を使う場合は基本的に担当者が全てお膳立てしてくれるので、売り主はそれに従って対応すればよく、登記については多くの場合業者が手配した司法書士が動くことになります。
自分で進める場合は上で見た全ての手配と準備を自分だけで行います(登記で司法書士を使う場合は別として)。
俯瞰すると、業者を使わず自分で進めるとした場合、大きく販売にかかる実務上の問題とリーガルリスクの二つの側面に分けて考えることができそうです。
実務上の問題では、相場の調査や内見案内など手間と時間を犠牲にすればできそうなものもありますが、物件の広告宣伝については個人でできることには限界があります。
プロの業者は不動産業者しか利用できない専用の広告媒体(レインズといいます)を使えるので広く全国に物件情報を公開できます。
また地域に流通するフリーペーパーなどの媒体を利用できるので宣伝広告の効果が高く、販売活動を有利に行えます。
個人レベルでWEBサイトを作って宣伝することもできますが、訴求力は限定されます。
紙面等の媒体に広告掲載を依頼することもできますが、数万円~数十万円程度の費用がかかるでしょう。
またリーガルリスクの面では、特に契約不適合責任の取り決めをしておかないと後でトラブルに巻き込まれる恐れがあります。
不動産取引に精通していればどのようなトラブルが起きやすいか分かっているので、契約上でこれを手当てすることができますが、素人では難しいと思われます。
このように、手間や宣伝広告などの実務面と法律的なリスク管理に甘さが出る点が業者を使う場合と使わない場合の違いになります。
個人売買のメリット面は?
一方で、業者を使わない場合は以下のように一定のメリットもあります。
①仲介手数料がかからない
不動産業者に仲介を依頼する場合、買い手が付けば成功報酬として一定の手数料の支払いが必要です。
基本的に、「売買価格×3%+6万円」に消費税を加えた額を手数料として求められるので、かなりの額になります。
数十万円から数百万円の手数料がかからないことはメリットになるでしょう。
②気長に販売できる
不動産業者を使うと、多くの場合短期間で契約をまとめて手数料報酬を得たいと考えるので、大体販売開始から二ヶ月を過ぎたあたりまで買い手が付かない場合、不動産業者から「そろそろ少し値を下げてみましょうか」と打診されることがあります。
売却を急かされることになるので、これを嫌がる人は自分が決めた値段で自由に販売を続けられる個人売買の方が気楽で良いかもしれません。
まとめ
本章ではマンション売却を個人で進めることについて、業者を使う場合との違いや注意点、リスクなどを見てきました。
自分で進めることも可能で一定のメリットもありますが、業者を使わない場合に自分でやらなければならないことを考えると、手間の問題や法律上のリスクの面で大きな心配が出てきます。
また販売活動の実務では宣伝広告を効果的に行うことが個人では難しいので、より短い期間で確実に買い手を見つけるにはプロの業者を頼るのが無難です。
友人や親せきなどに購入希望者がいるような場合は個人で売買に臨むのも一考ですが、その場合も法律上のリスクについての問題が残るので、不動産取引に関して必要となる契約条項を自分で調べて適切な処置をする必要があります。
【あわせて読みたい。こちらの記事もご覧ください】