解体工事災害事例
建設現場で発生する事故や災害は、被害が大きくなってしまうケースが多く、場合によっては命を落としてしまうこともあります。
そのため、各社とも安全に対してはしっかりと教育を行ったり現場での対策を練ったりしています。
ですが、残念ながらそれでも起こってしまうのが事故や災害です。
今回は、実際に解体工事中に発生した災害等についてご紹介いたしますので、自分が依頼した解体現場で悲惨な事故や災害が起こる可能性を少しでも減らすためにお役立てください。
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最も記憶に新しいところでは千葉県市川市の火災
2017年に入ってすぐ、解体工事中の銭湯から出火しそのまま全焼してしまうという災害が発生しました。
木造・鉄骨二階建てのおよそ500平方メートル、そして木造二階建ての隣家を全焼するというものでした。
原因は発表されておりませんが、出火当時は風が強く吹いており、新潟県糸魚川市の大火災があった直後のことだけに周辺にも緊張が走りましたが、幸いなことに、住宅にいた男性は無事でしたため死傷者を出さずに済みました。
この現場では4名の男性作業員が重機を使用しての解体作業や溶接などの作業を行っており、出火当時は休憩中だったとのことですが、まさか解体工事現場で火災が?と思った方も多いのではないでしょうか。
解体現場は狙われやすい?
解体工事を含む建設現場は人の出入りが制限され、誰もが入れるという訳ではありません。
作業を終えて現場を後にする際も施錠をするなどして現場内に第三者が立ち入らないように厳重に管理されています。
しかし、夜間や早朝など人目につきにくい時間帯であったり、現場自体が人目につきにくい場所であったりすると、その現場内には人がいないことが分かっていますので、逆に狙われてしまうケースもあります。
すると放火や盗難、不法投棄といった犯罪に利用されてしまう可能性もあります。
燃えやすいもの、盗難されては困るものなどは残しておかない、あるいは簡単に手の届くところに保管しないように工夫をしなければなりません。
解体工事中に実際に起こった事故や災害事例
日本全国、いたるところで解体工事が行われています。
大なり小なり何かしらの災害や事故などが日々起こっているものと思われますが、具体的にどのような事故や災害があったのでしょうか?
足場の解体工事中に鉄パイプが落下したことによる死亡事故
2016年10月に東京都港区六本木で起こった死亡事故です。
足場の解体作業中に10階から鉄パイプが落下し、偶然下を通りかかった男性の側頭部を直撃、貫通してそのまま帰らぬ人となりました。
店舗の解体工事中に活線を切断した作業員が感電死
ブレーカーを落とさずに、活線を素手で持ったワイヤーカッターで切断したところ、感電してしまい病院に搬送されたが助からなかったという事故です。
事前の作業計画などが作成されず、また現場では社長が毎回指示を出していたとのことで、感電の危険性などについてきちんと教育ができていなかったことが分かっています。
解体工事中に足場が倒壊し乗用車を直撃
2012年12月、兵庫県神戸市で発生した災害です。
解体工事のために組んだ足場が強風に煽られ、高さおよそ10メートル、長さおよそ100メートルと非常に広い範囲にわたって道路に向かって倒壊しました。
ちょうど通りかかった乗用車1台を直撃したのですが、幸いなことに死傷者は出ませんでした。
安全帯の不使用によって足場から転落
足場の解体作業中にバランスを崩し、およそ10メートル下の地上に転落、重傷を負った災害です。
転落などの恐れがある作業をする際には、「親綱」の設置と「安全帯」の使用が必須とされていますが、この災害では親綱は設置されていたものの、安全帯を使用せずに作業を行っていたようです。
適切な処理を怠ったことによるアスベストの飛散
2011年5月、神奈川県の学校の旧校舎解体工事中に起こった災害です。
本来、アスベストは適切に解体・処分をしなければなりません。
この解体工事においても、業者は煙突内にアスベストがあることを知りながら、その費用を抑えるために適切な処分を怠ったことで、アスベストを飛散させてしまったというものです。
敷地内にいた多くの子供や、近隣住民までアスベストに暴露するという災害に発展してしまいました。
ガス管の切断によるガス爆発
2011年2月、福井県で起こった災害です。
雑居ビルの解体工事中に作業員が誤ってガス管を切断してしまったことによりガス漏れが発生し、その後何らかの原因で引火源がガスに引火、爆発してしまったものです。
外壁崩落による死亡事故
少し古い事例ではありますが、2003年に静岡県の解体工事現場で起こった災害です。
鉄骨コンクリートの外壁の一部が数十メートル下の県道に落下、信号待ちをしていた車2台が下敷きとなり、車内にいた2名が死亡、2名が負傷、転落した作業員2名が死亡という痛ましい災害がありました。
工事責任者が工期短縮のため通常1週間かけて行う作業を2日で行わせるなど解体手順を遵守しなかったことが原因とされています。
解体工事中に外壁が倒壊し通行人が死亡
2010年10月、岐阜県の解体工事現場で起こった災害です。
本来であれば不安定な外壁などはワイヤー等でしっかりと固定をしながら作業を進めていくのですが、その手順を怠ったおかげで外壁が倒壊し、たまたま通りかかった17歳の高校生が下敷きとなり命を落としました。
鉄骨造の家屋の解体作業中に床板を踏み抜いて墜落
鉄骨造二階建ての家屋を解体中に二階部分の床板を踏み抜いてしまい、そのままおよそ3メートル下のコンクリート床に叩きつけられ、死亡してしまったという災害です。
現場責任者は不在(指名されておらず)、作業員全員が解体作業経験に乏しい、鉄骨の組立て等作業責任者の有資格者もいないなど、杜撰な体制が大きな問題となりました。
ほんの一例を挙げただけでも実際にこのような重大な事故や災害が頻繁に起こっています。
重傷で済めばまだ不幸中の幸いと言えるかも知れませんが、多くの場合、命を落としてしまうという最悪の結果になってしまいます。
そのほかに考えられる解体災害
具体例ではありませんが、災害に発展する可能性が大きいケースについても併せてご紹介します。
近隣の住宅などを破損してしまう
重機を使用している時などは特に、不注意によって隣の家の塀や樹木、あるいは建物などを破損してしまう可能性があります。
住宅密集地や隣家との幅が極端に狭い解体工事現場などでは、特に慎重に作業を進めなければなりません。
基本的に解体業者はこのようなケースに備えて損害賠償保険に加入しているものですが、業者によっては未加入のところもあります。
そうなると賠償方法などについて揉めることが予想されます。
解体工事を依頼する際は、損害賠償保険に加入しているかどうか、万が一近隣の住宅などを破損してしまった場合はどのように対応してくれるか、などについても確認をしておきましょう。
重機や車両との衝突
重機と人、廃材運搬車両と通行人、作業員と通行車両など、解体工事現場では常に何らかの接触事故の可能性が潜んでいます。
警備員などを配置することで事前に防ぐ努力をしている業者もありますが、とは言っても作業員全員、通行人全員の行動を監視できるわけではありませんので、タイミングによっては事故が起こってしまいます。
もちろん作業に集中しなければ危険ということもあるのですが、その中でも常に「周りの状況」も把握しておくという気持ちの余裕を持っておきたいものです。
一人一人が気をつけるしかない
解体を含む建築現場は非常に過酷な現場です。
真夏や真冬などは気温が影響を与えますし、繁忙期は労働時間が伸びたり休日を確保できなかったりすることもあります。
また、人手不足によって未経験者や高齢者が現場に立つことも少なくありません。
慣れた職人さんであってもちょっとした心の油断から大きな事故や災害を招いてしまう危険性も十分にあります。
建築現場において事故や災害を完全に防ぐということは、交通事故をなくすことと同じくらい難しいことかも知れません。
それでも私たち一人一人が、「大丈夫だろう」ではなく「危険かも知れない」という心構えで取り組んで行くことができれば、事故や災害の可能性を減らすことはできます。
解体業者のみではなく、いずれ施主になるかも知れない私たちも、こういった痛ましい事故や災害があること、そしてそれらを防ぐための心構えを持つことの大切さを心に留めておきたいものですね。