不動産の取引は一般的に不動産会社が仲介するものと認識する人は多いでしょう。
売買手数料が売買代金の3%必要であることも、やむを得ないと考える人も多いと思います。
しかし、空き家を登録する空き家バンクでは、運営する自治体は仲介業務を行わないので個人間で取引するケースがあります。
そこで、空き家を個人間で取引することを考えている方のために、その注意点をいくつかご紹介します。
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個人間取引でも契約書が必要
空き家をタダで譲渡する、そんな事例は珍しくありません。保有し続けるだけでコストがかかる空き家は、タダでも引き取ってくれる人がいると助かる、というわけです。
空き家は住む人がいないから放置されるのですが、放置された家屋は老朽化が進みます。室内は湿気で痛み、やがて家屋の躯体も朽ちてしまいます。
しかもそのままにしておくと、自治体から「特定空家」と指定されペナルティが発生します。その結果、固定資産税が増えるなど金銭的な負担が増えるため、タダでも引き取って欲しいと考えるわけです。そのまま保有を続けると、自治体からの指導を受けて修繕費用を負担し続けることになります。
しかし、たとえタダで空き家を他人にあげても、その取引には契約書が必要になります。正式には、「無償譲渡契約書」というものを交わします。これはいわば、空き家を引き取る側を守るための契約書と言ってもよいでしょう。
タダであっても完全な無料ではない?
タダで空き家をあげるとなると、売買契約書のようなものは不要かと思われます。しかし実際には、無償譲渡であっても「無償譲渡契約書」の締結が必要です。
そして無償譲渡された場合にも、登記費用や贈与税、不動産取得税や固定資産税が発生します。つまり、まったくのタダで空き家を手に入れるわけではないということです。この点は頭に入れておく必要があります。
空き家をタダで譲渡しても、これは「贈与」にあたると判断されます。つまり、贈与税の対象になるということです。家屋自体の価値はほとんどなくなっても、土地に対しての贈与税ばしっかりと課せられるので注意しましょう。
空き家は土地と建物の両方を贈与されることになるので、それぞれに対しての贈与税が課せられます。贈与税の基礎控除額は110万円なので、空き家の評価額が110万円を超えたら贈与税を支払う必要があると考えてよいでしょう。
法人として空き家をタダで受け取ると所得税が発生する
個人間取引でも空き家をタダで譲渡される側が法人として引き取る場合があります。そのようなケースでは所得税が発生するので注意しましょう。
個人としてタダで空き家を譲渡されるのであれば贈与として処理できますが、法人の場合には税法上、一定の対価を受け取ったとみなされます。その結果、「みなし譲渡所得課税」として処理し所得税を申告しなければなりません。
つまり空き家という不動産を取得して利益を得たと判断されるということです。
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「契約不適合責任」について理解が必要
これまで不動産売買には、「瑕疵担保責任」というものがありました。瑕疵担保責任とは、売買対象となる不動産に隠れた瑕疵(不具合のこと)があった場合、買主に対して売主が契約解除や損害賠償の責任を負うことを意味します。
しかしこの瑕疵担保責任は、2020年4月1日の民法改正により廃止されました。その代わりに「契約不適合責任」というものがあらたに売主に課せられることになったのです。
契約不適合責任とは、隠れた瑕疵ではなくても、購入した不動産が契約内容に適合していなければ売主の責任が問われるという内容になります。
つまり、不具合を指摘されることなく契約して買主が何かしらの不具合に気づいていたとしても、契約後に売上に対して責任を追及することができるということです。
そしてこの契約不適合責任において、売主が特に注意しなければならないのは「責任の取り方が4種類に増えた」ことでしょう。具体的に次の4つがあります。
- 損害賠償
- 契約解除
- 追完請求
- 代金減額請求
上の2つはこれまでの瑕疵担保責任において発生していたもので、下の2つは契約不適合責任であらたに追加になったものです。
そして損害賠償に関しても、売主は注意しなければなりません。これまではその対象となったのは契約に伴い発生した登記費用や物件の調査費用などに限定されていました。
しかし契約不適合責任では、たとえばその物件を購入したことにより得られたはずの利用利益や転売利益といった「履行利益」も含まれます。
このように不具合に関しては売主にとって厳しい責任が発生するため、個人間取引においては不具合の徹底したチェックが必須と言えるでしょう。
タダで空き家を手に入れても契約不適合責任はチェックすること
たとえタダで手に入れた空き家であっても、思いのほか修繕費用がかかるとなれば、当初計画していた出費を大きく上回る可能性もあります。最初からわかっていれば、たとえタダでも受け取らなかったと後悔するかもしれません。
そんな時、契約不適合責任を追及することが可能です。
無償譲渡契約書に記載されていない不具合が譲渡された空き家で見つかれば、4つの責任の取り方から1つを選んで請求できます。
不動産の無償譲渡契約書では、瑕疵担保責任は負わないものとするのが一般的です。しかし、空き家の場合には修繕に相当額の費用がかかるケースがあります。
そのため、個人間取引では特に瑕疵に関する記載を無償譲渡契約書に記すことがおすすめです。
個人間取引の場合には融資が難しくなる
不動産を個人間取引すると、住宅ローンのような融資が受けにくくなるという注意点があります。これは知らない人も多いのではないでしょうか。
その理由は、個人間取引では不動産会社の仲介のように重要事項説明書を作成することが少ないからです。住宅ローンなどの融資をする金融機関は、重要事項説明の内容をチェックして物件の担保価値を評価しています。
その情報源とも言える重要事項説明書がないと、譲渡された空き家を担保に融資を受けることも難しくなるということです。
たとえば空き家のリフォームや建て替えなどで融資を受ける場合、その物件そのものを担保にします。しかし個人間取引において重要事項説明書を作成していなければ、担保価値がどの程度あるのか判断できません。
ただしこのような事態に対処するため、不動産の個人間取引における重要事項説明書を作成する業者が存在します。不動産の個人間取引をサポートする業者なので、ネットで調べるといくつか見つかると思います。
タダで空き家をもらうとはいえ、このように事前にしっかりと準備をしておくことも大切です。空き家のリフォームなどの融資を受けるためにも、重要事項説明書は作成しておきましょう。
まとめ
たとえタダで空き家をもらえるといっても、譲渡契約書はしっかりと作成しておきましょう。また贈与税の対象にもなるので、税金に関する知識も得ておかなければなりません。
さらに空き家をもらったあとにトラブルが発生しないように、不具合に関する内容も譲渡契約書にはすべて記すことが必要です。
そしてタダで手に入れた空き家は金融機関がその担保価値を判断しにくいという性質があるので、必ず重要事項説明書を作成するようにしましょう。
参考サイト
「売主業者の瑕疵担保責任」
https://www.retio.or.jp/attach/archive/17-036.pdf
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