築地市場の豊洲移転はどうなるの?
「築地市場の豊洲移転問題」
東京都在住の方でなくとも一度は耳にしたことがあるという方が多いことと思います。
賛成派と反対派の意見は真っ二つに割れ、ますます混乱を極めている移転問題について、専門家や業者などの意見をご紹介しながら解説をいたします。
築地の歴史
現在、東京都内に11箇所ある東京都中央卸売市場の一つ「築地市場」の歴史は、江戸時代の魚河岸にまで遡ります。
日本橋から江戸橋にかけての河岸に作られた魚市場は開場当初から日本の食の流通を担っていたと言われています。
およそ300年ほど続いたのですが、1923年の関東大震災によって壊滅状態となってしまい、海軍省の所有地であった築地居留地を借り受けて臨時の東京市設魚市場を開きました。これが築地市場の始まりです。
その後、1935年に現在の位置に東京市中央卸売市馬が開設されました。
築地市場の中では7の卸売業者とおよそ1000の仲卸業者によってせりが行われており、その取引規模は世界最大であると言われています。銀座の繁華街からも至近なため観光客が連日大勢訪れることでも有名です。
現在の位置に移転してから80年以上に渡って日本の食品流通を担ってきた築地市場ですが、昨今、移転問題で大きく揺れています。
なぜ「移転する」という案が浮上したのか?
実は2001年からすでに、豊洲移転の計画が始まっていました。
なぜ移転が必要だと考えたのでしょうか?
それには次のような理由がありました。
*取扱数量が拡大したことによって施設が手狭になってしまった
特に荷置き場が不足したため、商品を一時的に屋外に置かざるを得ない状況なども多く見られました。
また、トラックの駐車スペースなども不足してしまい、場外での違法駐車が後を絶たないことも問題視されています。
衛生管理がしづらいこと
現在の築地市場には壁や空調がありませんので、ネズミ、猫、鳥などが入ってきてしまうこと、夏場の30度以上になる時期などは特に生食用の商品の管理が難しいことなどが挙げられます。
施設の老朽化が進んでいたこと
1935年の開場以来80年近く経過したため、かなり老朽化が進んでおり、建物の一部が破損して落下する事故も起きています。
主にこのような理由があったとされています。
なお、東京都は元々は移転に反対の立場で、築地市場の「再整備」を進めていましたが、営業しながらの工事は長期間に及んでしまうほか、営業面で悪影響を与えてしまうという問題などから、2001年に豊洲への移転を決定しました。
豊洲移転に「待った」をかけた小池都知事
2016年11月7日に予定されていた築地市場から豊洲市場への移転。
ところが東京都の新都知事に就任した小池百合子都知事は2016年8月31日、その移転を延期する方針を正式に表明しました。
これにより移転問題が大揺れとなったのです。
延期の最も大きな理由は「土壌汚染」問題です。
豊洲市場の場所はかつて、東京ガスの石炭ガス工場があった場所であり、2008年に行われた土壌調査では環境基準値を大幅に上回るベンゼン・水銀・鉛・ヒ素などの有害物質が検出されました(特にベンゼンにおいては基準値のおよそ43,000倍が検出)。
さらに驚いたことに、2017年1月14日に発表された9回目の地下水モニタリング調査結果では、これまで一度も検出されなかった猛毒「シアン」が初めて検出されたのです。
舛添前都知事が行った6回の調査では検出されなかったシアンがなぜ今、検出されるのでしょうか。
真実は分かりませんが、これが大きな引き金となり、豊洲移転は危機的状況に陥っています。
また、東京都は「汚染された土壌を全て入れ替えた上ですべての敷地で高さ4.5mの盛り土をした」と発表していますが、実際には盛り土がされておらず、コンクリートで蓋をしただけだったということも明るみになっています。
このようなことが続き、安全性の理由などから、小池都知事は移転を延期するという方針を表明したものです。
築地の方が危険だという意見も
一方で、築地の方が危険だと主張する専門家もいます。
主な意見としては・・・
「盛り土よりコンクリートの方が有害物質を抑え込む効果が高い」
「コンクリートの下の地下水は魚には無関係」
「土壌汚染対策法では汚染を『ゼロ』にすることは求められていない」
「築地は建材にアスベストが多く使われており空気中を舞うことの方が危険」
「豊洲市場の建設費6,000億円は移転を中止したら戻って来ないが、移転して築地の土地を売れば4,300億円が回収できる」
「豊洲は閉鎖型の施設なのでネズミや鳥などが入って来ず、空調もあるので品質管理がしやすい」
といったことを挙げています。
「現場の声」はどうなっているの?
ところで、専門家がテレビやニュースで賛成・反対各々の見解を示している場面こそよく見かけますが、仲卸業者のリアルな声が聞かれないと感じるのは私だけでしょうか?
東京中央市場労働組合が、水産仲卸事業者を対象に行ったアンケートでは、このような結果になっています。
『築地と豊洲、どちらで営業を続けたいか』
当然築地…49%
できれば築地…37%
できれば豊洲…5%
当然豊洲…2%
無回答…7%
『豊洲新市場の施設は仲卸事業者の意見が反映されていると感じるか』
あまり反映されていない…44%
まったく反映されていない…44%
ある程度反映されている…6%
無回答…6%
アンケートをとった約640の仲卸事業者の87%が築地での営業を希望しており、88%が意見が反映されていないと回答をしています。移転反対派の意見を見てみましょう。
「豊洲移転は現場を知らない都の職員が考えたもの」
「われわれ(仲卸事業者)の声をまったく聞いていない」
「都からはまったく(あるいはほとんど)説明されていない」
「豊洲は交通や物流のためのアクセスが悪い(*)」
「築地が手狭だから移転するというのに、豊洲の方が店舗が狭い」
「土壌汚染問題が心配」
(*)実際に「仲卸棟」「青果棟」「卸棟」が都道484号戦と環状2号戦によって分断されているため、今よりも物流スピードが遅くなると思われます。
さらに、高齢となった仲卸業者も少なくないため、移転するくらいなら廃業してしまおうという方もいます。
移転にかかる引っ越し費用や設備の買い替えなどを含めて必要となる1,000万円~2,000万円は各仲卸事業者の負担となることなどから、もし移転が決定してもその費用を捻出できず、廃業せざるを得ない業者も数十社にのぼると言われています。
約9億円の損失補償を決定
移転問題がどうなるか先行きが見えない中、2017年4月24日、東京都は移転延期に伴う損失補償として、まず52の事業者に対し合計でおよそ9億円の損失補償を支払うことを決定しました。
補償対象となるのは、移転予定だった2016年11月~2017年3月末までに発生した「豊洲市場の設備の減価償却費に相当する額」「人件費の一部」「移転延期を決めた2016年8月以降の築地市場の使用継続に伴う修繕費」などで、全体で500近い事業者から相談が寄せられているとのことで、今後、補償額はさらに膨らむと見られています。
まだまだ収まりそうにない移転問題
築地と豊洲の危険性については様々な意見があり、専門家の方々が各々の見解を示しています。
しかし、専門家の間だけではなく、現場で働く仲卸業者の声と専門家の意見も大きく違っているなど、何が「本当のところ」なのか、私たち一般人には判断する術がありません。
また、業者や専門家以外にも、築地市場で仕入れをしている飲食店の方からは
「せっかくどこにどの業者がいるか歩いて覚えたのに、移転したらまたゼロから探し出さなきゃいけない」
「築地よりも遠くなるからやめてほしい」
という声も聞かれます。
なお、2014年12月、東京都は「2020年の東京オリンピックに間に合うように、2017年4月までには築地市場の解体を終わらせる必要がある」とも発表しています。
オリンピックのためとなると、本来の移転の理由とはかけ離れてしまいます。いったい何が「本当のところ」なのでしょうか。
東京都が長い間行ってきた無責任かつ杜撰すぎる運営体質が招いた大きな移転問題はまだまだ収束しそうにありません。
東京には本当安全な魚市場が必要
築地市場移転、確かに大変な問題だと思います。
1日でも早く豊洲に移転出来たら良いのでしょうけど、まずは安心できる材料が必要ですね。
築地市場は日本の台所というべき場所です。
本当に美味しい食べ物が沢山ありますし、観光地としても賑わいがあります。
移転する場合には、この築地市場を解体しなければなりませんが、この解体費用も一体いくら位かかるのでしょうか?
解体屋としてはこの辺も興味ある分野です。
いずれにしても、豊洲移転問題が解決する事を祈っております。