墓じまいはこれから増える
近年、先祖代々からのお墓を次の世代に受け継がずに処分してしまう、いわゆる「墓じまい」が増えています。
墓じまいとは何なのか?なぜ墓じまいをするのか?その要因を探ります。
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「墓じまい」とは?
墓じまいとは、それまで先祖代々受け継がれてきたお墓を綺麗に片付けて更地にし、お寺や霊園あるいはその墓地の管理者などに敷地を明け渡すことです。
そこには当然「お墓に納められている遺骨」をどこに改葬(引っ越し)するのか?という問題が発生します。
また心理的な問題もあります。
お墓の遺骨は故人がこの世に存在していた証であり、唯一の”故人本人”の体の一部でもあります。
遺された人たちにとっても思い入れが強い大切な心の拠り所でもあります。
そんな大切なお墓を撤去し、遺骨を引っ越すのが「墓じまい」です。
なぜ今、墓じまいが増えているのか?その要因は?
墓じまいが増えている要因として考えられるものをいくつか挙げてみます。
少子高齢化・過疎化
少子高齢化が進んでいることや、都市部へ人が流れてしまうことで過疎化が進んでいることなどで地方には高齢者が多くなり、体力的にもなかなか定期的なお墓参りが難しいため墓じまいをする、というケースが目立ちます。
地方に出た若者が帰省・帰郷する割合も減っていることも大きな要因と言えるかも知れません。
将来的に維持・管理ができなくなる可能性がある
今は自分でお墓参りをしたり清掃をしたりすることができますが、子供がいない、あるいはいるけど都会や地方へ行ってしまって将来的に戻ってこない可能性が高い、という場合、自分が亡くなってしまうとお墓を受け継ぐ人がいなくなってしまうため、動けるうちに墓じまいをしておくというケースです。
関心が薄れている
価値観は時代とともに変化していくものですが、特に近代においてはそれが著しく、様々な事象や生き方に対しての価値観が多様化しています。
そういった中でお墓の維持・管理、お墓がある意味、故人そのものなどへの関心が薄れ、費用の支払いを止めてしまったり、連絡を断ち切ってしまうというケースも見られます。
ほかにも単純に「そのお寺や霊園との関係を終わらせたい」という動機に基づくケースもありますが、墓じまいの要因のほとんどは時代背景と密接な関係があることが分かります。
なお、これらは決して地方だけの問題ではなく、都心部の墓地や霊園においても無縁墓が増えています。
特に地方出身者の場合、お墓が遠方にあるためお参りに行く機会が減り、徐々に関心が薄れていくといった理由も考えられます。
このように多くの場合、上記のいずれかというよりも様々な要因が絡まり合っているものと考えられています。
無縁墓も大きな社会問題に!
また、放置された状態の「無縁墓」も大きな問題となっています。
無縁墓とは、そのお墓の維持費・管理費などが何年間も支払われず、またそのお墓の関係者にも一切連絡が取れなくなってしまった、「放置状態のお墓」のことを指します。
長期間放置され続けてしまうと、行政やお寺、管理者などによって墓じまいが行われます。
具体的にはお墓が解体・撤去され、遺骨は「無縁仏」として合葬されます。
しかし、お墓の撤去費用をどうるすのかといった問題があり、また急に関係者と連絡が取れる可能性も残されているなどの理由から、対応がなかなか進まないのが現実です。
無縁墓になってしまう理由としては、上記で挙げた「お墓参り等をしていた高齢者が亡くなってしまった」「地元を離れた若者が関心を持たなくなってしまった」などが挙げられます。
こうした無縁墓は年々増加傾向にあるため、大きな問題となっています。
墓じまいをしたあとの「遺骨」はどこへ?
改葬を「引っ越し」と表現しましたが、引っ越すのであれば「引っ越し先」が決まっていなければなりません。
墓じまいをしたあとの遺骨には主に次のような「引っ越し先」があります。
永代供養墓
お寺には「永代供養墓」が建てられていることがあります。
永代供養墓とは、そのお墓を引き継ぐ人がいなくても、お寺や霊園が管理・清掃・供養などを永代に渡って行ってくれるお墓のことです。
ほとんどの永代供養墓は合同墓となりますので、墓石を購入する必要がありません。
また遺された人は永代供養墓へのお参りもできます。
散骨
遺骨を粉末状にし、海や空、山の中などにそのまま撒くことを散骨と言います。
遺骨を永久に手放せるため今後の管理に対する心配や不安がなくなることや、将来的に費用が発生することがないことなどから近年増えている供養方法ではあります。
しかし、水源林区域で散骨が行われたことで地域住民から苦情が出たり、死体(遺骨)遺棄に該当するのではないかなどの意見も出ており(法務省は非公式にて「節度をもって行われる限り違法性はない」との見解を示しています)、今後散骨が増加することでよりトラブルが増えることが懸念されています。
納骨堂
他人との合同墓に抵抗がある人や、永代供養墓よりも近場に納骨堂があるなどの理由から、骨壷に遺骨を入れたまま安置しておくことができる納骨堂を選ぶ人も少なくありません。
しかし、納骨堂では管理や永代供養のための費用が発生するほか、供養する人がいなくなったらどうするかといった問題も抱えています。
手元供養
文字どおり、遺骨を手元に置いておくことを手元供養と言います。
そのままの形で自宅などに安置したり、アクセサリーに加工して身に付けるという方法もあります。
最も費用がかからない方法ではありますが、納骨堂と同じように供養する人がいなくなった時にどうするかが問題です。
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墓じまいでのトラブルを避けるために気をつけたいこと
墓じまいをめぐるトラブルは決して少なくありません。
特に気をつけたいことは次のようなことです。
親族の合意
故人に対する思い入れ、先祖代々受け継がれてきたお墓への思い入れなどは人それぞれです。
また、特に信仰深い人でなくとも「遺骨を移動する」ことに悪いイメージを抱く人は少なくありません。
後々トラブルとならないように「どのような理由で」「何のために」などを明確にし、親族の合意を得た上で行うことをお勧めします。
離壇料
檀家になっている場合、それまで供養や管理を行ってくれたお礼として10万円~20万円程度のお布施を包むのが一般的です。
ところが中には離壇を認めてもらえなかったり、相場が広く知られていないのをいいことに法外な離壇料を請求してくるケースもあります。
この場合は弁護士に相談することになるなど、お互いにとって後味の悪い結果になってしまう可能性があります。
事前に住職や管理者などに、明確な理由を添えて墓じまいの意思があることを相談し、何かの際にも感情的にならずに理解をしてもらうような工夫が必要です。
解体・撤去
墓じまいではお墓を解体・撤去しなくてはなりません。
あまり情報がないため相場が掴みにくく、法外な解体費用を請求されたり、違法な工事を行う、撤去したお墓を不法投棄をする、周辺のお墓を傷つけてしまうといったトラブルも聞かれます。
実績がきちんとあり、信頼のおける業者を選ぶようにしましょう。
早めの対策が肝心
第一生命経済研究所が無縁墓になる可能性を調査した結果を公表しています。
「自分の墓はいつか無縁墓になる」と考えている人の割合
・35歳~49歳=45.9%
・50歳~64歳=54.4%
・65歳~79歳=51.0%
平均で50.4%、実に2人に1人が「将来的に自分の墓が無縁墓になる」と考えていることが分かります。
そしてこれは決して他人事ではなく、将来的にはおそらくこの調査結果のように多くの方が直面する問題になってくるものと思われます。
墓じまいは大切な行事
「墓じまい」は何も悪いことではありません。
むしろ、受け継ぐ人がいなくなったお墓は無縁墓となり、故人が浮かばれないだけでなく、周りのお墓やお寺、霊園などにも迷惑をかけてしまうことになりますので、先々、もし無縁墓になってしまう可能性が高いのであれば、墓じまいをしてしまうのも一つの対策です。
その際、住職や管理者、あるいは親族とトラブルにならないように、「なぜ墓じまいをするのか」という理由を明確にさせることと、住職や管理者、親族に早めに相談を始めることを心がけるようにしましょう。