不動産の売買は取引対象の不動産自体が高額のため、仲介業者に支払う手数料はかなり重荷になります。
またアパートなどを借りるために物件探しを業者に依頼すると、こちらも一定の仲介手数料を取られるので部屋探しの負担になります。
この回では不動産業者に支払う仲介手数料は値引きできるのか、できるとしたらどのように値引き交渉をすれば成功しやすいのか、交渉のポイントを解説します。
仲介手数料は売買と賃貸で仕組みが異なるので、序盤で両者に共通する項目を押さえ、次に売買と賃貸を分けて見ていきます。
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手数料の交渉は可能だが慎重に
売買も賃貸も仲介手数料の交渉自体は可能で、上手くすれば値引きを実現させることは十分に可能です。
ただし手数料の値引きと引き換えに依頼者が不利益を受ける可能性があるので、何も考えずに交渉に臨むのはリスクがあります。
売買方面では対応を後回しにされたり、積極的な宣伝活動を行ってくれない可能性がありますし、賃貸方面では望ましい物件の紹介を受けられないなどの不利益を被ることがあります。
交渉では相手のメリットも実現させなければならないことを意識し、win-winの関係を目指す工夫が必要です。
大手よりは中小の方が値引きできる可能性が高い
もちろんケースにもよりますが、売買も賃貸もどちらかというと大手の業者よりは中小の業者の方が値引き交渉をしやすい環境にあります。
大手は集客力があるので多数の顧客を抱えているため、値引きを迫る客は相手にしなくてもさほど困らないことが多いです。
また大手の方は担当者レベルでもなぜか値引きには応じない姿勢を取る者が多いようです。
これはノルマの問題もあるでしょうし、「大手は値引きになど応じないのだ」という自尊心のようなものもあるのかもしれません。
一方で中小の業者は顧客の獲得競争で大手より劣勢となるので、値引きに対する抵抗が小さくなります。
客側としては交渉がしやすい環境となるので、一般的に大手よりは中小の方が値引きに成功しやすいといえます。
それでは次の項から売買と賃貸に分けて、成功しやすい値引き交渉のポイントを見ていきましょう。
値引き交渉のポイント <売買編>
①他社も検討していることを伝える
他の取引でも有効ですが、合い見積もりをしてライバル他社の存在を見せると、交渉のパワーバランスで優位に立ちやすくなります。
複数社を検討していて、他社では手数料がこちらよりも安かったということを伝えると値引き交渉に応じてくれるかもしれません。
ただし売買方面では物件の売却金額によって手数料額が変動しますから、査定前に複数社を検討していることを伝えて競争させようとするのは避けた方が無難です。
下手をすると本来よりも査定額を低くして手数料も低く見せようとする可能性があるからです。
まずはその業者の査定額を聞き売却予想金額を確定させてから、他社の存在を示して手数料だけを下げられないか相談するようにしましょう。
②値引きと引き換えに専属専任媒介契約に応じる
不動産業者としては確実に手数料報酬を受け取れる専属専任媒介契約が欲しいと考えています。
これに訴求して、値引きに応じてくれれば同契約に応じるという条件を出すと交渉が成功しやすくなるでしょう。
③両手仲介に強いところに依頼する
両手仲介に強い不動産業者は売り手と買い手両方からの手数料獲得が望めるので、手数料の値引きに応じやすい環境にあります。
その業者のWEBサイトを調べ、売却と購入の仲介両方に力を入れていそうであれば見込みがあります。
ただし両手仲介をしている業者は囲い込みをするリスクもあります。
他社経由の客を寄せ付けない囲い込みをされると迅速な売却ができなくなる恐れがあるので、業者の信頼性を見ることも大切になります。
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値引き交渉のポイント <賃貸編>
賃貸の仲介手数料は売買と仕組みが異なるので最初に押さえておきます。
賃貸仲介の手数料は最大で家賃の一か月分までと決められていて、基本的には家主側と借り手側双方に最大で半月分までの請求しかできません。
当事者の了解が取れれば、一方に半月分を超えて上限1か月分までの請求ができ、多くの業者では客の了解を取った上で借り主側から100%の手数料を徴収しています。
ただその了承を取る方法が問題で、部屋が決まった後の重要事項説明で機械的に説明されます。
借り主は原則として家賃の半分を負担すればよいというルールを知らないので、特に疑問に思うことなく進められてしまいます。
こうした事情を踏まえて、賃貸における仲介手数料の値引き交渉のポイントを見ていきます。
①部屋が決まるまでは交渉を控える
部屋が決まる前に値引き交渉の姿勢を見せてしまうと、値段優先の客と捉えてグレードの低い部屋を紹介される可能性があります。
交渉するとしても目的の部屋が決まってからにするのが安全です。
②手数料の基本ルールを確認する
法律上の基本ルールでは借り主の承諾がなければ家賃の半額分を超えた手数料の請求はできないことになっています。
そこで、部屋が決まった後に、重要事項説明の際などに「私が承諾しなければ手数料は家賃半額までですよね?」と問うてみましょう。
値下げしないなら他をあたる、という強気の姿勢にでると相手の態度が硬化して契約に進めない可能性もあるので、「気に入った物件だから、安くしてくれればこの場で契約します」というような姿勢で臨むのがベターです。
③金額を決めて値下げ交渉をする
例えば引っ越しのための諸経費を考えて、「費用を〇〇万円までに抑えたいので、手数料を〇万円負けてもらえませんか?」というように、具体的な金額を提示して値下げを希望すると、相手も交渉に対応しやすくなります。
もちろん、値引きしてくれればこの場で契約に応じるという姿勢を見せることも大切です。
これで担当者は契約妥結までの道がはっきりと見えるので、ただ単に「安くして」と言われるよりも値引きに応じやすくなります。
④他社を引き合いに出す
複数社を巡って物件探しをしている場合、他社と手数料を比較することができるので、これをされると不動産業者側は苦しくなります。
すでに別の不動産業者で同じ物件を見ていて、そちらの方が手数料が安いようであれば目の前で交渉している担当者に伝えてみましょう。
物件が同じであれば手数料の安い方にお客は流れてしまうので、客を逃がしてしまうことを恐れて値引きに応じやすくなります。
嘘をつくことは決してお勧めしませんが、実際に他社で安い金額を提示されたわけではないとしても、例えば「B社はある程度の値引きには応じてくれそうだったので、そちらも検討したい」というニュアンスを伝えると、これもプレッシャーになり交渉上で有利になります。
⑤閑散期に相談する
もし事情が許せば、お客さんが少ない閑散期に相談するのも有効です。
引っ越しで不動産需要が高まる時期はお客さんが多くなるので、不動産業者としては値引きを要求する客を相手にしなくても困らない環境になります。
逆に引っ越しをする人が少なくなる6月~8月、11月~年末頃は閑散期となりお客さんが少なくなります。
この時期は少しでもお客さんを逃すまいとして交渉に応じてくれやすくなります。
ただこの時期は物件の数も比較的少ない時期となるので、希望の部屋探しを優先する場合は難しいかもしれません。
まとめ
この回では仲介手数料の値引き交渉におけるポイントを売買と賃貸に分けてそれぞれ見てきました。
値引き交渉自体は可能ですが、売買と賃貸では手数料の仕組みが異なるので有効な交渉の進め方も変わってきます。
値引き交渉をする場合は今回見てきたポイントを押さえて臨んでみましょう。
気を付けなければならないのは、交渉は相手を言い負かすことではないということです。
あまり強気の姿勢を取ると相手の態度が硬化して契約が流れてしまう危険もあります。
高圧的な態度は絶対に避け、「私もこの契約をまとめたいので、何とかなりませんか?」という姿勢で臨むようにしましょう。
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