消費税10%時代はすぐそこまで来ています。
1万円のものが1万1千円に、10万円のものが11万円になるわけですから、消費者としては生活に与える影響も踏まえていろいろと考え、準備しなくてはいけません。
この記事では、日本における消費税の歴史を簡単に振り返るとともに、再延期の可能性、解体工事はいつまでに依頼すれば良いのか、そのほか増税前にできることなどを紹介していきます。
消費税10%になる前に、何をしておけば良いのか考えるときの参考にしてください。
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消費税が10%になるのはいつから?もう決定?再延期の可能性は?
2018年9月現在、消費税が10%になるのは2019年10月の予定です。
二度延期されたことからも分かるように、現時点ではあくまで予定のため、決定ではありません。
はじめに、日本における消費税の歴史を簡単に振り返ってみましょう。
日本で消費税が初めて導入されたのは、1989年(昭和64年/平成元年)4月、当時の総理大臣だった竹下登内閣時代です。導入当初の税率は3%でした。
これまで100円ちょうどで買えたものが103円になり、ショックを受けた人も多いのではないでしょうか?
その後1997年4月、橋本龍太郎内閣で5%に引き上げられました。以降17年間維持されたこともあり、消費税5%が定着した時代でした。
さらに政権交代後の2012年、野田佳彦内閣時に「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律」が成立したことにより、2014年4月から消費税8%になることが決定しました。
しかし、2012年には政権交代が起こり、民主党から再び自民党政権へと移りました。にわかに「消費税増税は保留になるのでは」といった噂がたったわけですが、現・安倍晋三内閣は野田佳彦内閣の決定を受けて、予定通り2014年4月より消費税を3%引き上げ、現行の消費税8%へと移行していきました。
野田佳彦内閣はまた、2015年10月に消費税をさらに2%引き上げ、10%にするという法案も可決していました。
しかし、安倍晋三首相は2015年10月の引き上げを1年半延期し、2017年4月より実施する方針を発表しました。
ところが、安倍晋三首相は「内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべきである」と判断し、消費税率10%への引き上げを2019年10月へと再延期(先送り)しました。
日本における消費税には、このような歴史があります。
引き上げ時期を二度も延期するという異例の事態ですが、世界経済が大きなリスクに直面している今、安倍晋三首相は慎重に判断していると言えるでしょう。
消費者としては「二度も延期したわけだから、もしかすると今回も延期になるのでは?」と淡い期待を抱いてしまうかもしれません。
しかし、2017年8月、安倍晋三首相はテレビ出演の際「予定通り行っていく考え」であることを発表しました。
再延期の可能性が消えたわけではありませんが、ほぼ間違いないと見て良いでしょう。
ちなみに、2018年1月時点での世界の消費税(付加価値税)を見てみると、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーが25%、イタリアが22%、ベルギーとオランダが21%、フランス、オーストリア、イギリスが20%と、欧州では軒並み20%以上となっています。
アジアを見てみると、韓国は10%、中国は17%、フィリピンでは12%となっています。
各国の生活水準があるため単純に税率だけを比較して議論できるものではありませんが、世界各国と比べると日本の消費税率は低いと言えます。
※【参考】国税庁ホームページ「税の国際比較」
2019年3月31日までに解体工事の契約を済ませれば8%でOK!?
解体工事といった大きな費用が必要になるケースでは、消費税率の引き上げはダイレクトに影響してきます。
100万円が110万円に、200万円が220万円になるわけですから、わずか2%とはいえ数字から見る印象も、実際の出費額も、大きく変わってきます。
解体工事にかかる費用は、決して安いものではありません。
そのため、解体工事の予定がある人は、どの時点の消費税率が適用されるのか、という点が気になるのではないでしょうか?
一般的には「契約時点」での消費税率が適用されますが、今回の消費増税時には「経過措置」が取られることになっています。
10%に引き上げられるのは2019年10月1日ですが、経過措置ではこの日を「施行日」としています。
そして、その半年前となる2019年4月1日を「指定日」としています。
この指定日の前日、つまり【2019年3月31日】までに解体工事の契約を済ませておけば、たとえ引き渡し(工事完了)が2019年10月1日を過ぎてしまっても、消費税率8%で解体工事を依頼することができる、というのが経過措置です。
ただし、そのタイミングでは駆け込み契約も考えられます。
解体業者によっては請負件数が多過ぎてこれ以上受注できない、あるいはかなり先になってしまう、といったケースも想定できます。
「ギリギリになって契約できないことがわかり、慌てて別の業者を探したが、その業者ではぼったくられた」そんなケースもないとは言えません。
再延期の可能性を信じてギリギリまで待つ人もいるかもしれませんが、上記のようなトラブルを避けるためにも、早いうちから解体業者に相談しておくことをおすすめします。
特定空き家に指定される恐れがあるケースも要注意
たとえ解体工事をするつもりはなくても、強制的に解体され、その費用を請求されてしまうケースがあります。
平成27年5月26日に完全施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(通称:空き家等対策特別措置法)」では、行政が
- 保安上、著しく危険となる恐れがある空き家
- 衛生上、著しく有害となる恐れがある空き家
と判断した空き家について「特定空き家」に指定し、行政が改善に向けた指導や助言、勧告、命令など段階を踏まえ、従わない場合は最終的に行政代執行(強制撤去・解体)まで可能になると規定しています。
勧告された時点で固定資産税の優遇措置対象から除外され、命令に従わなかった時点で50万円以下の過料が科せられます。
しかし、それよりも覚えておきたいのが行政代執行、つまり行政が強制的に解体したり撤去したりできる権限を持っているという点です。
当然、解体や撤去にかかった費用は所有者が全額負担することになります。
消費税増税時の経過措置における指定日【2019年4月1日】以降に強制解体・撤去された場合、消費税10%の解体費用を請求されることになる可能性が大です。
老朽化した空き家を抱えている人、長らく空き家を放置している人、すでに行政から助言や指導を受けている人などは、消費税10%で強制解体されてしまう前に、解体業者に解体を依頼するなど、なんらかの手を打っておくことが大切です。
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増税後も8%のままで据え置かれるものがある
実は、今回の消費税率の引き上げでは、増税後も8%のまま据え置かれるものがあります。それは
- 酒類と外食を除いた飲食品
- 定期購読契約に基づく週2回以上発行される新聞
です。
特に気をつけたいのが「酒類と外食を除いた飲食品」です。酒類、外食が10%というのは一目瞭然ですが、テイクアウトや宅配は8%、ケータリングは10%といったように同じ飲食品でも供給形態によって消費税率に差が出てきます。
イートインがあるコンビニで、その場でも食べられる、持ち帰りもできるといったお弁当などを購入した場合、どうなるのかといった議論も沸き起こっています。
持ち帰った場合は8%、店内で飲食した場合は10%といったように、同じ商品でも消費形態によって変わるため、消費者、提供者ともに、しばらくは混乱することが予想されます。
増税前の衝動買いはNG、計画性が大切
タバコの値上げ直前にも駆け込み需要があるように、消費税増税直前は「値上がりしないうちに色々と買っておいた方が良いのでは?」と思ってしまう人が多くいます。
しかし、すべてのものが消費税増税の影響をダイレクトに受けるわけではないということを知っておいた方が良いでしょう。
ファイナンシャルプランナーの花輪陽子氏は、次のようなケース分けをしています。
※増税後に値上がりする可能性が高いため増税前に買うことを検討しても良いもの
定期券、回数券、新幹線のチケット、テーマパークのチケット、保険適用外の治療、冠婚葬祭費用、美容サービス、カルチャースクールの費用、缶ジュース、たばこ など
※値崩れしにくいため増税前に買っておいても良いもの
浄水器のカートリッジ、プリンターのインクカートリッジ、空気清浄機のフィルター、電動自転車やロボット掃除機のバッテリー、墓石、塩・砂糖、ランドセル など
※増税分がそのまま値上がりするとは限らないため見極めて買った方が良いもの
衣類、洗剤、トイレットペーパー など
日用品は増税の影響を受けるとは限らないようです。
値引きされたり、値下がりしたりといったことが頻繁にあるためです。
一方、車を購入する場合は迷ってしまいますが、消費税増税後に消費が落ち込むタイミングで、もしかすると大幅値下げされる可能性があります。
判断が難しいところですが、冷静に見極め、よく検討してから購入しましょう。
まとめ
今回は消費税10%について考えてきました。繰り返しになりますが、解体工事を消費税8%で依頼するには、【2019年3月31日】までに契約を済ませておく必要があります。
用途に迷っている空き家を所有している、建て替えまたはリフォームなどの予定がある、といった人はぜひ覚えておきましょう。
併せて、「特定空き家」に指定される恐れがある老朽空き家などを所有している人は、解体する、リフォームする、適正に維持管理するといった対策を今のうちから始めておくことをおすすめします。
また、増税直前は衝動買いを避け、増税の影響を受けそうなものとそうでないものなどを見極めて、かしこく買い物をしましょう。
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