産廃処理にマニフェストは必須!
産業廃棄物の収集、運搬、処分などが適切に行われているかどうかを確認するために発行される「マニフェスト伝票」というものがあります。
なぜ必要なのか?取り扱い方はどうすれば良いのか?などを解説いたします。
一般家屋を解体する場合もこのマニフェストが絡んで来ますので、ぜひ知っておきましょう。
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マニフェストとは?
一般に、産業廃棄物は「排出」に始まり「収集運搬」「中間処理」を経て「最終処分」されます。
これらを一括で行う業者もいますが、「収集運搬のみ」「中間処理のみ」「最終処分のみ」を事業としている業者や、いずれか複数を担っている業者もあります。
これまで、排出事業者から出た産業廃棄物が最終処分に至るまでの過程において、不法投棄や不適正処理などの問題が常に伴っていました。
これらを防止するために産業廃棄物を排出する「排出事業者」が自ら出した産業廃棄物が適正処理されているかどうかを管理するために導入されたのがマニフェスト制度です。
不法投棄はそれを行った業者はもちろんですが、排出事業者、依頼主にも罰則が科されますので、どの業者によってどの工程が行われたのかを明確にすることは非常に大切なことです。
マニフェストの内容
マニフェストには1次マニフェストと2次マニフェストがあります。
- 1次マニフェスト
A票:産業廃棄物の排出事業者が廃棄物を収集運搬業者に引き渡した際に保管しておくもの
B1票:収集運搬業者が廃棄物を処分業者に引き渡した際に保管しておくもの
B2票:収集運搬業者が排出事業者へ運搬終了の報告をするためのもの
C1票:処分業者が収集運搬業者から廃棄物を引き取った際に保管しておくもの
C2票:処分業者が収集運搬業者へ処分終了の報告をするためのもの
D票:処分業者が排出事業者に処分終了の報告をするためのもの
E票:中間処理業者が最終処分を確認した際に排出事業者へ報告をするためのもの
- 2次マニフェスト
主に中間処理業者が発行するマニフェストを2次マニフェストと呼んでいます。
産業廃棄物の量をできるだけ減らすために中間処理を行う訳ですが、その際にも産業廃棄物が発生します。
そこで中間処理業者は新たなマニフェストを発行し、最終処分業者に処理を依頼するという流れになります。
*なお、マニフェストは正式名称を「産業廃棄物管理票」といいます。
どうしてマニフェストが必要なの?
マニフェストができる前は委託契約書などを交わしていた訳ですが、処分事業者や処分先の施設などは記載されていても、産業廃棄物の排出事業者にとっては自ら排出した産業廃棄物がいつ、どこで、どのように処理をされているのか把握することは困難でした。
また中間処理業者や最終処分業者も様々な排出事業者から委託を受けるため、いつ、どの排出事業者の産業廃棄物を、どのように処分したかなど一つ一つ正確には答えられないというのが現実でした。
こうなると、たとえ不法投棄や不適正処理をしたとしても責任の所在が不明確となり、未然に防ぐことも難しかったのです。そのため、これらを防止する目的で廃棄物処理法でマニフェストを義務化する運びとなりました。
廃棄物処理法で定められている
正式名称は『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』のことで、第3条1において「産業廃棄物は、排出事業者の責任において適切に処理しなければならない」と定められていますが、第12条5においては「運搬・処分を他人に委託する場合は第14条第12項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令定める者に委託することができる」としています。
つまり排出事業者は原則として責任を持って適切に処理しなければなりませんが、きちんとルールに則れば、認可を受けた他の事業者に委託することができるというものです。
そして第12条3において、その委託をする際にマニフェストの発行が義務付けられているということになります。
減らない産業廃棄物量と不法投棄
マニフェストの導入が必要な理由は排出事業者を守るということもありますが、減らない産業廃棄物量や不法投棄の問題も大きな理由です。
- 青森・岩手県境
中間処理業者が排出した産業廃棄物を山中に不法投棄し、覆土によって隠蔽した事案です。
投棄された産業廃棄物量はおよそ150万トン、撤去にかかった事業費はおよそ708億円と言われています。
- 香川県豊島
産業廃棄物処理業者が豊島の一画に産業廃棄物を大量に持ち込み、野焼きや不法投棄をし続けた事案です。
投棄された産業廃棄物量はおよそ94万トン、撤去にかかった事業費はおよそ520億円と言われています。
- 福井県敦賀市
最終処分場で許容量を超える埋め立てが行われたため浸出液が処分場周辺に流れ出してしまった事案です。
不法投棄の一種になります。投棄された産業廃棄物量はおよそ119万トン、撤去にかかった事業費はおよそ111億円と言われています。
- 岐阜県岐阜市
産業廃棄物処理業者が敷地内および周辺地域に大量に不法投棄し、覆土によって隠蔽を働いた事案です。
投棄された産業廃棄物量はおよそ125万トン、撤去にかかった事業費はおよそ100億円と言われています。
ここに挙げたのはほんの一例です。
また平成28年12月22日に環境省が発表した報道資料によりますと、平成26年度の産業廃棄物の排出状況は次のようになります。
平成26年度の全国の産業廃棄物の総排出量:約3億9,284万トン(前年度:約3億8,464万トン)
*前年比800万トン(2.1%)増
このように日本では産業廃棄物の量が減らないこと、不法投棄がなくならないことが非常に大きな問題となっています。
マニフェストの取り扱い方法は?返却期限と保管期間が決められている!
先ほど、A票~E票までの解説をしましたが、それぞれ排出事業者への返却期限が設定されているものがあります。
B2票:マニフェスト交付日から90日(特別管理産業廃棄物では60日)以内
D票:マニフェスト交付日から90日(特別管理産業廃棄物では60日)以内
E票:マニフェスト交付日から180日以内(特別管理産業廃棄物も同様)
これらの返却期限が守られない場合、排出事業者は都道府県知事への報告を行う義務が発生します。
また、マニフェストは【5年間の保管義務】があります。残しておくことにより、後になって不法投棄などが発覚した場合に非常に重要な手がかりとなります。
もし違反したらどうなるの?
マニフェストに関する義務違反があった場合、基本的には「排出事業者」に次のような罰則が科されます。
■委託基準違反
5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはこの併科
*併科=両方が科されるという意味
■マニフェスト不交付・未記載・虚偽記載・保存義務違反
6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金
■マニフェスト確認義務違反
措置命令の対象
また、紙マニフェストには「産業廃棄物管理票交付等状況報告義務」というものがあり、毎年6月末に前年度のマニフェスト交付状況を報告書にまとめ、管轄の都道府県知事宛に提出することになります(電子マニフェストはこの義務は免除)。
電子マニフェストとは?
マニフェストは廃棄物の種類ごと・運搬先の事業場ごとに交付する必要がありますので、書類がどんどん増えていってしまい管理が困難になったり紛失してしまうなどの恐れもあります。
そのためインターネット上でマニフェストの処理が可能な電子マニフェスト制度も導入されています。
家屋の解体にもマニフェストが絡んでくる!
マニフェストは業者だけが知っていれば良いという訳ではありません。
一般家屋の解体で排出される産業廃棄物に対しても、当然ながらマニフェストが必要になります。
もし廃棄物の処理を依頼した業者が不法投棄などを行うと施主も罰せられますので、依頼をする際には「マニフェストは発行するか」「マニフェストの写しをもらえるか」といったところを確認しておきましょう。
写しはもらえなかったとしても、最低限確認をさえてもらいましょう。
それすらもできない場合、トラブルを避けるため他の業者を選ぶことをお勧めします。