埼玉県は都心からほど近く、多くの方が東京都内に通勤しています。
産業や人口といったポテンシャルが高い県としても知られています。
そんな埼玉県ですが、やはり他の都道府県同様に空き家問題を抱えています。
今回は埼玉県の空き家事情と対策、そして空き家に関連した補助金・助成金制度をご紹介していきます。
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埼玉県の空き家に関する補助金・助成金制度は?
空き家に関する補助金や助成金制度をいくつかご紹介します。
現在、埼玉県内に空き家を所有している方はぜひ、参考にしてください。
埼玉県の各市町村が行っている補助金・助成金制度の例
行田市では、倒壊の恐れがあるなど危険な老朽空き家を解体する際、その解体費用に対して50万円を上限に、2分の1まで補助してくれます。
坂戸市では、解体ではなく空き家の改修工事および、家財処分に対する補助金制度を設けています。
改修工事は、対象となる工事に要した費用の2分の1を、40万円を上限に補助してくれます。
また、家財処分は、対象となる処分費用の2分の1を、10万円を上限に補助してくれます。
川口市では、空き家をまちづくりの活動拠点、またはその他地域コミュニティの活性化に資する目的で利用する場合、対象となる工事費用の一部を補助してくれます。
3年以上事業を継続する場合、対象となる工事費用の3分の1までを、50万円を上限に補助してくれます。
また、10年以上事業を継続する場合は、対象となる工事費用の3分の2までを、100万円を上限に補助してくれます。
北本市では、空き家が管理不全になってしまう前に利用価値を高め、流通を促進する目的で改修補助制度を設けています。
一戸建てでかつ直近の利用状況が賃貸でないことなどある程度の条件がありますが、対象となる改修工事費用に対して20万円を上限に、3分の1まで補助してくれます。
なお、市外からの転入は1人につき5万円(最大4人まで)、中学生以下の子供は1人につき2万円(最大4人まで)、夫婦ともに39歳以下の場合は1組につき2万円が加算されます。
本庄市では、空き家の中でも特に管理不全で危険と認められる空き家の除却(解体)に対する補助金制度を設けています。
市が規定する要件をすべて満たす必要がありますが、対象となる工事費用に対して50万円を上限に、2分の1まで補助してくれます。
蕨市では、市が定める条例において助言または指導の対象となった空き家を解体する際、要件をすべて満たした場合に限り、解体費用を補助してくれます。
補助対象となる工事費用に対して30万円を上限に、3分の1まで補助してくれます。
補助金・助成金制度を利用する際の注意点
上記でご紹介した補助金・助成金制度は一例です。他の市町村でも同様の補助金・助成金制度を設けているところがあります。
利用を検討したい方は、まずは一度、管轄の市町村に問い合わせてみましょう。
なお、制度を利用する際の注意点として、市町村ごとに条件が細かく規定されています。
たとえば市町村税に滞納があると受けられない、権利者全員の同意がないと受けられない、対象工事発注前に交付が決定されていなければならない、といった具合です。
せっかく利用できるものも、条件を見過ごしてしまい受けられなくなってしまっては元も子もありません。
事前に入念に条件を確認しておきましょう。
埼玉県の空き家数と空き家問題
埼玉県の人口は全国第5位、県内総生産も全国第5位、製造品出荷額と年間商品販売額はともに全国第7位(いずれも平成26年10月時点)であることから「ポテンシャルが高い県」と言われています。
海に接しておらず、災害時の被害発生リスクも少ない県とされています。
交通の面でも、東北新幹線、上越新幹線といった新幹線をはじめ、東北自動車道、常磐自動車道、関越自動車道、圏央道、外環道といった主要道路が埼玉県を縦断・横断しています。
こうして改めて埼玉県がどんな県なのかを見てみると、魅力溢れる便利なエリアに感じますが、それでもやはり空き家問題が存在するのです。まずは埼玉県の空き家数から、見ていきましょう。
埼玉県の空き家数
ここでは、総務省統計局が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」の調査結果を参考にしています。
現時点で最新の「平成25年住宅・土地統計調査」のデータから、埼玉県の空き家数について見ていきます。
- 埼玉県の空き家数の推移
平成10年 25.7万戸(9.9%)
平成15年 27.3万戸(9.7%)
平成20年 32.4万戸(10.7%)
平成25年 35.5万戸(10.9%)
このように推移しています。
カッコ内は、住宅総数における空き家の数、つまり「空き家率」を示しています。
平成25年時点で埼玉県の空き家数は35.5万戸ですが、これは東京都、大阪府、神奈川県、愛知県などに続いて全国で8番目に多い数値です。
平成25年時点の日本全体の空き家数はおよそ820万戸ですから、埼玉県はそのうち約4.3%を占めていることになります。
10.9%という空き家率で見ると全国第44位と下位にランクインするため、一見すると空き家が少ない県なのでは?と感じますが、住宅総数は326.6万戸で全国第5位です(日本全体の空き家率は13.5%です)。
埼玉県はそもそも住宅総数が多いため、10.9%という数値は決して「空き家が少ない」ことを意味しているわけではありません。
ちなみに、埼玉県の人口はどうなのか見てみましょう。
- 埼玉県の人口の推移
平成10年 687.7万人
平成15年 702.8万人
平成20年 713.6万人
平成25年 722.8万人
平成30年 731.8万人(※5月時点)
このように過去20年間だけを見ても埼玉県の人口は増加傾向にあることが分かります。
人口は増えているにも関わらず、空き家数が増えている、という現象が意味するところは、東京都の記事でも詳しく書いていますが、一般的には住宅の供給過多、そして開発に伴う一時的な空き家数の増加が背景にあると考えられます。
しかし、死亡率が出生率を上回る「自然減」が続いていることから、埼玉県の人口は今後減少に転じることが予測されています。
そうなると、空き家の数は急速に増加することも考えられます。
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埼玉県の空き家問題
続いて、埼玉県の空き家事情から見えてくる問題について触れていきます。
埼玉県の空き家の内訳から見ていくと「二次的住宅0.9万戸」「賃貸用または売却用の住宅23.4万戸」「その他の住宅11.2万戸」となっています。
「賃貸用または売却用の住宅」は読んで字のごとくですが、それ以外のカテゴリーについて簡単に説明します。
- 二次的住宅
別荘のようにたまに寝泊まりする人がいる住宅を指します。
- その他の住宅
転勤、入院などで長期間居住者がいない住宅または、建て替えのために取り壊す予定の住宅、所有者不明で居住者もいない住宅などを指します。
このうち、賃貸や売却が目的の住宅は用途が明確なため適正に維持管理されていることがほとんどです。
また、二次的住宅も空き家というよりはセカンドハウス的な位置付けで、放置されているわけではありません。
問題は、その他の住宅です。
平成25年に埼玉県が発表した「埼玉県空き家対策指針」では、その他の住宅の実に40%以上が、空き家の今後について「決めていない・これから検討」という結果になっています。
いわば放置状態、空き家をどうすれば良いのか、所有者自身も迷っているという背景が見えてきます。
空き家が放置されてしまう理由としては
- 改修・解体費用の捻出が難しい
- 相続人による所有者意識の薄れ
- 所有者が死亡しかつ相続人が不在
といったことなどが考えられます。
加えて、「決めていない・これから検討」という所有者が多いことから、空き家に対する問題意識が県全体で低い部分があるのかもしれません。
埼玉県の、空き家の所有者に対する啓発活動がより積極的に行われる必要があるでしょう。
その理由として、埼玉県の将来人口が挙げられます。
今でこそ人口が増えていますが、今後減少に転じることはほぼ確実視されています。
平成27年(2015年)に721万人だった人口は、平成52年(2040年=元号が変わりますが便宜上平成としています)には630万人に減少すると言われています。
この減少率は全国平均の約5倍とされており、つまりそれだけ将来的に空き家が急増するリスクを意味します。
その他の空き家が多いこと、所有者が空き家をどうすれば良いのか迷っていることなども含め、埼玉県は早急に空き家対策を講じていくことが求められます。
埼玉県の空き家対策とは
続いては、補助金・助成金制度以外に、埼玉県や各市町村がどのような対策を講じているのか、見ていきます。
埼玉県の取り組み
埼玉県では空き家に対して次の取り組みを実施しています。
- 埼玉県空き家対策連絡会議の設置
平成26年12月より開催されている会議です。
埼玉県内の63の市町村および埼玉県、ならびに宅建取引業協会、弁護士会、不動産協会などで構成され、オブザーバーとして国土交通省関東地方整備局建設部住宅整備課が選任されています。
これまで8回開催されており、会議の内容については「埼玉県空き家対策連絡会議」で確認することができます。
- 市町村行政職員向け空き家対策のマニュアルの策定
市町村が空き家対策に取り組みやすくするため、埼玉県が策定したマニュアルを配布しています。
マニュアルは大きく「市町村の空き家対策を総合的に推進するために」「空き家化の予防のために」「市町村の特定空き家等に対する措置の適切な実施のために」「中古住宅の流通と空き家の利活用のために」という4つのカテゴリに分かれています。
- 県内市町村の空き家対策の取り組み
県では、各市町村が策定した空き家対策計画の状況を公開しています。
埼玉県には63の市町村がありますが、平成30年3月31日時点で空き家対策計画を策定しているのは22市町にとどまっています。
- 空き家管理代行「埼玉県空き家管理サービス事業者登録制度」の創設
埼玉県と、埼玉県空き家対策連絡会議の構成員である不動産団体が協議を重ね、不動産団体が空き家の管理サービスを提供する事業者の登録制度を創設しました。
これにより、空き家の所有者は空き家を管理してくれる業者が探しやすくなり、離れた場所に住んでいても適正な維持管理を依頼できるようになりました。
- 空き家所有者向け小冊子の発行
埼玉県空き家対策連絡会議では、「住まなくなったらこうする!空き家管理・活用の道しるべ」という空き家の所有者に向けた小冊子を発行し、さまざまな情報を発信しています。
空き家を手放すのか、持ち続けるのか、そのメリットやデメリットを交えながら、各種相談窓口の情報も掲載されています。
冒頭の項目でもお伝えしましたが、その他の空き家の所有者の40%は「決めていない・これから検討」と、空き家をどうすれば良いか迷っている状況です。
こうした小冊子の存在を認知させ積極的に配布することで、空き家の所有者に対する所有者意識の向上につなげたいところです。
空き家バンク
埼玉県の各市町村は、積極的に空き家バンクを設置しています。
たとえば・・・
などです。
空き家バンクは空き家を賃貸、売却したい所有者と、空き家を求めている人とをマッチングさせるシステムで、多くの自治体が設置しています。
自分にとっては不要な空き家でも、誰かが必要としているかもしれません。
現在空き家の所有者となっていて、どうするか困っている方は、空き家バンクに登録してみることをおすすめします。
埼玉県は空き家対策に手厚い補助金制度がある
今回は埼玉県の空き家事情や対策、空き家に関する補助金・助成金制度をご紹介してきました。
今後急速に空き家の増加が見込まれる埼玉県は、すでにさまざまな取り組みを実施しています。
しかし、空き家の所有者に対して、十分に情報が行き渡っていない印象を受けました。
現在、埼玉県に空き家を所有している方は、ぜひ積極的に情報収集し、空き家の適正な維持管理、あるいは解体、売却、賃貸など活用・処分方法を決める手立てとしましょう。
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