最近多いですよね、空き家…
日本全体で空き家の増加が非常に問題になっています。
その中でも特にその処遇に困るのが“所有者不明”の空き家です。
実は日本ではこの所有者不明の空き家が増えていると言われています。
もし所有者が不明な場合、その空き家はいったいどうなっていくのでしょうか?
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所有者不明の空き家とは?どうして所有者が不明に?
日本全国で空き家総数は820万戸を数え、実に世帯総数の13.5%にも及びます。
ただしこの数字は総務省統計局の「平成25年住宅・土地統計調査」によるものですので、5年後にあたる平成30年、つまり今年の数字ではありません。
答えはこれから分かることですが、もし平成25年から30年にかけて“空き家の除去や減築”が進んでいなかった場合、平成30年で空き家率16.9%程度、平成35年には空き家率21.0%に達するのではないかと言われています。
また、平成25年時点の820万戸という空き家総数のうち、どれだけ所有者不明の空き家があるか正確な数字は分かりません。
しかしながら、所有者不明の空き家は着実に増えていると考えられています。
所有者不明の空き家は、いったいなぜ所有者が不明なのでしょうか?
まずは所有者不明になってしまうケースを考えてみたいと思います。
所有者不明になる空き家
一言で所有者不明といってもその背景はさまざまですが、まず考えられるのが所有者死亡です。
天涯孤独という方も少なくない時代です。
身寄りのない家の所有者が死亡してしまい相続人がいない場合、空き家のままでなおかつ所有者不明ということになります。
あるいは相続人がいる場合でも、所有者が死亡してしまい相続人が全員、相続放棄をした場合も相続人不在となりますので、所有者不明の空き家となります。
または所有者の氏名は分かるものの、居所が不明で連絡が取れない、もしくは生存しているかどうかも分からないというケースも、所有者不明ではありませんが所有者所在不明の空き家となります。
考えられるケースはまだあります。
たとえば空き家の所有者が死亡し相続手続きも無事に完了していたとしても、相続人が海外に住んでいて住所が分からない、国内にいても住民票の住所に住んでいないというケースや、形式上は空き家の所有者または相続人になっている人が分かるが、当該者が認知症を患い話ができない状態の場合も、広義で所有者不明と言っても過言ではないでしょう。
このようなケースは、自治体などが空き家を適切に維持管理するよう求める相手が“存在しない”のと同じことで、日本ではこうした空き家が着実に増えていると言われているのです。
所有者不明の空き家はどうなる?
民法239条2項、民法959条によって、空き家を含む所有者不明の財産は、最終的に国庫に帰属することになります。
たとえば先ほどの例では、相続人を持たない空き家の所有者が死亡してしまった場合や、相続人を持っていても全員が相続放棄をした場合などです。
しかしながら、相続財産に関しては、それを放置していても自然に国庫に帰属することはなく、所定の手続きが必要になります。
相続されている空き家で相続人が不明のケース、つまり所有者所在不明の空き家や、そもそも相続人がいるかどうかが分からないケースなどがこれに当てはまります。
この場合、誰かが所定の手続きを経て国庫に帰属させることになるのですが、その手続きを行うのが相続財産管理人と呼ばれる人です。
家庭裁判所から選任される相続財産管理人は、多くの場合その地域の弁護士が就任し、必要な支払いや所定の手続きなどを済ませ、国庫に帰属させるのが仕事です。
たとえば埼玉県川口市では
※所有者が死亡し相続人が不在の空き家で、樹木が道路にはみ出しており周辺住民の生活の安全上、危険となるおそれがある空き家、かつ解体費用等を加味しても予納金が戻ってくる額で売却できる可能性が高い空き家
について
※「空き家等対策特別措置法」における特定空き家等であり、かつ周辺住民の生活環境の保全をはかるため市が法的措置を行うにあたっての名宛人が必要なため、市が利害関係人となる根拠がある
と判断し
※川口市が相続財産管理人選任の申し立てを実施したところ家庭裁判所から認められ、相続財産管理人を選任し、その管理人が土地の売却等に向けて手続きを行った。
という事例があります。
このように、所有者不明の空き家は最終的に何らかの方法で国庫に帰属することになります。
代執行可能な空き家等対策特別措置法
一方、代執行による所有者不明の空き家の除去なども実際に進んでいます。
平成27年5月26日より完全施行された「空き家等対策特別措置法」では
- 著しく保安上の危険となるおそれがある空き家
- 著しく衛生上の有害となるおそれがある空き家
について、自治体が「特定空き家等」と認めた場合、代執行が可能となったのです。
とはいえ、いきなり代執行を行う訳ではなく
指導と助言→勧告→命令→代執行
という手順を踏みます。
それぞれ猶予期間を与え、期間内に改善を完了させれば「特定空き家等」から除外されますが、勧告を受けた時点で固定資産税の優遇措置対象からは除外、また命令に従わなければ最大50万円の過料など空き家の所有者にとっては放置しておけない厳しい法律です。
この空き家等対策特別措置法は所有者不明の空き家に対しても有効で、代執行が可能になります。
ただし
“過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができないときは、市町村長は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる”
と定められていますので、所有者不明であるからといってすぐさま代執行される訳ではなく、不動産登記の確認や固定資産課税台帳などで所有者の調査が行われます。
調査の手を尽くしてもなお所有者不明である空き家に関して、代執行を行うことができるという訳です。
たとえば東京都台東区では2018年1月24日から約1週間かけて、倒壊のおそれがある所有者不明の空き家を解体しました。
所有者不明のこの空き家は木造2階建てで延べ床面積約40平米、近隣住民の話では10年以上前から空き家だったと言われています。
所有者不明の場合に適用される略式代執行の手続きを経て実施されたもので、東京都では建物全体に適用された初めての例となりました。
なお、所有者が分かっている空き家に対して代執行を行った場合、その費用はすべて所有者に支払う義務がありますが、所有者不明の空き家に対して代執行を行った場合、その費用は自治体が負担することになるケースがほとんどです。
空き家は放置できない時代になっている
今回は所有者不明の空き家はどうなっていくのか?ということをメインに解説してきました。
最終的には国庫に帰属する、あるいは自治体が負担して除去などを行うことになりますが、所有者不明でなくとも「特定空き家等」と認められれば指導や助言に従い何らかの措置を講じる必要がありますので、これまでのように“放置してもおとがめなし”という時代ではなくなりました。
空き家は適正に維持管理されなければ老朽化が急速に進み、周辺住民の生活の安全面や衛生面に大きな影響を与えてしまいます。
そのため、もし現在すでに空き家を抱えているという方は、所有者不明の空き家になってしまう前に何らかの対策を講じる必要があります。
この機会に空き家の利活用や処分などを考えてみてはいかがでしょうか?
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