世界遺産にも登録されている日光の社寺をはじめ、リゾート地として人気の那須、餃子で有名な宇都宮、そして鬼怒川温泉、日光杉並木街道、佐野厄除け大師…数え上げたらきりがないほどさまざまな顔を持つのが栃木県です。
今回はその栃木県の空き家事情と対策、空き家に関する補助金・助成金制度をご紹介します。
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栃木県、各市町の空き家に関する補助金・助成金制度をご紹介
もちろん、栃木県も各市町も黙って見ているわけではありません。
あの手この手で空き家対策に取り組んでいます。
ここでは、そのうち空き家に関する補助金や助成金制度をご紹介します。
各市町の補助金・助成金制度をご紹介
鹿沼市では、市が認定した「不良住宅」の空き家、あるいは「特定空き家等」に認定されている空き家の解体工事を行う際に、その一部を補助してくれます。
いずれも市が調査を行い、認定されることが最低条件となりますが、補助対象工事費用に対して50万円を上限に、2分の1までを補助してくれます。
那珂川町では、町が設置している「地域資源情報バンク」に登録された空き家を借りて改修工事を行う際に、その費用の一部を補助してくれます。
総工費が20万円以上の工事に限られますが、一般世帯の場合は20万円を上限に2分の1まで、中学生以下の子どもが同居する子育て世帯では30万円を上限に同じく2分の1までを補助してくれます。
栃木市では、再利用が望めない空き家を解体し、その敷地を有効活用することを目的に、解体費用の補助を行っています。
倒壊のおそれがある空き家を解体する場合は、50万円を上限に対象工事費用の2分の1までを補助してくれます。
また、老朽化が進み、修繕が困難な空き家については25万円を上限に、対象工事費用の2分の1までを補助してくれます。
小山市でも、管理不全に陥っている空き家を解体してその土地を有効活用することを目的に、解体費用の一部を補助しています。
特定空き家を解体する場合は、対象工事費用に対して50万円を上限に2分の1まで、準特定空き家と認められた空き家を解体する場合は、対象工事費用に対して30万円を上限に2分の1まで補助してくれます。
なお、その土地を市や自治会、その他公共的な団体に寄附する場合は、上記の上限額に20万円が加算されます。
宇都宮市では、解体ではなく空き家を地域活性化に役立てる目的で改修する場合、その工事費用の一部を補助してくれます。
- 空き家の取得および改修工事に要した費用の3分の2(上限300万円)
- 耐震工事に要した費用(上限140万円)
上記の合計を補助してくれるというものです。
- 日光市「特定空き家等除却費補助金」(pdfファイルが開きます)
日光市では、特定空き家等と認定された空き家の除却(解体)、改修、あるいは周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置を講ずる際、その費用の一部を補助してくれます。
補助の対象となる工事費用のうち、100万円を上限に2分の1まで補助してくれるというものです。
那須塩原市では、空き家バンク(※1)に登録している建物を購入し、機能や性能の維持・向上を目的としたリフォーム工事をする際に、補助金を交付してくれます。
空き家バンクに登録されている建物で、かつ空き家バンク利用登録者が定住のために購入する空き家であることなどいくつかの条件がありますが、補助対象工事費用に対して50万円を上限に、2分の1まで補助してくれます。
空き家バンクとは?
空き家を貸したい、売りたいという所有者または管理者と、空き家を借りたい、買いたいと思っている人とをマッチングさせるシステムです。
全国の各自治体がそれぞれ独自に設置し、空き家対策の一環として運用しています。大手不動産会社などはそうした全国の空き家バンクの情報を一元化して掲載しているところもあります。
制度を利用するにあたっての注意点
上記でご紹介した補助金・助成金制度は、平成30年6月時点の情報です。
最新情報については管轄の市町のホームページ等でご確認ください。
また、制度を利用して補助金や助成金の交付を受けるための要件、上限金額、あるいは交付の対象となる工事内容などは市町ごとに異なります。
特にいずれの市町でも要件としていることが多いのは
- 対象となる工事の着工前に交付が決定されなければならないこと
- 市町税等に未納がないこと
- 所有権以外の権利が設定されていないこと
などが挙げられます。
補助金や助成金をあてにしていたら要件から外れており、受けられなかったということのないよう、事前に入念に確認しておくことをおすすめします。
栃木県の空き家事情とは?
関東地方北部に位置する栃木県は、酪農、いちごといった農業、自動車産業や精密機器産業といった工業、日光・那須・鬼怒川・華厳の滝といった観光業など、それぞれの産業がバランスよく栄えている県です。
まずは、そんな栃木県の空き家事情と、そこから見えてくる問題を考えていきます。
栃木県の空き家事情
総務省統計局が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」における、栃木県の空き家数の推移を見てみましょう。
- 空き家数の推移
平成10年 8.9万戸
平成15年 10.1万戸
平成20年 12.6万戸
平成25年 14.3万戸
このように推移しています。
次に住宅総数の推移を見てみるとこのようになります。
- 住宅総数の推移
平成10年 72.5万戸
平成15年 77.0万戸
平成20年 84.0万戸
平成25年 87.9万戸
栃木県では、空き家数とともに住宅総数も増加傾向にあることが分かります。
なお、空き家数だけに着目すると、1都6県のなかでは最も少ない数値を示しています。しかし、空き家率で見てみるとどうでしょうか。
- 空き家率の推移(カッコ内は1都6県における順位)
平成10年 12.2%(2位)
平成15年 13.5%(2位)
平成20年 15.0%(1位)
平成25年 16.3%(2位)
このように、空き家率では1都6県の中でもトップクラスであることが分かります。
空き家率はいずれの年も全国平均を大きく上回っており、空き家数こそ少ないものの、住宅総数に対する空き家率は非常に高い県であると言えます。
さらに、人口の推移を見ていきます。
- 人口の推移
平成10年 200.1万人
平成15年 201.4万人
平成20年 201.5万人
平成25年 198.6万人
ほぼ横ばいですが、微減しています。
これらのデータをまとめると、栃木県は
- 人口はほぼ横ばいだが住宅総数は増えている
- 空き家数自体は少ないが住宅総数に占める空き家率は非常に高い
ということになります。
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栃木県が抱える空き家問題とは
栃木県では空き家に関するどのような問題を抱えているのでしょうか?空き家の内訳から推測していきます。
空き家は主に「二次的住宅」「賃貸用または売却用の住宅」「その他の住宅」に分類されます。
それぞれの定義を簡単にまとめると次のようになります。
- 二次的住宅
別荘や、たまに寝泊まりする人がいる住宅
- 賃貸用または売却用の住宅
賃貸または売却に出しているが、借り手および買い手が見つからないまま空き家状態になっている住宅
- その他の住宅
転勤や入院といった理由で居住者が長期間不在になっている住宅、居住者や所有者が不明のまま放置されている住宅、建て替えなどのために取り壊し予定になっている住宅
問題点をより明確化するため、ここからは「賃貸用の住宅」と「売却用の住宅」を分けて考えていきます。
- 栃木県の空き家の内訳(カッコ内は空き家総数に占める割合)
二次的住宅 1.5万戸(約10%)
賃貸用の住宅 7.6万戸(約53%)
売却用の住宅 0.3万戸(約2%)
その他の住宅 5.0万戸(約35%)
このことから分かるのは、栃木県では「賃貸用の住宅」および「その他の住宅」の空き家が多いということです。
この状況がもたらすリスクや問題点を考えていきましょう。
賃貸用の住宅の空き家が増えることのリスクや問題点
賃貸用の住宅とはマンション、アパート、団地といった集合住宅や賃貸用の一軒家です。
会社や学校の寮、寄宿舎などは含まれません。
賃貸用の住宅の空き家が多いということは、それだけ空室が多いということです。
空室が多いとどうなるのか、まず考えられることは家賃収入が減りますので、オーナーの生活に影響を与えます。
また、古くなった集合住宅は改修工事を行って機能を維持・向上させる必要がありますし、住人の安全性を確保するために耐震性を高める工事なども行っていかなければなりません。
しかしながら入居者がいない状態では十分な資金が集められず、古くなったままどうすることもできないケースが非常に多くなっています。
老朽化したまま放置されれば、大地震の際などに倒壊のリスクが高まります。住人の安全性を担保できなくなってしまうのです。
その他の住宅の空き家が増えることのリスクや問題点
その他の住宅の空き家は、そのほとんどが一軒家です。一軒家の空き家が増えると、どのようなことが考えられるでしょうか?
人が住んでいないため、適正に管理されていないことがほとんどです。
そのため、庭木や雑草が生い茂り、地域の景観を損ないます。
やがて害虫などが発生するようになるでしょう。
また、明らかに人が住んでいない、適正に管理されていないということが分かってしまうと「ゴミの不法投棄」「放火」「違法薬物の取引」「未成年者の喫煙」そのほかさまざまな犯罪の現場に利用されてしまうおそれがあります。
ほかにも、老朽化した設備からガス漏れ、漏電などによって火災や爆発を招いたり、屋根材や壁材が強風で飛散して近隣住民に危害を与えてしまうおそれもあります。
さらに、棲みついた野良犬や野良猫、ネズミなどの糞尿や死骸、その腐敗臭で衛生上悪影響を与えることも考えられます。
早急な対策が必要
このように、「賃貸用の住宅」「その他の住宅」の空き家が増加することでさまざまなリスクや問題が生じてきます。
栃木県や各市町は、早急に空き家対策を講じる必要があります。
栃木県や各市町の空き家対策
続いて、補助金や助成金制度以外に栃木県や各市町が実施している空き家対策を見ていきましょう。
栃木県の空き家対策
栃木県では、空き家の有効活用を通じて栃木県内への定住などを促進する目的で“とちぎ暮らし”住まいネットを設置しています。
定住あるいは定期的に滞在することができる人で、かつ空き家を利用することによって公の秩序を乱すことや、善良な風俗を害するおそれがないと認められる人が対象です。
また、栃木県住生活支援協議会では、空き家を売りたい、貸したい、あるいはどうすれば良いか困っている、といった空き家の所有者に向けて相談窓口を設けています。
- 広域相談窓口
栃木県住生活支援協議会(栃木県建築士会)
宇都宮市簗瀬町1958-1
028-639-3150
[email protected]
あるいは、各市町でも地域の相談窓口を設けていますので、管轄の自治体に問い合わせてみても良いでしょう。
賃貸や売却以外に「空き家を所有しているが、どうすれば良いか分からない」と困っている人は少なくありません。
一人で悩まずに、専門家に相談して早期に解決を図りましょう。
空き家バンク
栃木県の市町はそれぞれ空き家バンクを設置し、空き家の利活用を促進しています。
空き家は放置できない時代に
「賃貸に出しているが借り手が見つからない」
「売却に出しているが買い手がつかない」
「どうすれば良いか分からずにそのままにしている」
「固定資産税の優遇を受けるため取り壊さずにいる」
「解体費用を捻出できない」
など、空き家をそのままにしている理由や背景は人それぞれです。
これまでは、具体的な対策が取られてこなかったため、放置もある程度は看過されてきました。
しかし、平成27年5月26日より完全施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家等対策特別措置法)」によって、もはや放置できない時代になってきています。
同法を簡単にまとめると
- 著しく保安上の危険となるおそれがある空き家
- 著しく衛生上の有害となるおそれがある空き家
に対して、自治体は「特定空き家」に指定することができるようになり、強制対処できる規定が設けられたのです。
もちろん、即、強制処分というわけではありません。まずは、空き家の所有者に対して改善に向けた助言や指導がなされます。
猶予期間内に改善されない場合、勧告措置が取られます。この時点で、固定資産税の優遇措置対象から除外されます。
さらに猶予期間内に改善されない場合は命令が下され、最大で50万円の過料が課されます。
命令後の猶予期間内に改善が完了しなかった場合、ついに行政代執行となり、強制的に解体や改修といった措置がとられることになります。
行政代執行にかかった費用はすべて、その空き家の所有者に請求がいきます。
1項目目でもお伝えしましたが、空き家、特に「その他の住宅」の空き家を放置してしまうと、近隣住民や地域にさまざまな悪影響を及ぼします。
「空き家等対策特別措置法」がなくても適正に維持管理されることが望ましいのですが、同法が完全施行されたことによって、いよいよ放置できない時代へと変わっていったのです。
現在空き家を所有している人、将来的に空き家を相続したり所有したりする可能性がある人も多いと思います。
放置してしまうことでやがて特定空き家に認定されることになるかもしれませんし、たとえそうでなくても近隣住民や生活環境に悪影響を及ぼしてしまうかもしれません。
各市町が実施している空き家に関する補助金・助成金制度を利用したり、空き家バンクに登録したりするなどして、できるだけ早く「空き家をどうするか」を決めておくことが大切です。
栃木県は空き家対策に力を入れている
今回は、栃木県の空き家事情と対策、そして空き家に関する補助金・助成金制度をご紹介してきました。
空き家を抱える理由や背景はひとそれぞれです。
中には止むを得ず放置せざるを得ない人もいるかもしれません。
しかし、放置してしまうことでさまざまなリスクや問題が生じてきます。
もし適正な維持管理が難しい場合は、栃木県や各市町の相談窓口をたずねたり、制度をうまく活用したりして、将来的に危険な空き家や特定空き家になってしまわないよう、対策を講じておきましょう。
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