最近、空き家の火災が増えています
近年、空き家から出火する事件が増えています。
その典型として今年4月、埼玉県で空き家から出火するという事件が発生しました。
空き家なのになぜ出火してしまったのでしょうか?
考えられる原因や所有者が取るべき対策などについて考えてみたいと思います。
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空き家火災の詳細
今年4月14日午前7時頃、埼玉県さいたま市見沼区の空き家から突然出火し、隣接する住宅に燃え移り、木造2階建ての住宅2棟がほぼ全焼しました。
隣家にはその空き家の所有者の方が住んでいましたが、幸いなことに逃げ出して無事だったとのことですが、どうして空き家から出火するのでしょうか?
その空き家は施錠されていたとのことですので、外側から火が出たものと思われますが、その場合考えられることとしては
- タバコのポイ捨てによる出火
- 何者かによる放火
- ガス漏れなどによる爆発
- 配線器具のトラブルによる出火
などが挙げられます。
この中で最も疑わしいのが「何者かによる放火」です。
その理由は次の項目で解説をします。
出火原因の多くは「放火」や「放火の疑い」だった!
平成25年に消防庁が発表したデータによりますと、平成24年の全国の総出火数は44,102件で、出火原因のうち「放火」が5,340件(総出火数の12.1%)で1位、3,184件だった「放火の疑い」も含めると実に8,524件(総出火数の19.3%)にも及びます。
この数字は平成25年でも大きな変化はなく、総出火数39,111件のうち放火によるものは4,033件(総出火数の10.3%)、放火の疑いによるものは2,469件、2つを合わせると6,502件(出火総数の15.4%)となります。
これほどまでに放火や放火の疑いによる火災が多いということに驚かされます。
放火されやすい家の特徴は?
空き家に限らず、放火されやすい家の特徴というものがあります。
当てはまる数が多いほど、注意が必要です。
門扉がない、またはあっても半開きなど施錠がされていないことが容易に分かり、誰でも侵入できてしまう。
- 部屋の明かりが真っ暗で玄関灯などもなく、人の気配が感じられない。
- 垣根や塀が低いなどで、道路から庭などの敷地内が覗きやすい。
- ドアや窓などが施錠されておらず、かつ開いている。
- 家の周囲に木材や新聞・雑誌など燃えやすいものがある。
- 街灯がなく(または暗く)、隣家との距離も離れている。
このような家は放火のターゲットとなってしまう可能性が高いと言われています。
空き家は狙われやすい!
空き家は誰も住んでいませんので、どうしても管理が行き届きません。
特に早朝や深夜など、人通りもなく皆が寝静まっている時間帯などは人目にもつきにくいため、しばしば犯罪の温床となってしまうのです。
今回の埼玉県の事件は放火によるものかどうか操作をしているところではありますが、空き家だったこと、早朝だったことなどからも放火の疑いが強いとみて良いのではないでしょうか。
不幸中の幸いで、燃え移った隣家がその空き家の所有者だったこと、そしてケガ人などが出ずに済んだことなどが挙げられますが、一歩間違えば死傷者を出してしまったり、他の住民にも被害を及ぼしてしまいかねません。
空き家を抱えている方は、ぜひ対策を練りましょう。
空き家への放火を防ぐ対策例
- 侵入者を防ぐ、あるいは投げ入れを防ぐために敷地周辺をフェンスなどで囲む
- 燃えやすいものは放置しないようにする
- 夜間は自動点灯する照明を設置するなど、できるだけ明るくする
- 電気やガスは確実に止め、灯油などの燃えやすいものは放置しない
- 門扉やフェンス等に管理者などを明示して管理されていることを知らせる
もちろん、空き家をそのまま放置してしまうこと自体が良くないことと言えるかも知れませんが、すぐに解体などの対処ができない場合、所有者自身が見回りに来るとか、上記のような対策を練るとか、何かしら行うようにしましょう。
また、空き家の火災は必ずしも放火によるものだけではありません。
実際に、ネズミが配線をかじってしまって火災になってしまったケースも報告されています。
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「空き家に火災保険」はあるの?
空き家が火災になった時「ボロボロの空き家で処分にも困っていたから、むしろ燃えてくれて助かった」と考える方も少なからずいるようです。
しかし、たとえ空き家が燃えたとしてもキレイさっぱり、何から何まで消失してしまうわけではありません。
躯体が残っていたり、物置や庭に置かれていた物なども残存物として残っています。
これらを撤去するにはそれなりの費用が必要になってきます。これは火災に限らず自然災害でも同様です。
また、空き家が出火元となって隣家に延焼した場合、空き家の所有者が責任を問われることがあります。
失火法によって「重過失がある場合」と定められていますので、まずはその重過失があったかどうかを調べられることになり、もし重過失があったと判断されれば賠償責任を負うことになります。
火災保険に加入していれば、これら撤去費用や賠償費用などをまかなえる可能性が大きくなります。
ただし保険料は住宅とは異なるケースが多い
火災保険の保険料は住宅の用途によって変わりますが、空き家の場合、「住宅」ではなく店舗や事務所などと同じ「一般物件」に該当するケースがほとんどです。
家財道具が置いてあって今すぐ住める状態で、たまに居住しているという場合は「住宅」と判断されるケースもあります。
個別の事情によって判断は異なります。
「一般物件」に該当すると判断された場合、「住宅」よりも保険料が割高になりますので、覚えておきましょう。
しかし、それを差し引いても万が一のことを考えると、やはり空き家であっても火災保険に加入しておいた方が安心と言えます。
また、もし延焼して隣家に燃え移ってしまった場合、特に重過失がなければ基本的には出火元である空き家の所有者には賠償義務はありませんが、そうは言っても長年の付き合いがあったご近所さんなどに被害を与えてしまったら、所有者自身も心苦しい思いをしてしまうことでしょう。
もし心配な方は「類焼特約(類焼損害特約)」をセットにすることも検討しましょう。
類焼特約とは?
被保険物件が出火元となって近隣の住宅、家財などに延焼してしまった場合、法的には損害賠償責任がなくても、近隣の被害を補償するものとなります。
類焼特約は保険会社によって詳細が異なりますので、詳しくは加入する保険会社に確認してください。
空き家放火以外にも様々なリスクがあることを覚えておこう!
今回は主に放火のリスクについて解説をしましたが、空き家に潜むリスクはそれだけではありません。
空き家に潜むリスク
- 違法薬物等の取引現場
- 性犯罪の現場
- 未成年者の喫煙・飲酒現場
- ゴミの不法投棄
- 建物の損壊や倒壊による近隣への被害
- 雑草や庭木の放置による害虫や害獣の大量発生
- 野良犬や野良猫、ネズミなどの糞尿・死骸
このように様々なリスクが潜んでいます。
「解体できる資金がない」「思い出が詰まっていてどうしても取り壊せない」というケースもあるかも知れません。
しかし、今回の解説のように自分だけでなく周囲への被害、最悪のケースとしては死者まで出してしまう可能性があるということは忘れないようにしましょう。
もしすぐに解体などの対処が難しい場合は、せめて火災保険への加入を検討するなど、何かしらの対策を練ることをおすすめします。
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