解体工事業を営むにはどの様な手続きが必要なのでしょうか?
元請け、下請けに関わらず「建設業許可」または「解体工事業登録」が必要になりますが、今回はそのうち「解体工事業登録」について、登録方法や登録に必要な要件などを詳しく解説します。
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「解体工事業登録」の手続き
解体工事業を営むには「建設業許可」または「解体工事業登録」のいずれかが必要になります。
まずは2つの違いを見てみましょう。
1.建設業許可
(請負金額500万円以上の解体工事を行う際に必要な許可)
これまで「建設業許可」を取得して解体工事業を営むには「土木工事業」「建築工事業」「とび・土工工事業」のいずれかが必要でした。
しかし、平成28年6月1日施行の改正建設リサイクル法によって、同日以降に「建設業許可」を新たに取得し解体工事業を営む場合、新設された「解体工事業」の許可が必要になります。
なお経過措置として、平成28年5月30日までに「とび・土工工事業」の許可を取得している場合、平成31年5月30日までは「解体工事業」の許可は不要で解体工事業を営むことができます。
また、「建設業許可」を取得していれば「解体工事業登録」を行う必要はありません。
2.解体工事業登録
(請負金額500万円未満の解体工事を行う際に必要な許可)
請負金額が500万円未満の解体工事を行うために必要な許可が「解体工事業登録」です。
解体工事業の登録には「技術管理者」を1名選任し設置する必要があります。
「建設業許可」との大きな違いは請負金額にありますが、新たに解体工事業を営もうとする場合、まずはこの「解体工事業登録」を行うことがほとんどです。
なお、「建設業許可」は1つの都道府県に営業所を構えて解体工事を行う場合、区域を管轄する都道府県知事に申請することになりますが、2つ以上の都道府県に営業所を構えて解体工事を行う場合は国土交通大臣の許可が必要になります。
一方の「解体工事業登録」は、解体工事を行う区域を管轄している都道府県知事に登録申請し、管轄外の都道府県で解体工事を行う場合はその都度、区域を管轄する都道府県知事に登録申請する必要があります。
「建設業許可」と「解体工事業登録」についてはこのような違いがありますので、まずは基本的な部分を押さえておきましょう。
「解体工事業に登録するために資格は必要?
「解体工事業登録」を行う際、最も重要と言える部分が「技術管理者」の選任です。
「技術管理者」が不在の場合は「解体工事業登録」を申請することができません。
その「技術管理者」には次のような資格や要件が必要になります。
「解体工事業登録」に必要な「技術管理者」が満たすべき資格や試験は次の通りです。
建設業法による技術検定
- 1級建設機械施工技士
- 2級建設機械施工技士(第1種または第2種に限る)
- 1級土木施工管理技士
- 2級土木施工管理技士(土木に限る)
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士(建築または躯体に限る)
建築士法による建築士
- 1級建築士
- 2級建築士
技術士法による二次試験
- 技術士(建設部門)
職業能力開発促進法による技能検定
- 1級とび・とび工
- 2級とび合格後解体工事実務経験1年以上
- 二級とび工合格後解体工事実務経験1年以上
国土交通大臣の登録を受けた試験
- 試験の合格者
また、下記のいずれかに該当する場合も「技術管理者」に選任することができます。
※大学、高等専門学校にて土木工学等に関する学科を修了した人
実務経験2年以上(国土交通大臣が実施した講習、登録した講習を受講した場合は実務経験1年以上)
※高等学校、中等教育学校にて土木工学等に関する学科を修了した人
実務経験4年以上(国土交通大臣が実施した講習、登録した講習を受講した場合は実務経験3年以上)
※上記以外は実務経験8年以上
国土交通大臣が実施した講習、登録した講習を受講した場合は実務経験7年以上
そのうえで、欠落要件などに該当しないことが条件となり、すべてクリアした場合に「技術管理者」として選任することができるようになります。
新潟県で解体工事業に登録する方法
今回は一例として、新潟県で解体工事業に登録する場合の方法について具体的に解説します。
そもそも登録を受けるためには、後述する「欠落要件」に該当しないこと、そして前項の「技術管理者」を設置していることが前提となります。
解体工事業登録の手続きに必要な書類
- 解体工事業登録申請書(個人/法人)
- 誓約書(個人/法人)
- 登記簿謄本(法人のみ)
- 法人の役員の調書、本人の調書、法定代理人の調書(個人/法人)
- 実務経験その他技術管理者の要件を満たすことを証明する書面(個人/法人)
- 法人の役員の住民票の抄本、本人の住民票の抄本、法定代理人の住民票の抄本(個人/法人)
- 技術管理者の住民票の抄本(個人/法人)
- 事業主、役員、法定代理人の一覧表
「解体工事業登録」を申請する場合、これら一式を次の提出先に必要な部数提出します。
解体工事業登録する本社や本店が新潟県内に所在する場合
本社や本店を管轄する地域振興局地域整備部等(正本1部、副本2部)
解体工事業登録する本社や本店が新潟県外に所在する場合
新潟県土木部管理課建設業室(正本1部、副本1部)
なお、新規で「解体工事業登録」をする場合の申請手数料は33,000円、「解体工事業登録」の更新は申請手数料26,000円となります(いずれも2018年3月時点)。
「解体工事業登録」後に気をつける点は?
無事に新潟県で「解体工事業登録」を終えた後、気をつけなければならない点はどんなことでしょうか。
まず、「解体工事業登録」は5年間という有効期限があるということを知っておかなければなりません。
初歩の初歩ですが、登録更新を忘れてしまい、有効期限が切れたまま解体工事を行ってしまった場合、自社はもちろん施主にも責任が及ぶ可能性がありますのでうっかりでは済まされなくなってきます。
「解体工事業登録」は有効期間が満了する30日前までに更新の申請を行う必要がありますので、十分注意が必要です。
また、そのほか「解体工事業登録」をした後に気をつける点としては、各種変更および廃業などに関する届出についてです。
各種変更の届出
登録している次の項目に変更があった場合、変更になった日から30日以内の届出が必要です。
1商号、名称、氏名および住所
登記事項証明書または住民票の抄本
2営業所の名称および所在地
登記事項証明書
3役員の追加
登記事項証明書、住民票の抄本、誓約書、調書、一覧表(事業主・役員・法定代理人)
4未成年者の場合の法定代理人
住民票の抄本、誓約書、調書、一覧表(事業主・役員・法定代理人)
5技術管理者
住民票の抄本、実務経験その他技術管理者の要件を満たすことを証明できる書面
廃業等の届出
「解体工事業登録」している解体工事業者が廃業する場合、次に該当する立場の人が届け出をする必要があります。
1登録している解体工事業者が死亡した場合(個人)
解体工事業者の相続人
2登録している解体工事業者が合併して消滅した場合(法人)
消滅した解体工事業者を代表する役員
3登録している解体工事業者が破産手続開始により解散した場合(法人)
破産管財人
4登録している解体工事業者が合併、破産決定以外の理由で解散した場合(法人)
清算人
5登録している解体工事業者が新潟県内で解体工事業を廃止した場合(個人/法人)
解体工事業者であった個人、解体工事業者であった法人を代表する役員
このような届出が必要になります。
なお、解体工事業に登録したのち「建設業許可」を取得した場合、「解体工事業登録」は無効となりますが、その場合も新潟県への通知が必要になりますので併せて覚えておきましょう。
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新潟県で解体工事業の登録を受けられない欠落要件とは
選任した「技術管理者」が実務経験や資格などの要件を満たしており、「解体工事業登録」の申請書類一式も無事に準備できたとしても、次の欠落要件に該当する場合、「解体工事業登録」を拒否されてしまいますので事前に把握しておきましょう。
新潟県で解体工事業登録を拒否される要件
- 解体工事業の登録を取り消された日から2年を経過しない者
- 解体工事業の登録を取り消された法人において、その処分日の前30日以内に役員であり、かつその処分日から2年を経過していない者
- 解体工事業の業務停止を命ぜられ、その停止期間が経過していない者
- 建設リサイクル法に違反して罰金以上の刑を受け、その執行が終ってから2年を経過していない者
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 解体工事業者が未成年で、法定代理人が上記1から5のいずれかに該当するとき
- 法人でその役員のうちに上記1から5までのいずれかに該当する者がいるとき
- 技術管理者を選任していないとき
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
該当する事由がないかどうか、解体工事業の登録申請をする前に十分確認が必要です。
その他の地域で解体工事業登録をする場合
新潟県で解体工事業に登録する方法を中心に解説を進めてきましたが、前述のように、解体工事を行う区域を管轄する都道府県知事ごとに「解体工事業登録」の申請が必要になります。
たとえば東京都や埼玉県など、新潟県以外で解体工事業登録をする場合、登録方法や必要な書類などに違いはあるのでしょうか?
結論から言えば、新潟県以外の都道府県で「解体工事業登録」をする場合も基本的に要件などは同じです。
また、必要書類についても様式は変わりませんので、一度申請している解体工事業者であれば特に迷うこともないでしょう。
ただし、それぞれの都道府県知事が独自に定めるルールなどがあればそれに従う必要がありますし、登録拒否の要件についても都道府県ごとに若干異なるケースがあるほか、申請から登録までの期間や提出先についても各都道府県で異なりますので、事前に確認しておくことをおすすめします。
解体工事業者登録されている業者一覧を確認する方法
各都道府県に登録されている解体工事業者は、都道府県のホームページまたは都道府県庁等で、一覧表で確認することができます。
各都道府県の解体工事業者登録一覧の確認方法
東京都
東京都都市整備局ホームページの「建設リサイクル法:解体工事業者のみなさんへ」のページ「解体工事業者一覧」より確認できます。
千葉県
千葉県庁中庁舎5階にある県土整備部技術管理課建設リサイクル推進班にて、平日午前9時~午後5時まで閲覧することができます。
詳しくは千葉県ホームページ「解体工事業の登録について」をご確認ください。
大阪府
大阪府ホームページの「解体工事業登録の申請、届出、証明等」のページ下部「解体工事業者一覧」より確認できます。
愛知県
登録した営業所を管轄する部署で、平日の午前9時30分~正午までと、午後1時~4時30分までの間で閲覧することができます。
詳しくは愛知県建設部ホームページの「解体工事業」をご確認ください。
埼玉県
埼玉県ホームページの「解体工事業の登録」のページにて、埼玉県内の業者、県外の業者それぞれ別々に閲覧することができます。
新潟県
新潟県庁7階にある新潟県土木部管理課建設業室内にて、県庁が開庁している日の午前9時30分~正午までと、午後1時~4時30分までの間に閲覧することができます。
詳しくは新潟県ホームページの「解体工事業者登録簿の閲覧」をご確認ください。
一例ですが、このように各都道府県のホームページ等では登録されている解体工事業者の一覧について案内されています。
一覧には登録日や満了日なども記載されていますので、自社の有効期限を確認する場合、登録内容の変更の有無について確認する場合などに役立ててみてはいかがでしょうか?
解体を業とするなら工事業登録を!
今回は解体工事業への登録方法や登録の際の注意点などを中心に詳しく解説してきました。
請負金額500万円以上の解体工事を受注できる「建設業許可」を取得する際、それまでの解体工事の実績、つまり500万円未満の解体工事の実績を証明する必要があります。
請負金額500万円未満の解体工事を受注する場合は「解体工事業登録」している必要がありますので、つまるところ、新たに解体工事を営むのであれば「解体工事業登録」は必ず行わなければなりません。
解体工事業に登録し解体工事を行う際は、特に建設リサイクル法における違反、不適正処理や不法投棄などには細心の注意を払いながら解体工事を行い、登録の取り消しや業務停止を受けることのないよう、心がけましょう。