産業廃棄物の処理に必要なマニフェストって何?その仕組みを解説します

産業廃棄物を適正に処理するために定められているのが、マニフェスト制度です。

産業廃棄物の排出事業者で新たに担当になって、マニフェスト制度を理解するのに苦労している方もいるのではないでしょうか。

マニフェスト制度とは、産業廃棄物を処理するまでの流れを管理する伝票「マニフェスト」を用いてチェックをする仕組みです。

産業廃棄物を適切に処理することは法律によって定められています。

適切に運用ができていない場合、当然罰則も受けることになってしまいます。

今回は、産業廃棄物の処理に必要なマニフェストについて、わかりやすくどういったものかを解説していきます。

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産業廃棄物処理に必要なマニフェストって?

マニフェストとは、排出事業者が処理業者に産業廃棄物の処理を委託する場合に、法律によって交付が義務付けられている書類です。

産業廃棄物の処理を適正に実施しているかをチェックするための伝票で、誰がどのように産業廃棄物を取り扱うかということを記載します。

また、処理業者は委託業務に対して、いつ完了したかをマニフェストに記載して排出事業者に返送することで、処理の終了確認をします。

マニフェストは産業廃棄物の種類や運搬先の事業場が違う場合、それぞれに交付する必要があり、産業廃棄物の引き渡し時に交付するようにします。

マニフェストの記載内容と処理を委託する契約書は、相違が無いようにする必要があり、手元に残るマニフェストは5年間保存しなければいけません。

それから、運搬業者がマニフェストの発行を代行することもありますが、その場合マニフェストにサインを入れた時点で、排出事業者がすべての内容について責任を持ったことになります。

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産業廃棄物処理におけるマニフェスト制度の仕組み

産業廃棄物の処理には、排出事業者と収集運搬をする運搬業者、中間処理をする処理業者と最終処分をする処理業者が関わります。

産業廃棄物を処理したい排出事業者は、マニフェストを交付してから90日以内(特別管理産業廃棄物は60日以内)に中間処理が完了したことを確認する必要があります。

また、最終処分が中間処理を経由する場合は、180日以内に最終処分が完了したことを確認しなければいけません。

もし、期限内に処分業者からの報告が得られなかった場合、状況を確認した上で適切な措置をすると共に、都道府県などに報告する必要があります。

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産業廃棄物処理に必要なマニフェストは2種類の方法がある

マニフェストを使用するには紙によるマニフェストと電子マニフェストの2種類の方法があります。

ここでは排出事業者が交付するマニフェストについて解説していきます。

中間処理業者も最終処分業者や産業廃棄物をそこまで運ぶ収集運搬業者にマニフェストを交付しますが、わかりやすく解説するために割愛させていただきます。

それでは、それぞれのマニフェストについてご紹介していきます。

紙マニフェスト

複写式伝票を使用するのが紙によるマニフェストで、「A票・B1票・B2票・C1票・C2票・D票・E票」の7枚つづりになっています。

産業廃棄物を処理する流れの中で、それぞれの紙が各事業者に渡されていき、処理が進むにつれて排出事業者は伝票の写しを回収していきます。

紙によるマニフェストの流れ

最終的に手元に残る伝票をまず確認しておきましょう。

  • 排出事業者…A票(発行した時の控え)、B2票(収集運搬の終了報告)、D票(処分終了の報告)、E票(最終処分終了の報告)
  • 収集運搬業者…B1票(収集運搬の終了報告の控え)、C2票(処分終了の報告)
  • 中間処理業者…C1票(処分終了の報告の控え)

①産業廃棄物の発生

処理をしたい産業廃棄物が発生したら、マニフェストに必要事項を記入するなど、準備をします。

紙マニフェストは、各都道府県の産業廃棄物協会で購入することが可能です。

また、施行規則第8条の21第2項で定められている様式であれば、市販されているもの以外の使用も可能です。

  •  排出事業者「A票・B1票・B2票・C1票・C2票・D票・E票」

②産業廃棄物の運搬

産業廃棄物を運ぶ収集運搬業者にマニフェストを渡します。

収集運搬業者は、排出事業者にA票を渡して、残りの6枚は産業廃棄物と一緒に持っていきます。

  •  排出事業者「A票」
  •  収集運搬業者「B1票・B2票・C1票・C2票・D票・E票」

③産業廃棄物の運搬終了

マニフェストと産業廃棄物を中間処理業者に運んだ収集運搬業者は、B1票とB2票を受け取り、B2表を排出事業者に返送して、運搬の終了報告をします。(注:交付日から90日以内(特別管理産業廃棄物は60日以内)に返送される必要があります)

マニフェストの残りの4枚は、産業廃棄物と次の工程に進みます。

  •  排出事業者「A票・B2票」
  •  収集運搬業者「B1票」
  •  中間処理業者「C1票・C2票・D票・E票」

④中間処理の終了

産業廃棄物の中間処理が完了したら、その報告としてC2票を収集運搬業者へ、D票を排出事業者に返送します。(注:交付日から90日以内(特別管理産業廃棄物は60日以内)に返送される必要があります)

中間処理業者は、C1票を控えとして持ち、E票は産業廃棄物の最終処分が終わるまで保管しています。

  •  排出事業者「A票・B2票・D票」
  •  収集運搬業者「B1票・C2票」
  •  中間処理業者「C1票・E票」

⑤最終処分の終了

産業廃棄物の処分を最終処分業者が終了したら、終了の報告を中間処理業者へします。

報告を受けた中間処理業者は、排出事業者へE票を返送することで、最終処分の終了を報告します。(注:交付日から180日以内に返送される必要があります)

  •  排出事業者「A票・B2票・D票・E票」
  •  収集運搬業者「B1票・C2票」
  •  中間処理業者「C1票」

⑥マニフェストの確認と保存

排出事業者は、手元にある「A票・B2票・D票・E票」を照合して、適正に運用されていたかどうかを確認します。

また、マニフェストの交付日から5年間は、伝票を保存する義務があります。

そして、毎年6月30日までに、前年度のマニフェスト交付状況を行政に報告する必要があります。

電子マニフェスト

電子版のマニフェストは情報処理センター(運営:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター)を経由して情報のやり取りをします。

業者からの報告などは紙マニフェストと同じですが、間に情報処理センターを介してやり取りを行います。

産業廃棄物を処理するための各工程終了後、3日以内に情報を登録する必要があるので、スムーズな運用をすることができ、確認も簡単にすることができます。

電子マニフェストを使用するには排出事業者だけでなく、収集運搬業者と処理業者の3者が加入している必要があります。

電子マニフェストの流れ

パソコンで随時確認できる電子マニフェストは、データ入力のスムーズさやチェックのしやすさ、偽造防止などのメリットがあり、使用が推進されています。

①マニフェスト情報を登録

産業廃棄物を収集運搬業者に引き渡してから、3日以内にパソコンで必要情報を入力して、情報処理センターにマニフェストの登録をします。

②産業廃棄物の運搬

収集運搬業者は登録されているマニフェストに対して、運搬終了から3日以内に運搬終了報告を情報処理センターに行います。

③中間処理の終了

中間処理業者は登録されているマニフェストに対して、中間処理終了から3日以内に中間処理の終了報告を行います。

④最終処分の終了

産業廃棄物の処分を最終処分業者が終了したら、終了の報告を情報処理センターへします。

報告を受けた情報処理センターは、中間処理業者に最終処分終了の通知を行います。

中間処理業者は、排出事業者が登録したマニフェストに対して、終了報告を受けた3日以内に情報処理センターに報告を行います。

⑤排出事業者へ最終処分終了報告

情報処理センターは最終処分報告を中間処理業者から受けたら、排出事業者に最終処分終了の旨の通知を行います。

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マニフェストの法定記載事項について

紙マニフェストと電子マニフェストのいずれにおいても省令で決められた必要事項を記入します。

電子マニフェストの場合、ミスがあると発行できなかったり、処理終了確認期限を知らせるアラームなどの機能があり、便利に運用することができます。

マニフェストの法定記載事項は以下のものになります。

  •  マニフェストの交付年月日と交付番号
  •  マニフェストの交付を担当する者の氏名
  •  排出事業者の氏名または名称、住所
  •  産業廃棄物を排出した事業場の名称、住所
  •  産業廃棄物の種類(石綿含有産業廃棄物がある場合にはその旨を記入)
  •  産業廃棄物の数量
  •  産業廃棄物の荷姿
  •  産業廃棄物の最終処分をする場所の所在地
  •  運搬を受託した氏名または名称、住所
  •  運搬先の事業場の名称、住所
  •  処分を受託した者の氏名または名称、住所
  •  処分を受託した者が産業廃棄物の積み替えや保管を行う場合には、それぞれの場所の所在地
  •  石綿含有産業廃棄物がある場合にはその数量

マニフェストの交付が不要な場合は

マニフェストは排出事業者が自ら産業廃棄物を処理する場合には、マニフェストの交付は必要ありません。

その他にも以下のケースに該当する場合にも、マニフェストの交付が不要になります。

  •  産業廃棄物の処理を行っている都道府県等に、運搬や処分を委託する
  • 廃油の処理事業を行っている港湾管理者や漁港管理者に、廃油の運搬や処分を委託する
  •  再生利用できる古紙や鉄くずなどの産業廃棄物のみ収集運搬や処分を行っている者に委託する場合
  •  再生利用認定制度で認定を受けた者に、認定品目にある産業廃棄物の運搬や処分を委託する
  •  広域的処理認定制度で認定を受けた者に、認定品目にある産業廃棄物の運搬や処分を委託する
  •  再生利用に係る各都道府県知事による指定を受けた者に、指定品目の産業廃棄物の運搬や処分を委託する
  •  国に産業廃棄物の運搬や処分を委託する場合
  •  運搬用のパイプラインや直結する処理施設を使用して産業廃棄物の運搬や処分をする者に委託する場合
  •  産業廃棄物を輸出するための運搬を行う者に、相手国までの運搬を委託する
  •  海洋汚染防止法により許可を受けている廃油処理事業者に、外国船舶から発生した廃油の運搬や処分を委託する
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産業廃棄物処理のマニフェストに関する罰則

マニフェストに係る義務を果たしていない場合、措置命令や内容によっては刑事罰を受ける可能性があります。

産業廃棄物を適正に処分することは、事業者の信用に係る問題にもなりえます

マニフェストに関する罰則について、見ていきましょう。

  •  マニフェストの交付をしない、または規定事項の記載漏れや虚偽の記載をしてマニフェストを交付した場合
  •  マニフェストの写しを返送しない、または規定事項の記載漏れや虚偽の記載をしてマニフェストの写しを返送した収集運搬業者
  •  処理業者にマニフェストを回付しない収集運搬業者
  •  マニフェストの写しを交付者に返送せず、もしくは規定事項の記載漏れや虚偽の記載をしてマニフェストの写しを返送した処理業者
  •  マニフェストやその写しを保存しない
  •  受託していないもので、虚偽の記載をしてマニフェストを交付した収集運搬業者または処理業者
  •  マニフェストの交付がないにも関わらず、産業廃棄物の引き渡しを受けた収集運搬業者および処理業者
  •  収集運搬業者および処理業者が、処理や処分を完了せずに、マニフェストの返送や報告をした場合
  •  情報処理センターに虚偽の登録をした排出事業者
  •  情報処理センターに報告をしない、もしくは虚偽の報告をした収集運搬業者および処理業者
  •  マニフェストの確認義務を怠った排出事業者
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産業廃棄物処理のマニフェストを理解するコツ

マニフェストを理解するためには、「目的(なんのために)」と「方法(なにをするのか)」をまず知ることから始めます。

マニフェストは、法的な義務だけでなく、ひとつひとつの工程をしっかりと確認して業者同士でミスが無いよう把握できるという利点があります。

収集運搬業者からの運搬終了の報告や報告期限、処理業者からの処分終了の報告など、工程ごとに確認をすることで、排出事業者の責任である適正な産業廃棄物の処分をすることができます。

また、紙マニフェストを使用する場合には、法的記載事項を書いたメモやマニフェストA票に印をつけてデスクの上に貼っておくと良いでしょう。

画像として確認することができ、記載漏れを防ぐことができます。

そして、電子マニフェストの場合は、パソコンに入力する時点である程度ミスを防ぐことができます。

ただし、収集運搬業者などいつもくる担当者の名前を書けばいいというような思い込みが、虚偽の記載に繋がることもあります。

しっかりと確認をして入力するようにしたほうが安心です。

もし、流れが把握できないという場合や、どのタイミングでマニフェストのやり取りが必要なのかいまいちわからないという場合には、カードやメモを使って擬似的にやり取りを行ってみましょう。

排出事業者と収集運搬業者、処理業者のカードを置き、産業廃棄物の流れとともにメモなどでマニフェストのやり取りを行います。

活字で見るよりもわかりやすく、しっかり把握したい方におすすめの方法です。

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産業廃棄物の処理に必要なマニフェストのまとめ

ここまで産業廃棄物処理に必要なマニフェストについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

産業廃棄物の排出業者には、適正に廃棄物を処理するまでの責任があります。

産業廃棄物を処理していく中で、法令違反をしないためにも、マニフェストだけでなく法律や自治体の条例について、知識を得るように心がけましょう。

また、注意していても同僚や運搬業者、処理業者の行動によって違反になってしまうケースも見られます。

マニフェストの知識を共有することや、ミスが起こらない仕組みつくりを行っていくことが大切です。

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ABOUTこの記事をかいた人

35年で過去5,000棟の解体工事を手がけた解体専門店・市川工業の責任者であり、解体協会の理事も務めています。 建物解体工事を中心に産業廃棄物のリサイクル業務を中心に、毎年、年間300件以上の解体工事でお客様とふれあう中で「より良いサービスを提供する解体企業になる」をモットーに、業界のイメージと解体工事の品質向上に力を注いでいます。 現在は新潟県解体工事業協会の理事を務め、解体業界全体の品位向上に力を注いでいます。 資格:一級土木施工管理技士、リサイクル施設技術管理者、解体工事施工技士