アスベストの解体・撤去費用や押さえておきたい基礎知識を解説

アスベストの解体撤去は危険性が高い

アスベストが人体に悪影響を及ぼすということはすでに多くの方が知っている事実ですが、具体的にどんな物質で撤去にはどんな作業が必要なのか?

除去費用はいくらくらいかかるのか?利用できる補助金はあるのか?など詳しく知らない方も多いようです。

ここではアスベストの基礎的知識から撤去方法、アスベストが絡む法律、必要な資格の有無などを解説します。

ぜひ参考にしてください。

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アスベストとは?

「アスベスト」は天然の鉱物繊維のことで「石綿(いしわた・せきめん)」とも呼ばれています。

アスベストは非常に細い繊維にも関わらず、熱や摩擦のほか酸やアルカリなどにも強く、また丈夫で変化しにくい特性を持つことから、これまで

  • 建材(吹き付け材、保温・断熱材、スレート材など)
  • 摩擦材(自動車のブレーキライニング、ブレーキパッドなど)
  • シール断熱材(石綿紡織品、ガスケットなど)

といった様々な工業製品に使用されてきました。

このアスベストは「蛇紋石族」と「角閃石族」に大別され、それぞれ下記の6種類に分類されます。

蛇紋石族

クリソタイル(白石綿)

世界中のおよそ9割、つまりほぼ全ての石綿製品の原料とされてきたのがクリソタイルです。

角閃石族

クロシドライト(青石綿)/アモサイト(茶石綿)

この2種類は主に吹き付け石綿として使用されてきたましたが、それ以外にもクロシドライトは石綿セメント高圧管に、アモサイトは断熱保温材に使用されてきました。

アンソフィライト石綿/トレモライト石綿/アクチノライト石綿

上記の各石綿、滑石(タルク)、蛭石(バーミキュライト)の不純物として含まれるのがこれらのアスベストです。

またトレモライト石綿は一部吹き付け石綿としても使用されてきました。

これらのうち日本で長年使われてきた代表的なアスベストは

  • クリソタイル(白石綿)

  • アモサイト(茶石綿)

  • クロシドライト(青石綿)

の3種類です。

アスベストは肺がんや中皮腫を発症する“発がん性”が問題となり、現在は原則として製造・使用等が禁止されています。

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アスベストの種類は?

アスベストを使用している建材は主に「吹き付け材」「石綿含有建材」の2種類に分類されています。

吹き付け材

アスベストとセメントを一定の割合で水を加えて混合して吹き付け施工したものを吹き付け材と言います。

むき出しのフワフワしたような建材で、見かけたことがある方も多いと思います。1956年~1975年頃まで使用されてきました。

吹き付けロックウール

アスベストが原則禁止となった1975年以降はこの吹き付けロックウールに切り替わりましたが、1980年頃まではアスベストを混ぜて使用していました。

現在市販されているロックウールにはアスベストは使用されていません。

石綿含有建材

いわゆるアスベスト保温材のことで、「保温材」「耐火被覆板」などがあります。

「板状保温材」「筒状保温材」「紐状保温材」「布団状保温材」などに分けられます。

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アスベストのレベルとは?

アスベストの解体時や改修作業時の発塵性によってレベル1から3に分類されます。

作業レベル1:発塵性が著しく高い(1立方cmあたりの密度がおおむね0.5g以下)

  • 建材の種類

吹き付けアスベスト
吹き付けロックウール(乾式・半乾式・湿式)
吹き付けバーミキュライト(蛭石吹き付け)
パーライト吹き付け など

吹き付け材は作業レベル1に該当します。

ほぼむき出しの状態ですのでアスベスト濃度が非常に高く、撤去する際に粉末が周囲に大量に飛散しますので細心の注意を払って作業にあたる必要があります。

  • 主に使用されている部位

耐火構造の建築物の梁・柱や天井、エレベーターの周り、ビルやマンションなどの機械室またはボイラー室など天井・壁、立体駐車場の天井・壁、さらには学校の体育館の天井・壁などにも使われています。

  • 対 策

作業前には必ず含有量などの事前調査を行い、「工事計画届」および「建物解体等作業届」を労働基準監督署に提出すると同時に「特定粉塵排出等作業届」および「建設リサイクル法における事前届」を都道府県庁(または自治体の長)に提出する必要があります。

また、作業時は看板を設置して周知すると共に、風除室を設置し外部への飛散を完全防止しなければなりません。

撤去作業時は、湿潤化・作業場の清掃の徹底などによって飛散を防止をすることや、作業員への特別教育、保護具の装着などが義務付けられています。

作業レベル2:発塵性が高い(1立方cmあたりの密度がおおむね0.5g以下)

  • 建材の種類

石綿保温材
珪藻土保温材
珪酸カルシウム保温材
パーライト保温材
水練り保温材
耐火被覆板
珪酸カルシウム板第二種
耐火被覆塗り材
屋根用折版裏断熱材
煙突用断熱材
石綿含有ロックウール吸音天井板
石綿含有目地材 など

作業レベル2に該当するのは石綿含有保温材や耐火被覆材、断熱材です。

吹き付けと違ってむき出しではなくシート状に巻き付けられているため、発塵性や飛散性という点ではレベル1よりも下がりますが、安全という訳ではありませんので、やはり細心の注意を払って作業にあたる必要があります。

  • 主に使用されている部位

ボイラーの本体や配管および空調ダクトの保温材として、建築物の柱や梁および壁の耐火被覆材として、屋根用の折板裏断熱材や煙突用の断熱材などとして使われています。

  • 対 策

レベル1との違いは労働基準監督署への「工事計画届」の提出が必要ない点と、作業員の保護具がやや簡易的なものになる点です。

しかしそれ以外の事前の調査、各種届出および看板の設置による周知、飛散防止のための湿潤化などは義務付けられています。

作業レベル3:発塵性が比較的低い

  • 建材の種類

住宅屋根用化粧スレート
スレート波板およびボード
パーライト板
珪酸カルシウム板第一種
スラグ石膏板
石膏ボード
窯業系サイディング
押出成形セメント板
パルプセメント板
スレート・木毛セメント積層板
ビニール床タイル
ビニール床シート・クッションフロア・ソフト巾木
石綿セメント円筒
その他のボード・パネル など

作業レベル3に該当するのは上記のような「成形板」などの石綿含有建材です。

これらの建材は比較的割れにくいため慎重に行えば飛散のリスクを大幅に低減できますが、破損などには十分注意を払って作業にあたる必要があります。

  • 主に使用されている部位

建築物の屋根材や外壁材として、あるいは天井・壁・床、ユニットバスなどの内装材として使われています。

  • 対 策

レベル3においては労働基準監督署や都道府県への届出は必要ありませんが、事前調査、看板等の設置による周知、湿潤化、保護具の装着等は必要になります。

【こちらの記事もご覧ください】

  1. アスベストの危険性…専門医でも見逃す石綿被害の現状
  2. 鉄筋コンクリート構造物の解体費用を解説
  3. プレハブ倉庫の解体費用と解体方法を解説します

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アスベストの解体・撤去方法および調査方法など

アスベストを解体・撤去する際の処理方法として「封じ込め」「囲い込み」「除去」の3種類があります。

アスベスト封じ込め

そのまま除去してしまうとアスベストが大量に飛散してしまうおそれがあるため、表面に薬剤を塗って膜を作ったり繊維同士を付着させたりする作業を「封じ込め」と言います。

作業レベル1と2の場合に必要になります。

アスベスト囲い込み

天井や壁などアスベストを除去するエリアから粉塵が外部に飛散しないように板状の建材などを使って隙間なく作業空間を覆うことを「囲い込み」と言います。封じ込めと同様に作業レベル1と2の場合に必要です。

アスベスト除去

発塵性や飛散性が比較的少ない作業レベル3においては、建物を濡らすことで粉塵の飛散を防止しながら手作業による「除去」を行います。

アスベスト調査方法

建築物にアスベストが使われているかどうか判断する一つの目安として「築年数」があります。

1975年…アスベスト含有量5%を超えるものの吹き付けが禁止
1995年…アスベスト含有量1%を超えるものの吹き付けが禁止
2004年…含有量が全体の重量の1%未満のクリソタイル以外の製造・輸入・提供・譲渡・使用が禁止
2006年…含有量が全体の重量の0.1%を超えるものの製造・輸入・提供・譲渡・使用が禁止

このように徐々に規制が厳しくなってきましたが、つまり築年数が古いほど石綿含有建材が使用されている可能性が高くなるということになります。

ですが、規制がなかった(緩かった)時期に竣工されたとしても必ずしも石綿含有建材が使用されているとは限りませんので、やはり一度専門家に調査を依頼すると良いでしょう。

アスベストの調査方法の流れとしてはまず建築設計事務所、設備業者、工務店、調査会社、地方公共団体の担当部署などに問い合わせ、調査する業者を選びます。

業者が決まったら図面調査で建築物を確認しますので、建築物を施工した建設業者や工務店などに問い合わせて建築物の図面(断面図、構造図、仕上げ表など)を準備します(図面は必ずしも用意しなければならないものではありません)。

次に調査者現地調査として必要箇所の建材をサンプリングし、 分析会社に分析を依頼することになります。

分析結果が出たら調査を行った業者が「調査票」を作成します。

この調査票は将来、改修・解体する時などに必要となりますので大切に保管しましょう。

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アスベストに関する法律

アスベストには様々な法律が関連してきます。ここでは代表的なものをご紹介します。

建築基準法

吹き付けアスベスト等の建築物への使用禁止及び増改築、大規模修繕・模様替えの際に除去を義務づけています。

建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)

特定建設資材に付着している吹き付けアスベスト等の有無に関する調査を行うこと、および付着物の除去の措置を講じること等を定めています。

大気汚染防止法

建築物解体等の作業の届出、建築物解体等の作業基準(吹き付けアスベスト、アスベストを含有する保温材等の除去等)を定めています。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)

廃石綿等を含む廃棄物の特別な管理等を定めています。

労働安全衛生法(石綿障害予防規則を含む)

アスベストを重量の0.1%を超えて含有する製剤等の製造、輸入、使用等の禁止、建築物の解体等の作業における労働者へのアスベスト曝露防止措置等を定めています。

宅地建物取引業法

建物にアスベスト使用の有無の調査結果が記録されている時は、その内容を重要事項説明として建物の購入者等に対して説明することを定めています。

住宅の品質確保の促進等に関する法律

既存住宅における個別性能に係る表示事項として「アスベスト含有建材の有無等」などを定めています。

このように様々な法律が絡んできますので、該当する部分だけでも一度目を通しておくと良いでしょう。

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アスベストの解体費用

では実際にアスベストの解体をする際、処理や除去にはいくらくらいかかるのでしょうか?

少し古いデータですが、2007年1月~12月に行われた195件の施工実績から社団法人建築業協会が算出した1平米あたりの処分費用は次のようになります。

アスベスト処理面積300平米以下
2万円~8.5万円/平米

アスベスト処理面積300平米~1,000平米
1.5万円~4.5万円/平米

アスベスト処理面積1,000平米以上
1万円~3万円/平米

しかし、これらはあくまで目安となり、アスベストが使われている部位、量、部屋の形状や天井の高さ、固定機器の有無など、様々な施工条件により準備作業・仮設などの程度が大きく異なりますので、20万円程度~数百万円程度など、処理費に大きな幅が発生します。

上記を踏まえていただいた上で具体的な目安をご紹介すると

  • 屋根に含まれる場合
    2階建て(30坪)で20万円程度

 

  • 外壁材に含まれる場合
    2階建て(30坪)で30~40万円程度

 

  • 保温材・断熱材・耐火被覆材として貼られている場合
    1平米あたり1万円~6万円程度

 

  • 柱や梁や天井に吹き付けられている場合
    1平米あたり1.5万円~8.5万円程度

このようになります。

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アスベスト撤去に関する補助金制度はあるの?

国は「アスベスト含有建材の有無の調査」および「除去作業」それぞれに補助金制度を設けています。

ただし国から直接支給されるわけではなく、地方公共団体を通じて支給されます。

もし管轄の地方公共団体がアスベストの調査や除去に関する補助金制度を設けていない場合、これらの補助金を受けられないことがありますので事前の確認が必要です。

アスベスト調査における補助金制度

  • 補助事業の内容

建築物の吹き付け材について行うアスベスト含有の有無に係わる調査

  • 対象建築物

吹き付けアスベスト等が施工されている恐れのある建築物(吹き付けアスベスト、アスベスト含有吹き付けロックウール、吹き付けバーミキュライト、吹き付けパーライト等)

  • 対象とする費用内容

対象建築物の所有者等が行う、吹き付け材のアスベスト含有調査に要する費用

  • 補助額

限度額は原則として1棟につき25万円(民間事業者等が実施する場合は地方公共団体を経由して支給)

除去作業における補助金制度

  • 補助事業の内容

建築物の吹き付けアスベスト等(吹き付けアスベスト、アスベスト含有吹き付けロックウール)のアスベスト除去、または囲い込み、封じ込め

  • 対象建築物

吹き付けアスベスト等(吹き付けアスベスト、アスベスト含有吹き付けロックウール)が施工されている建築物

  • 対象とする費用内容

対象建築物の所有者等が行う吹き付けアスベスト等の除去、封じ込めまたは囲い込みに要する費用(建築物の解体・除去を行う場合はアスベスト除去費用相当分)

  • 補助率

3分の2以内(ただし地方公共団体の補助額を超えない範囲)

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アスベストを取扱う際に必要な資格は?

現在のところ、アスベスト含有建材を使用した建築物を「解体」「改修」「リフォーム」する場合、その作業にあたる事業者の資格制度などは特に設けられていませんが、国は次の4点を遵守する必要があるとしています。

  • 石綿作業主任者の選任
  • 労働者全員に石綿障害予防規則に定めるアスベストの特別教育を実施
  • 特別管理産業廃棄物管理責任者の任命(吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール、アスベスト含有保温材等の除去の場合)
  • 労働者全員に半年に1度、アスベストの特殊健康診断を実施

また、厚生労働省労働基準局は「アスベスト使用の有無の事前調査を行わせるべき者」として“建築物石綿含有建材調査者”を挙げています。

国土交通省が2013年に告示した「建築物石綿含有建材調査者講習登録規程」に基づいて、登録講習機関が実施した講習を修了した場合に与えられるのが“建築物石綿含有建材調査者”の資格です。

一般財団法人・日本環境衛生センター「建築物石綿含有建材調査者講習修了者情報」などで講習修了者を調べることができます。

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アスベストの撤去処分は必ず専門業者へ

アスベストに関する基礎知識から解体・撤去費用、法律や資格、補助金などについて解説してきました。

アスベストが含まれる粉塵を吸い込んでしまうと

  • 石綿肺
  • 肺がん
  • 中皮腫

など人体に悪影響を及ぼす疾患を招いてしまう可能性が高くなります。

現在はアスベストの新たな使用が禁止されていますが、古い建物ではまだまだ多くのアスベストが使われています。

ぜひ正しい知識を身につけて、適切な対策や対処ができるようにしておきましょう。

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ABOUTこの記事をかいた人

35年で過去5,000棟の解体工事を手がけた解体専門店・市川工業の責任者であり、解体協会の理事も務めています。 建物解体工事を中心に産業廃棄物のリサイクル業務を中心に、毎年、年間300件以上の解体工事でお客様とふれあう中で「より良いサービスを提供する解体企業になる」をモットーに、業界のイメージと解体工事の品質向上に力を注いでいます。 現在は新潟県解体工事業協会の理事を務め、解体業界全体の品位向上に力を注いでいます。 資格:一級土木施工管理技士、リサイクル施設技術管理者、解体工事施工技士