解体現場ではなぜ水を撒くのか?養生の重要性とともに解説

解体現場での散水養生の重要性とは?

解体現場で、ホースやユンボなどを使って水を撒く場面を見かけたことがあるという方も多いのではないでしょうか?

この水を撒くという作業、実は解体工事の品質にも繋がる、きちんとした「意味」があってのものなのです。

今回は解体現場ではなぜ水を撒くのか、なぜ解体工事の品質にも繋がるのかを、散水と関連が深い養生の重要性とともに解説します。

【こちらの関連記事もご覧ください】

  1. 家の解体工事で失敗しない10のチェックポイント
  2. 家の解体費用の料金相場と安く依頼する3つの方法
  3. 家の解体工事事例をご紹介
お問い合わせ

解体現場における散水や養生シートの重要性

解体現場を見たことがある方は容易に想像がつくと思いますが、大きな建物が音を立てて解体されていく時、大きな音と一緒に粉塵が舞い上がります。

こうした騒音や粉塵を軽減してくれるのが散水であり養生シートなのです。

草原にポツンと建っている建物ならまだしも、多くの建物は隣接する別の建物があり、その周辺で生活する人たちがいます。

近隣住民には事前に解体工事の説明を行うのが基本ですが、そうは言ってもどの程度の粉塵が舞うか、どの程度の騒音が発生するかなどは実際に工事を始めてみなければ分かりませんし、ゼロに抑えることは不可能です。

  • 洗濯物や車のフロントガラスがホコリだらけになってしまった
  • 窓を開けていたら大量の粉塵が舞い込んで部屋がザラザラになってしまった
  • コンクリート片が飛んできて人に当たって怪我をしてしまった
  • 騒音が大きすぎて勉強に支障が出てしまった
  • 大きな音にびっくりして赤ちゃんが泣いてしまった

など、騒音や粉塵によって周辺で生活する人たちにもさまざまな影響を与えてしまいます。

仮設養生の大切さ

仮設養生とは、養生シート、防音・防塵シートなどいくつかの呼び方がありますが、建物をグルっと囲んでいるメッシュ状のシートのことです。

現場を隠しているわけではなく、粉塵が周辺に飛散するのを防ぎ、騒音をできるだけ閉じ込めておくという役割を担います。

強風に煽られて倒壊したりすることのないようメッシュ状になっていて、足場をしっかり組んでから隙間なく張っていくのが基本です(建物の立地や構造によっては風の通り道を意図的に作ることもあります)。

そしてさらに、水撒きをすることでそもそも粉塵が舞うのを大きく軽減しているという訳です。

ただ、建物の解体工事の場合、少し水を撒いたくらいではすぐに乾いてしまったり、弾いてしまったりなどあまり意味がありません。

そのため、建物中を水浸しにしたり、ユンボなどで大量の水を撒いたりしながらの作業になることが多くなります。

さらに、それだけではありません。

解体工事ではコンクリートガラ、木くず、土、泥、金属片、プラスチック片などさまざまな廃棄物が発生し、現場前の道路にも飛び散る可能性があります。

これらをそのまま放置しておけば、通行する際に危険ですし、周辺環境を悪化させてしまいます。

そのため、1日の作業の終わりにはしっかり水を撒いて清掃するというのも、解体工事における大切な作業の一つです。

このように、解体現場における散水や養生シートは非常に重要なのです。

「それなら、雨の日なら洗濯物も出ないし粉塵も飛散しないから解体工事に良いのでは?」

と思う方もいるかもしれません。確かに一理あり、実際に雨の日に解体工事を進める業者もあります。

ですが、作業員にとっては

  • 雨合羽などを着ると蒸れるし動きにくい
  • 濡れ続けていると体温が下がってしまう
  • 工具などが濡れると作業に支障をきたす
  • 足元がすべって転落の恐れがある

などさまざまなリスクがありますので、雨の日の解体工事は慎重に行わなければならないのです。

それに毎日雨が降るとは限りませんからね…

【こちらの関連記事もご覧下さい】

関連記事の一覧はこちらから

スポンサーリンク

解体現場での散水や養生は義務なの?

「建築物解体工事共通仕様書」に記載されているルールとは?

解体現場における散水や養生は法律で定められているものではありません。

しかしながら、前述したように隣接する建物や周辺で暮らす人たちに多大な影響が及んだり、危険を招いたりすることから、ほぼすべての解体現場において行われているものです。

なお、法律で定められていませんので義務とまでは言えませんが、厚生労働省では

  • 作業現場の粉塵の許容範囲は5mg/m3以下
  • 近隣の外気中の粉塵の許容範囲は0.2mg/m3以下

に抑制できるように工夫することを求めており、必要に応じて専用の散水設備などを設置して常時散水することも指示しているほか、国土交通省でも「建築物解体工事共通仕様書」を策定し、解体工事における施工方法や散水、養生などについて細かく指示しています。

アスベスト含有の建物では特に注意が必要

また、特に気をつけたいのが、アスベスト含有建材が使用されている建物の解体です。

ご存知のようにアスベストは、その繊維がきわめて細く、吸い込んでしまうと肺繊維症(じん肺)や悪性中皮腫から肺がんを招くリスクがあるなど、人体に大きな害を与えてしまいます。

アスベスト除去作業における発塵性が高い順にレベル1、レベル2、レベル3と分けられており、特にレベル1や2では看板を掲示してアスベスト除去工事を周囲に知らせたり、作業員が特別教育を受けたうえで保護具を装着したりするなど、細かく定められています。

アスベストは非常に細い繊維であることから簡単に飛散してしまいますので、作業員はもちろん、周辺で暮らす人たちにとっても大きな脅威となります。

しかも悪性中皮腫の例では潜伏期間が平均35年前後と非常に長いことから、発症する頃には原因が特定できなくなっているケースがほとんどです。

そのため、解体作業においてアスベストが飛散する可能性がある場合は特にしっかり散水を行うか湿潤剤を噴霧するなどして十分に湿潤化させたうえで作業を行う必要があります。

もし解体工事の見積りに「養生費用と散水費用」の項目があったら、こうした理由があるということを思い出してください。

「解体費用を少しでも安くしたいから散水も養生も不要です」はNGですよ!

【解体業者専用】集客支援システム

・なぜ、地方の解体屋さんが3ヶ月先まで予約でいっぱいなのか?
・下請けではなく、お客さんから直接依頼がくるウェブの仕組みとは?
・地元の興味のあるお客さんだけに会社を知ってもらう方法
・解体屋さんを経営して40年で分かった経営安定の秘訣

>>今すぐチェックする

解体現場における散水や養生は工事の品質にも繋がる

散水や養生をしっかり行ってくれる業者の解体工事は、一般的に見て品質が高いと言われています。

解体現場で散水するということは、そのための人員を増やすことになります。

つまり人件費が発生するため、特に手抜きをしたり利益を確保したりしようとするような業者は配置させないケースも少なくありません(とはいえ人員を増やさなくても散水できる現場もありますので、配置しないからといって手抜きと判断できるわけではありません)。

そして何より、隣接する建物や周辺で生活している人たちに迷惑がかかってしまうことになりますので、着工前の近隣住民への説明を兼ねた挨拶も含め、養生シートの設置や散水をしっかり行ってくれる業者は、やはり解体工事の品質も良い業者ということが言えるでしょう。

スポンサーリンク

解体養生にも手を抜かない業者を選ぼう

今回は解体現場ではなぜ水を撒くのか?という疑問について、養生の重要性とともに解説してきました。

特に住宅街にお住まいで、現在住んでいる住宅や空き家などの解体工事をしなければならない場合、騒音や振動もそうですが、粉塵も大きな問題になりやすく、「解体工事におけるご近所からの苦情」の中でも多いと言われています。

でも、だからと言って解体工事をしないわけにもいきません。

そこで覚えておきたい“近隣住民への挨拶をしっかり行ってくれる業者、養生シートや散水をしっかり行ってくれる業者を選ぶポイント”ですが

  • 地域密着で実績がある
  • 施工事例が多い

という解体業者がひとつの目安になるでしょう。

経験豊富な解体業者なら、周囲への配慮もしっかり行ってくれるはずですので、ぜひ覚えておいてください。

【こちらの関連記事もご覧下さい】

 

【解体事業者向けサービス】営業不要で空き家解体の集客・受注システム

冊子
  • 個人のお客様で数ヶ月先まで予約を埋める方法
  • 営業しないでお客さんが集まるネットの使い方
  • 地元のお客さんを効率的に来店してもらう方法
  • 素人がホームページで集客する3つのステップ

ABOUTこの記事をかいた人

35年で過去5,000棟の解体工事を手がけた解体専門店・市川工業の責任者であり、解体協会の理事も務めています。 建物解体工事を中心に産業廃棄物のリサイクル業務を中心に、毎年、年間300件以上の解体工事でお客様とふれあう中で「より良いサービスを提供する解体企業になる」をモットーに、業界のイメージと解体工事の品質向上に力を注いでいます。 現在は新潟県解体工事業協会の理事を務め、解体業界全体の品位向上に力を注いでいます。 資格:一級土木施工管理技士、リサイクル施設技術管理者、解体工事施工技士