中古住宅のニーズが増え、市場が活発化してきました。
これから中古住宅を探そうと思っている方は、失敗しないためにはどうすればよいのかポイントを押さえておきましょう。
【あわせて読みたい。こちらの記事もご覧ください】
中古住宅市場ってどう?
まずは中古住宅の市場がどうなっているのか、簡単に見ていきましょう。
市場規模は拡大傾向
平成22年6月17日に閣議決定した「新成長戦略」(※1)のもと、2020年、つまり今年までに、中古住宅流通市場やリフォーム市場の規模の倍増を目指すとともに、質のよい住宅ストックの形成を図るなどの環境整備が進められてきました。
新型コロナウイルスの影響もありやや停滞もやむなし、といったところではありますが、屋の経済研究所によれば、成約件数ベースで2025年には4万5000戸に成長するとの予測が出ています(中古住宅・中古マンションの合計)。この通りになるとしたら、2018年と比べると実に38.5%も拡大することになります(※2)。
事業者が再販するケースが増えている
中古住宅というと、不動産業者が仲介する個人売買といったイメージが強いかもしれません。その場合、多くは現状のまま売りに出されるため、性能が低かったり設備が古かったりなど、買い手が付きにくい状態であることも少なくありません。
ところが、近年では事業者が中古住宅を買い取り、リフォームをしたり設備を入れ替えたりして再販する「買取再販」のケースが増えています。見栄えもよく高性能な中古住宅が増えているというわけです。これが、中古住宅市場が拡大している大きな要因のひとつです。
中古住宅のメリット・デメリット
では、わざわざ中古住宅を選ぶメリットはどこにあるのでしょうか?考えられるデメリットとあわせて見ていきましょう。
中古住宅のメリット
新築よりも安く手に入る
選択肢が多い
しっかり探せば良質な中古住宅が見つかる可能性が高い
売り主が個人であれば消費税は非課税
建物の状態が分かるため生活をイメージしやすい など
中古住宅にはこうしたメリットがあります。リノベーションが得意な方やDIYが趣味の方なども、いじりやすい中古住宅のほうを選ぶ傾向にあるようです。一方、デメリットはどうでしょうか?
中古住宅のデメリット
築年数が古い
耐震性や断熱性が十分でない可能性がある
見えない部分が劣化している可能性がある
住宅ローンを組めない可能性がある など
中古なので当然、築年数は古くなります。構造や築年数などによっては、住宅ローンが組めないケースがあることも知っておいたほうがよいでしょう。
また事業者による買取再販であれば別ですが、個人が売りに出している場合などは耐震性・耐熱性・省エネ製などの性能が低かったり、内部の見えない部分が老朽化していたりする可能性もあります。
中古住宅の探し方
実際に中古住宅を探すとなった場合、どういった方法があるのかを見ていきましょう。
中古住宅の4つの探し方
ポータルサイトを活用する
不動産業者に相談する
空き家バンクを活用する
ポストに入るチラシをチェクする
主にこうした方法があります。ポータルサイトは条件を絞って検索できるため、自宅にいながら手軽に希望の中古住宅を探すことができます。
しかし、ポータルサイトにすべての中古住宅が掲載されているとは限りません。時間はかかるものの、リアルタイムな情報はやはり不動産業者が強いでしょう。
また自治体などが運営している空き家バンクもありますが、株式会社LIFULLが運営する「空き家バンク」または、アットホーム株式会社が運営する「空き家・空き地バンク」などは全国の空き家バンクの情報が一元化されており便利です。そのほか、ポストに入るチラシや新聞に付いてくる広告などにも目を通しておくとよいでしょう。
中古住宅でよくある失敗とは?
中古とはいえ安い買い物ではありませんから、失敗だけは避けたいところです。中古住宅の購入でよくある失敗例を覚えておくと、探す際の参考になるかもしれません。
目に見えない部分の老朽化
買取再販ではなく、不動産業者が仲介するなどし、個人間で売買した場合に多い失敗例です。見た目は問題なさそうに見えても、実際に入居してみると目に見えない部分の設備が古かったり老朽化が進んでいたりするケースがあります。
設備は入れ替えれば済むかもしれませんが、大規模修繕が必要だったり、建物の構造上手を加えられない場所があったりするかもしれません。「瑕疵担保責任」の対象でない場合、買い手側がすべての費用を負担することになる可能性が高いため、慎重に選ぶことがなによりも重要です。
【あわせて読みたい。こちらの記事もご覧ください】
失敗しない中古住宅の見つけ方
それでは、失敗しないための中古住宅の見つけ方を、ポイントを絞って解説します。なお日当たりや間取り、目に見える設備の状態、周辺環境などは当然チェックすると思いますので、ここではそれ以外の部分について解説します。
1.資料を確認する
設計図面(立面図・伏せ図含む)
補修履歴(保守点検の記録等も)
施工中の写真などの記録
この3点は、必ず目を通しておくべき資料です。施工中の記録は残っていない可能性もありますが、あるようでしたら必ずチェックしておきましょう。もちろん、専門的なことは分からないことも多いはずですので、その場合は専門家のちからを借りてください。
2.インスペクション(建物調査)と耐震診断の実施
専門家に依頼すると数万〜20万円など意外と大きな費用がかかります。
ですが、その先にあるのは何百万〜何千万円という中古物件と、この先何十年という家族の人生です。出し惜しみはせず、信頼できる専門家に調査を依頼しましょう。
3.建物をチェックする
建物の周りを一周してみて、基礎と地面との間に「すき間」があったら地盤沈下の可能性を疑いましょう。基礎や壁などの「ヒビ割れ」がないかも、あわせてチェックしておきましょう。
また「ゆがみ」がある中古住宅もおすすめできません。手抜きとまではいかないまでも、しっかり建築されていない可能性があるためです。ドアや建具の建て付けなど、くまなくチェックしておくことが大切です。
そのほか床下などにある「点検口」も忘れずに見ておきましょう。本来、点検口は乾燥しているのが普通です。水が溜まっていたり湿ったりしていた場合、腐食している=シロアリが発生している可能性があります。床下は暗いので、懐中電灯などを持参するとよいでしょう。
4.雨の日に見学するのもおすすめ
晴れの日に気づかないのが「雨漏り」です。明らかに天井にシミがあるという場合は別ですが、軽微な雨漏りだった場合は雨漏りに気づきにくいことがあります。
壁や天井などに不自然なシミ、壁紙の浮きなどがないか、必ず確認しておきましょう。
5.土地の調査も忘れずに
建築基準法により、再建築不可という土地もあります。もしも将来的に中古住宅を建て替えたい、増改築したいとなった場合、今よりも小さな家しか建てられない、あるいはまったく建て替えができないおそれがあります。
隣家との境界線や、抵当権の有無なども含め、土地もしっかり調査しておきましょう。
6.リフォーム前提で中古住宅を探すときは?
リフォーム前提で中古住宅を探す場合、どういったポイントに目を向ければよいのでしょうか?
可変性・自由度の高さが重要
思い描いているリフォームを実現できる中古住宅なのかどうかが、何よりも重要です。
一例ですが、水まわりの「位置」を変えたいと思っても、段差を作らなければならないといった場合、リフォームの内容や範囲が限られてきます。
信頼できる業者選びを
リフォーム前提である場合は、必ず事前にイメージを伝え、実現可能かどうかを一緒に考えてくれる信頼できる業者を選ぶことがポイントになります。
また、こちら側の提案をすべて受け入れるだけではなく「こうしたリフォームもある」など提案してくれる担当者であれば、より生産的です。失敗しない中古住宅を見つけるためには、パートナーも大切になってくると思っておきましょう。
中古住宅を購入するまでの流れ
大まかな流れを覚えておきましょう。
中古物件引き渡しまでの流れ
1.物件探し
2.見学
3.申し込み
4.契約
5.引き渡し
買いたい中古住宅が見つかったら、不動産業者に申し込みをします。このとき、売り手と金額の交渉や引き渡し時期の相談を行います。交渉がまとまれば契約となります。
契約手続きの直後に、住宅ローンの申し込みをしましょう。ただしこのタイミングで金融機関を探し始めたのでは効率的ではありません。
事前にいくつかの金融機関に相談に行き、審査にかかる期間や融資の条件、金利や実際にローンがおりるまでの期間など細かく確認しておくと安心です。すべての手続が完了し、支払いも済んだらいよいよ引き渡しです。
なお、お伝えしたように築年数や床面積などによっては住宅ローンの対象外となる場合があります。具体的には床面積50平米未満、木造で築年数20年以上といったケースです。国税庁のHPにも掲載されていますので、忘れずに確認しておきましょう(※3)。
中古住宅を探すにあたって用意すべき費用
最後に、中古住宅を探すにあたって用意しておくべき費用をまとめました。中古住宅の購入価格はもちろんですが、それ以外にもさまざまな費用を考えておく必要があります。
中古住宅の購入にかかる主な費用
住宅の購入費用
不動産取得税金
仲介手数料
登記費用
修繕・リフォーム費用 など
この中でも大きな金額となりうるのが仲介手数料です。不動産業者が手にすることのできる手数料の上限は「宅地建物取引業法」で上限が決められているのですが、ほぼその上限額を支払うことになると考えておきましょう。
たとえば1,200万円の中古住宅だった場合【1,200万円×3%+6万円】で42万円になります。
また、修繕やリフォームを前提としていなくても「実際に住んでみたら修繕が必要だった」「リフォームしたほうが利便性が高く快適だ」などと感じるかもしれません。できれば用意しておくと安心です。
【あわせて読みたい。こちらの記事もご覧ください】
(参考)
※1:国土交通省「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」
https://www.mlit.go.jp/common/000135252.pdf
※2:株式会社矢野経済研究所「中古住宅買取再販市場に関する調査を実施(2019年)」
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2321
※3:国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/index2.htm