空き家は固定資産税が上がるってホント?
増え続ける空き家が深刻な社会問題化しています。
「残すべきか?解体すべきか?」
その判断基準は非常に難しいところですが「固定資産税が跳ね上がる」という情報を見聞きしたことがある方はそちらも気になることと思います。
今回は固定資産税の話を中心に、空き家を残すべきか解体すべきかについて考えてみたいと思います。
【こちらの関連記事もご覧ください】
空き家の固定資産税とは?
建物や土地などに固定資産税はかかるもので、空き家に限ったものではありませんが、今回は空き家の場合はどうなる施策があるのか?を中心に解説していきたいと思います。
固定資産とは
「土地」と「家屋」、そしてそれ以外の事業用に供することができる資産である「償却資産」の総称で、その固定資産にかかる税金を固定資産税といいます。
毎年1月1日が賦課期日となり、その時点で上記いずれかの固定資産を所有している人は、「当該固定資産の評価額を元に算出した税額」を「固定資産が所在する市区町村」に納めることになります。
固定資産税の税率は原則として1.4%と定められています。しかし、固定資産が所在する市区町村が財政困難な地域だった場合などは税率が引き上げられることもあるようです。
固定資産税の対象となるもの
土地
田・畑・宅地・塩田・鉱泉地・池沼・山林・牧場・原野・その他の雑種地
家屋
住宅・店舗・工場・倉庫・その他の建物
償却資産
舗装済みの駐車場・屋外プール・建設用重機・印刷機器・ボート・漁船・大型特殊車両・事務机・パソコンなど土地や家屋以外の、事業の用に供することができる資産
*自動車・オートバイなどはそれぞれ自動車税や軽自動車税が課せられていますので、償却資産には含まれません。
また、特許権・ソフトウェアなどの無形固定資産についても同様に償却資産には含まれません。
固定資産税評価額とは?
固定資産税評価額とは、総務大臣が定めた「固定資産評価基準」に基づいて評価された額を都道府県知事または市区町村長が決定した金額で「固定資産課税台帳」に登録されているものです。
ただし土地の価格や家屋の時価は変動することが考えられますので、3年に1度の「基準年度」において「土地・家屋の評価替え」という、いわゆる再評価が行われて新しい評価額が決定し、以降3年間その価格が据え置かれます。
なお、新築や増改築を行った家屋、あるいは分合筆等があった土地などは基準年度に決定した価格が適切でない場合があります。その際は新たに評価を行い、新しい価格を決定することになります。
固定資産税評価額を知る方法
固定資産税評価額を調べる方法は主に3通りあります。
1.固定資産税課税明細書
課税明細書とは固定資産税納税通知書に添付されている書面で、この課税明細書の「価格」欄に記載されている金額が「固定資産税評価額」ということになります。
2.固定資産課税台帳
固定資産課税台帳には「当該固定資産税の所有者」「所在」「価格」が登録されています。役所(あるいは東京都であれば固定資産税が所在する国ある都税事務所)などで閲覧できます。
3.固定資産税評価証明書
固定資産税評価証明書とは、固定資産課税台帳に登録されている情報を証明するための書類で、当該固定資産が所在する役所に申請書に本人確認書類、手数料などを添えて転出することで取り寄せることができます。
土地固定資産税と家屋固定資産税の違いは?
納税義務者の違い
土地の固定資産税の納税義務者は「土地登記簿または土地補充課税台帳に所有者として登記あるいは登録されている人」となり、家屋の固定資産税の納税義務者は「家屋登記簿または家屋補充課税台帳に所有者として登記あるいは登録されている人」となります。
算出方法の違い
土地の固定資産税評価額の算出方法は
用途地区の区分
↓
状況類似地区の区分
↓
主要な街路の選定
↓
標準宅地の選定
↓
標準宅地の適正な時価の評定
↓
主要な街路への路線価の付設
↓
その他の街路への路線価の付設
↓
画地計算法
↓
時点修正
↓
各土地の評価額の算出
という、私たちからするとかなり複雑に感じられる手順で行われます。
宅地や田、畑など項目ごとに算出されるのですが、特に宅地においては次のような軽減措置が設けられています。
住宅1戸における200平米以下の部分を「小規模住宅用地」とし、固定資産税が6分の1に軽減されるというものです。
一方、200平米を超える部分を「一般住宅用地」とし、固定資産税が3分の1に軽減されるというものです。
まとめるとこのようになります。
空き地(更地・建物がない)
課税標準額×1.4%
小規模住宅用地
住宅1戸につき200平米まで:課税標準額×6分の1×1.4%
一般住宅用地
住宅1戸につき200平米を超えた部分:課税標準額×3分の1×1.4%
また、家屋の固定資産税の算出方法は
【単位当たり再建築費評点×経年減点補正率×床面積×評点一点当たりの価額】
によって算出されます。
“どのような資材をどれだけ使用しているか”を「再建築費評点数」、“構造及び用途等の区分に応じて設定されている建築後の経過年数に応じる減価率”を「経年減点補正率」、“地域に応じた物価水準と工事原価に含まれていない設計管理費、一般管理費等負担額の費用”を「評点一点当たりの価額」とし、上記の算式にあるように「床面積」および、設計管理費等を考慮した「評価一点当たりの価格」を乗じて算出するというものです。
なお、家屋は土地と違って年々劣化していきますので、評価額についても年月とともに下がっていく傾向にあるようです。
また、2016年3月までに建てられた3階建て以上の「耐火構造または準耐火構造」の建物で「床面積が50平米~280平米」である場合、「120平米までの部分」について基準年度から3年間(3階建て以上の耐火・準耐火構造の建物については5年間)、固定資産税が2分の1に軽減されます。
このほか、固定資産税についてより詳しい情報はお住い(または固定資産が所在する地域)の管轄の地方公共団体のサイトをご確認ください。
【こちらの関連記事もご覧ください】
関連記事の一覧はこちらから
空き家の固定資産税とは?
昨今日本でも大きな社会問題と化している「空き家」についても、土地の上に建物が建っている訳ですから所有者に対して固定資産税が課されます。
空き家であっても一般家屋と同様に
小規模住宅用地(1戸につき200平米以下の部分)
「課税標準額×6分の1×1.4%」
一般住宅用地(1戸につき200平米を超えた部分)
「課税標準額×3分の1×1.4%」
という固定資産税の算出方法は変わりません。
では、ネット上などでも騒がれている「空き家は固定資産税が6倍になる」とはいったいどういうことなのでしょうか?
それには、平成27年5月26日より完全施行された
空家等対策の推進に関する特別措置法(空家対策特別措置法/空家法)
が大きく関わっているのです。
空家対策特別措置法とは?
空き家の中でも誰も住まなくなって長年経過した空き家や老朽化している空き家は、放置してしまうことで近隣に様々な影響を与えます。
1.倒壊
空き家が老朽化して全体が傾いたり、主要構造が腐食したりしてしまうことで自然倒壊、あるいは地震などによる倒壊が懸念されます。
2.飛散
屋根や外壁が老朽化し、台風などの強風時に近隣に飛散してしまうおそれがあります。
3.衛生
ゴミの放置や不法投棄、浄化槽の破損、汚水の流出などによって悪臭を発し衛生上著しく悪影響を及ぼす可能性があります。
4.景観
伸び切った雑草や庭木、割れた窓ガラスや屋根瓦、ポストから溢れた郵便物やチラシなどその地域の景観を著しく損ねてしまう可能性があります。
5.害虫・害獣
ゴミ等の放置により害虫が発生したり、野良猫・野良犬などが棲みついたりして近隣に危険を及ぼすほか、糞尿・死骸などが放置されると衛生上も悪影響を及ぼします。
6.犯罪
誰も住んでいないまま放置されていることが知れると放火、違法薬物の取引、未成年の喫煙、性犯罪など様々な犯罪に利用されてしまう可能性があります。
7.通行
庭木の枝が道路まで伸びていたり、門扉が道路側に開いていたり(あるいは倒れていたり)した場合など、歩行者や車両の通行を妨げてしまう可能性があります。
このように、空き家、中でも特に老朽化した空き家の放置は近隣に著しく悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。
そんな放置空き家は年々増加傾向にあり、総務省統計局が行った平成25年住宅・土地統計調査によれば、空き家率は総住宅数の13.5%にも達しているということです。
さらに増加は進み、株式会社野村総合研究所の予測では2033年には今の倍以上の30.2%に達するであろうとしています。
3戸~4戸に1戸が空き家となり、日本は至るところが「ゴースト化」してしまうおそれがあるのです。
これらの状況を鑑み、国が打ち出したのが「空家対策特別措置法」です。
同法の要点は
-
保安面において著しく危険となるおそれがある空き家
-
衛生面において著しく有害となるおそれがある空き家
-
適切な管理が行われていないため著しく景観を損なっている空き家
について、行政が強制的に対処できるというものです。
ただし、いきなり強制対処するという訳ではなくまずは改善への「助言または指導」を行い、一定期間の猶予をもってしても改善が見られない場合は「改善勧告」となります。
さらに放置すれば「改善命令」、それでも従わない場合はついに「強制対処」となり、もし解体等の強制撤去となればその費用は当然所有者に請求が行くことになります。
この流れの中で「改善勧告」に至った時点で、その空き家は「特定空き家」とみなされ固定資産税の軽減措置対象から除外されることになります。
つまり「小規模住宅用地」や「一般住宅用地」の軽減措置が解除されますので「固定資産税が最大で6倍になる可能性がある」という訳です(正確には6倍といよりも軽減措置が解除され元の税率に戻るということです)。
空き家を解体した場合、更地の固定資産税はどうなる?
空き家を解体すると更地になります。その場合は自動的に「小規模住宅用地」および「一般住宅用地」の軽減措置は解除されることになりますので
「土地の課税標準額×1.4%」
が課税されることになります。
空き家を減らすための空家対策特別措置法だったはずが、解体することで固定資産税が最大6倍になってしまうことから解体できず、結果として増え続けてしまうことになる要因の一部となっているのが現状です。
空き家は残すべき?解体すべき?
空き家を抱えている方にとって最も重要な問題と言えるのがこの「空き家を残すべきか、解体すべきか」ということではないでしょうか。
解体工事には多額の費用が発生しますのでおいそれとはいかない方もいるでしょうし、故人や実家への想いなどもあって解体に踏み切れない方もいるでしょう。
あるいは「固定資産税が最大6倍」という言葉が引っかかり、それなら「改善勧告」される直前まで何とか残しておこうと考えている方もいるかもしれません。
しかし、空き家はそのまま放置してしまうと前述のように近隣に様々な悪影響をおよぼす可能性があり、近隣住民とのトラブルの元にもなってしまう可能性があります。
理想はやはり「今後住む予定がない」または「いつか住もうと思っているが時期は未定」などという空き家に関しては解体することが望ましいでしょう。
それでも「そう簡単には改善できない」という方には、一般社団法人・移住交流推進機構が運営する空き家バンクのようなサービスもあります。
各自治体が独自に提供している空き家バンクに登録することで上記サイトにも掲載され、全国の空き家を探している方に向けて情報発信ができるようになります。
自分が不要と思っていた空き家でも誰かにとっては必要な空き家かもしれません。
もし入居希望者が見つかれば賃貸として貸し出すこともできますし、あるいは購入希望者が見つかれば売却することもできます。
あるいは、自治体に提供して地域のコミュニティスペースとして活用している空き家もありますし、NPO法人に貸し出している空き家などもあります。
「空き家を残すべきか解体すべきか」この答えはそれぞれの生活状況や人生プランなどに影響してきますので一概には言えませんが、解体・売却・提供などその空き家に最適な方法を探し出すことが大切なのではないでしょうか。
空き家は早めの対策が重要
空き家と固定資産税について解説してきました。
少し難しい部分もありましたが、空き家を抱えている方には重要な問題ですので、しっかり把握しておきたいところです。
空き家は人が居住している住宅と違い老朽化が早く、あっという間に傷んでしまいます。
そうなれば売却するにもリフォームが必要になったり、買い手が見つかりにくくなったり、挙句には特定空き家に指定されてしまう可能性が出てくるなど、放置しておいても決して良いことはありません。
「固定資産税が6倍になってしまうから」や「何となく」などで放置してしまっている方は、今のうちからできるだけ早く何らかの対策を練り、動き出すことが重要になってきます。
【こちらの記事もご覧ください】