空き家は危険!
大きな社会問題と化している『空き家』。
皆さんも「空き家問題」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
今回はそこに潜む様々な危険、実際に起こってしまった事件、国が行っている対策などについて解説をいたします。
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放置問題が深刻化している
空き家の数は年々増加しており、2013年には住宅総数の13.5%、数にしておよそ820万戸が空き家という最新のデータが発表されています。
空き家に潜む危険性や国が行っている対策などを解説しますが、確実に言えることは【空き家の放置は決してプラスには働かない】ということです。
*本記事における「空き家」は、別荘などの二次的住宅、賃貸や売買のための住宅は除き、【所有者が不明のまま放置されている空き家】【所有者は明確だが何年もの間誰も住んでおらず管理もされていない空き家】などといたします。
家主不在の空き家、何が危険なのか!?
所有者が不在で適切に管理されていない空き家にはどのような危険があるのか、いくつか挙げてみたいと思います。
建物の老朽化による問題
人が住まなくなった家は通気も通水もなされませんので、腐敗や排水管の破損など急速に老朽化が進んでしまいます。
外壁が剥がれ落ちる、屋根が崩れるといった見た目もそうですが、屋内では雨漏り、シロアリによる侵食被害などによって構造自体が脆くなっていますので、地震や大雪などでの倒壊の恐れがあります。
当然、倒壊すれば隣家や面した道路などにも危険が及ぶ可能性があります。
また台風などの強風によってトタンや瓦が吹き飛んでしまう恐れもあります。人的被害のみならず、緊急車両の通行を妨げてしまうといった副次的被害も懸念されています。
景観や衛生の問題
老朽化してボロボロになった建物以外にも、空き家となってしまったことで壁に落書きをされたり、雑草が生い茂っていたり、庭木の枝が道路まで伸びて来てしまったり、それらにツタが絡みついてしまったりなど、周囲の景観を破壊してしまいます。
これでは地域のイメージダウンとなってしまうだけでなく、害虫の大量発生の元となってしまいます。
また、住み着いたノラ猫やノラ犬、ネズミなどの糞尿や死骸の腐敗臭、ゴミの不法投棄などによって衛生面においても著しい害を周辺に及ぼしてしまいます。
防犯上の問題
悪いことを考えている者にとって、空き家は絶好の場所となってしまいます。
人目につかないのをいいことに違法薬物の取引や暴力の現場、未成年者の喫煙や飲酒の現場などに悪用されてしまう可能性が高くなります。
またそういった者たちが火の不始末をしたことで火災が発生してしまったり、放火魔などの餌食にもなりやすくなってしまいます。
当然、人がいませんので敷地内で何かが起こっても発見が大幅に遅れる可能性が高く、それはすなわち被害の拡大を意味します。
このように、家主不在で適切に管理されていない空き家に潜んでいる危険は、所有者のみならず近隣住民へも大きな迷惑や被害を与えてしまいかねません。
一刻も早く、何らかの対策が必要です。
実際に火災が起きてしまった!
ついこの前のことですが、2017年2月26日、埼玉県志木市にある空き家から火の手が上がって燃え広がり、最終的には全焼5棟(空き家4棟と住宅1棟)を含む7棟が焼けてしまうという大きな被害を与えてしまいました。
幸いなことにけが人はいませんでしたが、とはいえ大切な住宅を失ってしまった方々はこれから精神面、経済面ともに大きな不安や負担を強いられることとなります。
原因は分かっていないようですが、他にも4件の不審火が相次いでいたことから、警察は連続放火事件の可能性があるとみて捜査をしているとのことです。
また、近くの住民の方は「10年以上誰も住んでいないのに電気が通っている家があり、危険を感じていた」と話していました(その家が今回火災が発生した空き家であるかどうかは不明です)。
空き家に電気が通っている…これは非常に危険なことです。
何かしらの理由があるのかも知れませんが、電力会社は明らかに電気が使われていないと分かるはずですので、自治体と協力して調査を行い何らかの措置を講じることはできるはずです。
今すぐにでも、全国一斉に空き家に電気やガスが通っていないかなどを確認すべきではないでしょうか。
なお、今回火元となった空き家がどのような理由で空き家になってしまったのかは分かりませんが、まさにこのような危険を避けるべく国も自治体も取り組んでいたところですので、そのショックは相当に大きなものとなりました。
対策の一つ『空き家等対策特別措置法』は期待できる?
2015年5月26日、倒壊などの危険性がある空き家を強制的に撤去できるという旨の対策を盛り込んだ『空き家棟対策特別措置法(空き家法)』が完全施行されました。
各自治体が「著しく危険である」「著しく衛生上有害である」と判断された空き家に対して「改善への助言と指導」を行い、改善が見られなければ「勧告」に移ります。
この勧告の対象となった時点で固定資産税の優遇措置が除外され、最大で固定資産税が6倍、都市計画税が3倍になります。
勧告を行っても改善が見られない場合、今度は猶予期間をつけての「改善命令」となります。
猶予期間中は意見陳述をする機会が与えられますので、もし改善できない何かしらの理由があればこの機会に陳述できます。
猶予期間内に改善を完了できなければ、いよいよ強制撤去となります(撤去までは必要ないと判断された場合、修繕などを行います)。
この場合の費用はすべて所有者が負担します。
万が一負担できない場合は自治体が負担して強制撤去を行い、所有者に請求するという流れになります。
実際に空き家法が適用された例
2016年3月3日東京都葛飾区にある木造の空き家が強制撤去となりました。
10年以上も前から周辺住民から苦情が寄せられており、所有者に対して対策を求めて来ましたが応じず、同法が完全施行となったタイミングで「指導」「勧告」「命令」の手順を経て、強制撤去に至りました。
なお解体費用と廃棄物処理費用の180万円は葛飾区が負担し、所有者に請求しています。
群馬県前橋市の空き家では、以前から所有者に対する改善を指導してきましたが「資金不足」を理由に拒まれ続けて来ました。
しかし同法の完全施行をもって命令を出し、いよいよ強制撤去が現実になろうとしていた時、所有者がようやく自分で撤去を行ったとのことです。
前橋市の例はまだ自主的に行ったため良い方だと思いますが、実際には自治体が費用を負担するケースがほとんどだと考えられます。
資金面の問題で解体に踏み切れない所有者も少なくありませんので、もし自治体の負担で解体・撤去してもその費用を回収することが難しいという問題を抱えています。
同法では、強制撤去を行った際に発生した費用を自治体が負担し、それを所有者から回収できる見込みがない場合、国が何らかの支援をするといった内容は盛り込まれていません。
空き家問題を解決すべく施行されたはずの法律なのに強制撤去をすればするほど自治体への負担が大きくなるため安易に強制撤去に移れない、といった矛盾点が問題です。
まずは自治体へ相談を!
所有者が不明、あるいは明確であるが改善の命令に従わないといった場合は空き家法を適用しなければなりませんが、たとえば所有者が明確で、どうしても資金難で解体や撤去、あるいは必要な修繕ができない場合、自治体は何かしらの支援が可能かどうか相談に乗ることができます。
また、倒壊の恐れなどはないが借り手も買い手も見つからず困っているといった場合は空き家バンクへの登録、地域住民のコミュニティスペースなどに活用するといった対策を講じることができます。
空き家を抱えている方、近隣に空き家があって困っているという方は、できるだけ早く自治体に相談をするようにしましょう。
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