解体工事現場でよく見かける養生ですが、どのような種類があり、どのような性能があるのでしょうか。
養生を設置する基準や設置費用の目安、養生を設置しなかった場合に考えられることなども含めて解説していきます。
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養生の種類別設置費用
養生にはさまざまな種類がありますが、たとえば足場シート養生ひとつ取ってみても設置面積や日数、シートの材質などによって費用が大きく変わってきます。
そのため下記は一例ですが、種類別の設置費用をご紹介します。
足場シート養生
1平米あたり1,500円~2,000円程度
仮囲い養生
1平米あたり2,000円~2,500円程度
鉄板養生
1枚あたり40円~500円程度(ただし最低レンタル日数などの縛りがあるケースが多いようです)
水まき養生
1平米あたり300円~400円程度(高圧散水機使用時)
防音シート養生
1枚あたり2,000円~5,000円程度
一般的には上記のような費用相場になるようです。
設置面積、サイズ、材質、その他さまざまな条件で変わってきますので、まずは見積もりを依頼するようにしましょう。
解体工事の養生はどんな時に必要?
まずはそもそも解体工事において、どのような時に養生が必要となるのか、その基準について基本的な部分を見ていきましょう。
養生を設置するのには次のような目的や理由があります。
解体工事中に発生する粉塵の飛散を防ぐ
解体工事中は建物内に残っているゴミやホコリ、建材を壊した際の細かな破片やガラス片などが広範囲に飛散します。
もし養生を設置していなければ、これらが隣家に飛散し洗濯物を汚してしまう、車を傷つけてしまう、部屋の中をホコリだらけにしてしまう、現場前を通りかかった人が吸い込んで健康被害を招いてしまうといったリスクが考えられます。
たとえ作業中に粉塵が飛散しなくとも、夜間風が吹いて舞い上がる可能性も大いに考えられます。
こうした近隣への飛散を最小限に食いとどめるために防塵シートなどを設置するのが一般的です。
解体工事中に発生する騒音を軽減させる
特に重機を使用して解体する場合、大きな音が響き渡ります。実は解体工事における苦情の中でも最も多いのがこうした“騒音”に対する苦情と言われています。
重機、建材の取り壊し、壁や柱または屋根や2階部分が崩れる音などは、どんなに注意を払っていても防ぐことはできません。
もし養生を設置していなければ、突然の大きな音にびっくりしてしまう、寝ていた赤ちゃんが起きてしまう、受験勉強に集中できない、仕事にならないなど近隣住民に迷惑をかけてしまいかねません。
そのため、防音シートなどを設置することで、こうした騒音を最小限に抑えるのが一般的です。
工具や資材の落下、作業員の転落、建物の倒壊などを防ぐ
足場を組んで解体工事を行う場合、安全帯を使用して転落を防ぎながら作業をすることが一般的ですが、移動の際に安全帯を外した時に誤って転落してしまうリスクがあります。
たとえ2階程度であっても打ち所が悪ければ命に関わる大事故に繋がりかねません。
また、工具や資材を誤って落としてしまうケースも想定できます。
下にいる作業員やたまたま通りかかった人に工具や資材が直撃してしまえば、最悪の場合命に関わる大事故になりかねません。
あるいは、解体している建物が何らかの原因で倒壊してしまう可能性もあります。
内側に倒れ込んでくれる分には外部への被害が最小限で済みますが、万が一外側に倒れ込んだ場合、養生がなければ道路を歩いている人に危険が及んだり、倒れたことで発生した粉塵や破片などが飛び散ったりして、近隣に危険を及ぼしかねません。
養生を設置しておくことは、こうしたリスクを低減させる目的もあるのです。
このように、養生を設置することは解体工事における近隣トラブルを防ぐと同時に、安全に解体工事を進めていくことに繋がっているのです。
ところで、稀に養生なしで解体工事を行っているケースがあります。
「養生の設置は義務なのでは?」という疑問が浮かぶと思いますが、YESかNOかで言えばNO、つまり解体業者には解体工事を行う際に養生を設置する義務はありません。
たとえば
- 現場周辺に何も建物がなく住民もいないため養生の必要性がない
- 隣家との距離が極端に離れているため騒音や粉塵による被害の可能性が低い
- 散水するなどして粉塵の飛散を防ぐための対策を講じている
このようなケースでは、養生を設置せずに解体工事を行う場合もあります。
ただし、厚生労働省は
「作業現場の粉塵の許容範囲は5mg/m3以下」
「近隣の外気中の粉塵の許容範囲は0.2mg/m3以下」
上記の範囲内に抑えるよう工夫して作業することを求めているほか、国土交通省は「建築物解体工事共通仕様書」(平成24年版/pdfファイル)において
騒音・粉じん等の対策
(a)騒音・粉じん等の対策は、次の(1)から(3)により、適用は特記による。特記がなければ、(1)による。なお、シート類は防炎処理されたものとする。
(1)防音パネルは、隙間なく取り付ける。
(2)防音シートは、ジョイントの重ねと結束を十分に施す。
(3)養生シート等は、隙間なく取り付ける。
(b)防音パネル等を取り付ける足場等の設置範囲、高さ等は、特記による。足場等は、防音パネル等の取付けに適した材料及び構造のものとし、適切な保守管理を行う。
(c)ブレーカー、穿孔機、破砕機、圧砕機等による粉じん発生部に常時散水を行う。
(d)3.1.2[用語の定義](3)による「転倒解体」を行う場合は、転倒解体箇所及びその周辺部に十分な散水を行う。
このように、騒音および粉塵に対して共通の仕様書を策定し通知しています。
いずれも法的な義務はありませんが、解体業者はこうした規定に則って養生を設置しています。
近隣に民家があり人の往来がある道路に面している現場での解体工事の場合は、まず間違いなく養生を設置するのが基本と言って良いでしょう。
仮設養生の種類と性能
続いて、解体工事現場で用いられる代表的な仮設養生の種類やその性能を見ていきましょう。
①足場シート養生
足場を組んだ後に建物全体を覆うように被せるシートです。
おそらく養生シートと言って真っ先に思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか?
足場シート養生の役割は粉塵の飛散を防いだり、誤って落下した工具や資材などを防いだりする役割があります。
何年かに一度ニュースにもなりますが、強風時に足場シート養生をそのままにしてあったため、風に煽られて解体工事現場の足場ごと崩れ道路に倒れこんでしまったという事故も実際に起こっています。
強風が予想される場合は風の逃げ道を作っておく、あるいはメッシュ加工されていて風通しが良い足場シート養生を設置するなどの工夫もされています。
②仮囲い養生
仮囲い養生はフェンスタイプ、ネットタイプ、ゲートタイプ、あるいは単管(鉄パイプ)を組んで防炎シートやメッシュシートで作ったタイプなどさまざまです。
一般家屋の解体ではあまり見かけることがありませんが、ビルやマンションなどRC造(鉄筋コンクリート造)の解体でかつ敷地が広い場合などに設置されます。
建物全体を覆っている訳ではないため、粉塵の飛散防止あるいは防音に対して大きな効果はありませんが、仮囲い養生を設置して工事範囲を明確にすることで、近隣住民や子供などが不用意に侵入しケガなど事故に遭うリスクを回避することに貢献してくれます。
③鉄板養生
鉄板養生は敷き鉄板とも呼ばれている養生で、大型の鉄板を敷くことで工事現場の資材搬入路を確保したり、地盤が弱い現場の足場を確保したり、重機解体を行う際の重機の足場を確保したりする目的で使用されます。
④水まき養生
水まき養生とは、解体作業を行う際に散水することです。
散水することによって粉塵の発生および飛散を最小限に抑える効果が得られます。特にホコリが多い建物や木材、コンクリート片などを取り壊す際に有効です。
また、特に注意が必要なアスベスト含有建材におけるアスベスト除去作業では、アスベストが飛散しないよう細心の注意を払って作業を行う必要があります。
その際、建材を十分に湿らせるために水まき養生を行うことがほとんどです。
⑤防音シート養生
シルバーやブラックで「防音」「遮音」などの文字が書かれているシートを見かけたことがあると思いますが、それが防音シート養生です。
高い防音性能を最優先して作られていますので足場シート養生のように穴があいていないことがほとんどです。
そのため粉塵の飛散防止にも効果があります。
しかしながら、建物全体を覆うように防音シートを被せてしまうと、風の通り道がなくなり、煽られて足場が倒壊してしまう恐れや、現場内の酸素不足を招くリスクもありますので、多くの場合、騒音が生じそうな場所付近にかけられています。
解体工事に養生を設置しないとどうなる?
今回は解体工事における仮設養生の種類や設置する意味などを解説してきました。
もし解体工事に養生を設置しなかった場合、どんなことが考えられるでしょうか?
養生を設置しなかった場合のメリットといえば、その分の解体工事費用を抑えることができる点です。
しかしながら、冒頭でも触れましたが養生がない場合、騒音や粉塵問題などで近隣住民とのトラブルに発展する可能性が非常に大きくなります。
また作業員の転落、工具や資材の落下、あるいは建物自体の倒壊などによって重大な事故を招いてしまう可能性も大きくなります。
養生を設置しなかったことが原因で事故や災害が発生してしまった場合、責任の所在は解体業者のみならず、場合によっては施主にも生じる可能性があります。
法律によって義務化されている訳ではありませんが、解体工事を行う際は近隣への配慮という意味でも、安全に作業を進めるという意味でも、養生の設置は行うべきだと考えた方が良いでしょう。
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