魅力度ランキング5年連続ワーストという不名誉な記録を作ってしまった茨城県ですが、産業、食、観光、自然、暮らしやすさなど、実はさまざまな魅力が隠れているエリアです。
今回はその茨城県の空き家事情と問題、そして茨城県や各市町村が実施している空き家対策、補助金・助成金制度などをご紹介します。
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茨城県の各市町村の空き家補助金・助成金制度をご紹介
続いて、茨城県の各市町村が実施している、空き家に関する補助金・助成金制度をご紹介していきます。
※ここでご紹介しているのは平成30年6月時点の情報です。最新情報については事前に管轄の市町村に確認してください。
各市町村の補助金・助成金制度をご紹介
平成29年5月31日時点、茨城県内で空き家関連の補助金・助成金制度を設けているのは、7市町村しかありません。
茨城県には44の市町村がありますので、およそ6分の1程度に留まっています。そのうちのいくつかをご紹介します。
常陸太田市では、空き家の利活用を促進する目的でリフォームする際、その費用の一部を支援してくれます。
空き家の維持や機能向上を目的とした工事費用に対し、50万円を上限に2分の1まで助成してくれます。ただし、常陸太田市の空き家バンク(※1)に利用登録されていることといった条件が指定されています。
※1 空き家バンクとは
空き家を売却、賃貸に出したいという所有者(管理者)と、空き家を探しているという人をマッチングさせるシステムで、全国で数多くの自治体が設置しています。大手不動産会社などでは、全国の自治体の空き家情報を一元化して発信しているところもあります。
空き家バンクの利用または登録の条件などは各自治体で異なりますので、利用を検討したい人はまず、管轄の自治体に問い合わせてみましょう。
龍ケ崎市では、老朽化が進むなどして周辺の生活環境に悪影響を与えるおそれがある空き家を解体する際、その一部を補助してくれます。
空き家等の解体や、解体工事にかかる仮設工事費用に対し、50万円を上限に2分の1まで補助してくれるとうものです。
ただし、補助対象となる空き家には「空き家等対策特別措置法(※2)」が関わってきますので、事前に窓口に問い合わせておくことをおすすめします。
※2 「空き家等対策特別措置法」とは
正式名称「空き家等対策の推進に関する特別措置法」のことで、平成27年5月26日より完全施行された法律です。同法の規定により、自治体から
・著しく保安上の危険となるおそれがある空き家
・著しく衛生上の有害となるおそれがある空き家と認められた場合、その空き家は「特定空き家」となり、猶予期間内に改善措置を講じなければなりません。
改善にあったっては助言(指導)が行われ、猶予期間内に改善が見られない場合、勧告へと移行します。勧告の時点で固定資産税の優遇措置対象から除外され、最大で固定資産税が6倍に、都市計画税が3倍になります。
それでも改善が見られない場合は命令となり、命令に背くと最大50万円の過料が課せられるほか、猶予期間内に改善が完了しなかった場合は行政代執行が行われます。つまり、自治体が強制的に解体などを行います。もちろん、その費用はすべて所有者に請求がいきます。
空き家バンクに登録されている空き家を購入または賃貸して、町外から利根町に移住してくる人で、かつその空き家に5年以上居住する人、などいくつかの条件がありますが、その際の引越し費用や仲介手数料等に対する助成金です。
最大で20万円受け取ることができます。
笠間市では、空き家バンクに登録されている空き家を購入もしくは賃貸する場合、または空き家の所有者が修繕工事をする場合に補助金を交付してくれます。補助限度額はそれぞれ次の通りです。
修繕する場合
補助対象となる工事費用に対して50万円を上限に2分の1まで
購入する場合
30万円を上限に取得対価の3%まで
賃貸する場合
10万円を上限に家賃2ヶ月分に相当する額まで
稲敷市では、空き家バンクに登録されている空き家に対して「成約」「リフォーム」「家財処分」の3つの項目で助成金を交付してくれます。
成約とは、空き家バンクを通して売買または賃貸借が決定した場合、所有者(管理者)と購入者(賃借者)にそれぞれ5万円ずつ支払われます。
また、上記に該当する空き家の機能を維持または向上させる目的でリフォームを行った場合、最大50万円まで交付してくれます。あるいは、同じ目的で家財を処分する場合、最大10万円まで助成金を交付してくれます。
上記は一例ですが、このように茨城県の市町村の中にも、空き家に関する補助金・助成金を交付してくれる市町村があります。
制度を利用するにあたっての注意点
制度を利用する際、いくつか注意しなければならない点があります。
条件を入念に確認する
補助金や助成金の交付を受ける条件は、各市町村で異なります。「市町村税に滞納がない」「各種工事の着工前に交付が決定されていなければならない」「所有権以外の権利が設定されていないこと」などいくつもあります。
あてにしていたら対象外で受けられなかった、ということのないよう、事前に入念に確認しておきましょう。
最新情報は必ずチェックする
上記でご紹介した情報は、予告なく変更になったり、中止になったりするかもしれません。
あるいは逆に、新たに空き家に関する補助金・助成金制度を創設する市町村が出てくる可能性もあります。
管轄の自治体のホームページなどで、最新情報を入手しておきましょう。
茨城県の空き家事情とは?
NHKの連続テレビ小説「ひよっこ」のヒットなどもあり、茨城県の知名度や魅力は徐々に知れ渡ってきています。
筑波山、袋田の滝、ひたちなか海浜公園、大洗といった自然が溢れる一方、米は全国5位、メロン、ピーマン、鶏卵などは全国1位、といったように農業もさかんです。
まずは、そんな茨城県の空き家事情を見ていきましょう。
茨城県の空き家事情
総務省統計局が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」から、茨城県の空き家事情を探っていきます。
- 空き家数の推移(カッコ内は47都道府県中何番目に多いかを示した数値です)
平成10年 12.9万戸(14位)
平成15年 14.7万戸(14位)
平成20年 17.8万戸(13位)
平成25年 18.8万戸(13位)
このように、空き家数、順位ともに上昇傾向にあります。
特に平成10〜25年の15年間で空き家数はおよそ6万戸も増加しています。
続いて、住宅総数と人口の推移を見てみましょう。
- 住宅総数(カッコ内は住宅総数に占める空き家の割合を示した数値です)
平成10年 106.5万戸(12.2%)
平成15年 113.6万戸(12.9%)
平成20年 122.4万戸(14.6%)
平成25年 126.8万戸(14.6%)
- 人口の推移
平成10年 298.0万人
平成15年 298.5万人
平成20年 297.1万人
平成25年 293.7万人
このような結果になりました。
関東の他の地域では、人口が増えているにも関わらず空き家数も増えている、という現象が起こっている地域が多いのですが、茨城県の場合は人口も減少しております。
人口→減少傾向
住宅→増加傾向
シンプルに考えても、これなら空き家が増加するのは当然と言えるでしょう。
茨城県は、東京に近いことから長年の間、東京のベッドタウンとして開発が進んできました。
各地にニュータウンができたのです。2005年にはつくばエクスプレスが開業したことによって移住者や人口の増加が期待されました。
しかし、上記の人口の推移を見ても分かるように、つくばエクスプレス効果は思ったほどではなく、むしろ人口は減少傾向が続いています。
なお、平成25年の時点での茨城県の空き家数および空き家率は、全国で見てみると次のようになります。
- 空き家数
全国 820万戸
茨城県 18.8万戸(全国のおよそ2%)
- 空き家率
全国平均 13.5%
茨城県 14.6%(全都道府県中第22位)
ただし、特徴として言えるのは、空き家が「急激に増えている」というわけではない、ということです。
もちろん増えてはいるのですが、愛媛県や群馬県、三重県などのように急増している現象は見られません。
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茨城県が抱える空き家問題とは
空き家には大きく「二次的住宅」「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」「その他の住宅」があります。
その内訳によって、抱える問題が変わってきます。茨城県の空き家の内訳を見てみると、次のようになります。
二次的住宅 0.9万戸
賃貸用の住宅 10.4万戸
売却用の住宅 0.5万戸
その他の住宅 6.7万戸
突出しているのが「賃貸用の住宅」で、実に空き家総数のほぼ6割を占めています。
賃貸に出しているが、借り手がつかないまま空き家状態になっている住宅です。
次に多い「その他の住宅」は、転勤、入院といった理由で所有者、居住者が長期間不在の住宅、所有者および居住者不明の住宅、あるいは建て替えのために取り壊し予定となっている住宅などを含みます。
なお、「売却用の住宅」は売却に出していて買い手がついていない住宅を、「二次的住宅」は別荘などたまに寝泊まりする人がいる住宅を指します。
では、茨城県のように「賃貸用の住宅」「その他の住宅」の空き家が多いことで、どのような問題が浮上してくるのでしょうか?
「賃貸用の住宅」の空き家が増えることで生じる問題
「賃貸用の住宅」が空き家になっているということは、入居者がいないということです。
入居者がいない集合住宅は、オーナーの生活が苦しくなるのはもちろんですが、古くなった時の改修費用、建て替え費用などを集めることもできません。
改修工事や建て替えが行えずに設備が老朽化していけば、大きな地震で倒壊してしまうといったリスクを招くことになります。
また、いっそのこと解体してしまおうと思っても、やはりその解体資金が調達できないため放置するしかないケースも少なくありません。
「その他の住宅」の空き家が増えることで生じる問題
「その他の住宅」が空き家になっている場合、その多くは適正な維持管理がなされていません。
いわゆる放置された空き家になっていることが多いのです。
雑草や樹木が伸びてしまい景観を損ねるだけでなく、「誰も住んでいない」と分かってしまうことで
- 放火やゴミの不法投棄
- 未成年者の喫煙や飲酒
- 違法薬物の取引
といった犯罪の現場として利用されてしまうおそれがあります。
また、壁材、屋根材が老朽化した場合
- 台風など強風時に飛散し近隣の住宅および第三者の財産に危害を与える
- ガスが漏れ出し火災や爆発を誘発してしまう
といったリスクも考えられます。
さらに、生ゴミなどが放置してあれば害虫が大量発生しますし、野良犬や野良猫、ネズミが棲みつき糞尿、死骸といった悪臭を放つおそれもあります。
茨城県が抱える空き家問題は、こうしたリスクの高い「賃貸用の住宅」「その他の住宅」をいかに減らしていくか、そして人口の減少に歯止めをかけるか、といったところにあるでしょう。
茨城県や各市町村の空き家対策
次に、補助金や助成金制度以外で茨城県または各市町村が取り組んでいる空き家対策を見ていきます。
茨城県の空き家対策
- 市町村空き家等対策連絡調整会議
市町村ごとの取り組み、または連携した取り組みが円滑に進むように、茨城県内の全市町村を対象とした連絡会議を実施しています。平成27年6月より開始され、これまでに7回開催されています。
- 茨城県空き家等対策連絡調整会議
空き家対策の実施主体となる市町村に対して必要な支援を施すため、茨城県庁内の6部局11課による連絡調整会議を設置し、支援を実施しています。
- 関係団体との連携の強化
茨城県弁護士会、茨城司法書士会、茨城県宅建取引業協会、茨城県建築士会といった関係団体と連携を強化し、空き家をめぐる専門的な相談にも対応できる体制を整えています。
空き家バンク
先ほども触れましたが、各市町村は空き家バンクを設置し、空き家対策を積極的に進めています。
とはいえ、平成29年5月31日時点ではまだ16の市町村でしか空き家バンクが設置されていません。
やはり早めの対策を講じていく必要があるでしょう。
空き家バンクを設置している市町村を一部ご紹介します。
空き家の利活用事例
茨城県に限らず、空き家は日本全体の問題になっています。
全国の自治体の中には空き家を次のように利活用する事例が増えています。
- 公的施設として
地域のコミュニティースペースとして活用しているところは多数あります。茨城県でも、たとえば牛久市が“子どもを遊ばせながら子を持つ親同士が交流できる”スペースとして「牛久市すくすく広場」を作りました。
- 福祉施設として
高齢者向けの介護施設に転用する事例は実は空き家の利活用事例の中でも多い部類に入ります。
少子高齢化が急速に進む日本において、こうした利活用は今後も増えてくるものと思われます。
- シェアハウスやゲストハウスとして
空き家をリフォームし、複数人でシェアできるシェアハウス、あるいはバックパッカーなどが宿泊するゲストハウスに活用する事例も増えています。
- DIY賃貸物件として
契約内に借り手側が自由にリフォームしたり模様替えをしたりできるという条件を盛り込んだDIY賃貸物件も増えています。
ほとんどの場合、退去時の原状回復が不要なため、近年特に人気がある活用事例です。
このように、空き家はアイデア次第でまだまださまざまな利活用方法を見出すことができます。
老朽化が激しく、設備が陳腐化してしまった空き家は解体がベストかもしれませんが、そうでない場合、地域の特性や時代に合った利活用方法を考えてみるのも、立派な空き家対策の一環となりうるのではないでしょうか。
茨城県は空き家対策に一生懸命
今回は、茨城県の空き家事情とその対策、そして空き家に関する補助金・助成金制度をご紹介してきました。
緩やかながらも人口の減少と空き家数の増加が続いている茨城県は、他の都道府県と比較すると、まだまだ各市町村が積極的に空き家問題に取り組んでいるとは言いがたいのが現状です。
人口の減少は確実にやってくるものです。できるだけ早く対策を講じて欲しいところです。
また、すでに空き家の所有者になっている人は、空き家バンクを利用したり、新しい利活用方法を模索したりするなどして、将来的に「特定空き家」になってしまわないよう、対策を講じておきましょう。
もし、老朽化した空き家を所有しているという人は、補助金・助成金制度を活用して、解体工事を行うことも検討しましょう。
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