日本各地で深刻化している空き家問題ですが、今回はその中の神奈川県に焦点を当て、空き家数の推移や現状、神奈川県が取り組んでいる対策などを紹介していきます。
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神奈川県の空き家件数とその内訳は?
一般的に空き家件数は、総務省統計局が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」の結果を元にしています。
直近で行われたのは平成30年です。それ以前の調査結果と比較して推移を見てみましょう。
神奈川県の空き家件数の推移 | 調査年 空き家数 |
昭和63年 | 18万2,300戸 |
平成5年 | 19万5,700戸(↗) |
平成10年 | 27万1,200戸(↑) |
平成15年 | 34万9,100戸(↑) |
平成20年 | 42万8,600戸(↑) |
平成25年 | 48万6,700戸(↑) |
平成30年 | 48万4,700戸(↘) |
このようになりました。神奈川県は東京都・大阪府に次いで全国で3番目に空き家数が多い県です。
ちなみに全国の空き家数は【848万9,000戸】です。
これは前回調査時から3.6%(29万3,000戸)増という数字で、調査開始以降、最多となっています。
神奈川県は全国の空き家数の5.7%を占めていることになります。
ただ、不思議なことに全国の空き家数が増え続けている一方、神奈川県では平成25年の48万6,700戸から、平成30年の48万4,700戸と空き家数が微減していることが分かります。
空き家の種別
空き家は大きく「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」「二次的住宅」「その他の住宅」に分けられます。
「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」
文字通り賃貸や売却に出しており、借り手または買い手が見つかっていないため空き家になっている住宅を指します。
「二次的住宅」
別荘やたまに生活する人がいる住宅などを指します。
「その他の住宅」
上記のいずれにも属さない住宅です。
所有者不明のものも「その他の住宅」に含まれますので、都道府県としてはもっとも増やしたくない空き家の種別と言えそうです。
空き家の内訳
神奈川県における前回と今回の調査結果を見ると、次のようになります。
賃貸・売却用 | 二次的 | その他 | |
平成25年 | 32万8,800戸 | 2万4,600戸 | 13万3,200戸 |
平成30年 | 31万8,800戸(↓) | 1万8,100戸(↓) | 14万7,700戸(↑) |
空き家総数に占める割合(平成30年) | 65.8% | 3.7% | 30.5% |
ということで、神奈川県では「賃貸・売却用住宅」「二次的住宅」における空き家は減りましたが「その他の住宅」における空き家が増えた、という結果になりました。
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神奈川県の中で空き家数が多い市町村は?
ここまでは神奈川県全体のお話でしたが、もう少し詳しく見ていきましょう。
神奈川県の中でも空き家数が多い市町村トップ5を紹介します。
順位 | 市町村 | 空き家件数 |
1 | 横浜市 | 17万8,300戸 |
2 | 川崎市 | 7万3,800戸 |
3 | 相模原市 | 3万6,200戸 |
4 | 横須賀市 | 2万8,800戸 |
5 | 藤沢市 | 2万2,400戸 |
横浜市がダントツで空き家数が多いですね。
内訳は5つの市で「賃貸・売却用」がもっとも多く、次いで「二次的住宅」「その他の住宅」の順になりました。
この辺りは神奈川県全体の内訳と同じようです。
神奈川県は空き家件数こそ多いが空き家率は低い
ここまでお読みいただく限り、神奈川県は空き家件数が多い県という印象があると思います。
もちろん、その通り空き家件数が多い県です。
ところが、数字の妙と言いますか【空き家率】で考えると、また違う結果が見えてきます。
空き家件数と空き家率の違い
- 空き家件数:神奈川県内にある空き家のトータル数
- 空き家率:神奈川県内の住宅総数に対する空き家の比率
まずはこの違いを覚えておいてください。
神奈川県の空き家率
神奈川県の空き家率 | 全国平均 | 都道府県別順位 | |
平成20年 | 10.5% | 13.1% | 46位 |
平成25年 | 11.2% | 13.5% | 42位 |
平成30年 | 10.8% | 13.6% | 44位 |
なんと、空き家件数では全国トップクラスの神奈川県が、空き家率で見てみると47都道府県中ほぼ最下位に近い位置にいることが分かります。
つまり、神奈川県は「住宅総数が多いため比例して空き家件数も多くなっているものの、住宅総数における空き家率は日本でもかなり低い」ということになります。
ちなみに、空き家率ワーストは山梨県です。
神奈川県と山梨県の空き家率の間には、実に10%もの差があります。
「住宅が少なく、空き家が多い」のが山梨県、「住宅が多く、空き家も多い」のが神奈川県という見方ができますね。
空き家自体、日本が抱える大きな問題ですからどちらが良い・悪いとは言えませんが、空き家数が多いのも、空き家率が高いのも、それぞれの状況に応じた対策が必要です。
空き家のリスクと神奈川県が取り組んでいる空き家対策
空き家が増えるリスクはさまざまです。
空き家のリスク
- 放火や不法投棄、未成年の喫煙、性犯罪などの温床になる
- 老朽化した屋根や壁などの建材が強風で飛散する
- 建物が倒壊し近隣住民に危害を与えたり、災害時の避難経路を塞いだりしてしまう
- 地域の景観が損なわれる
- 害虫の大量発生や害獣が棲み着き糞尿、死骸などの悪臭の元になる
これらは一例ですが、ざっと挙げただけでも空き家が増えるとこれだけのリスクが生じます。
集合住宅なら、躯体そのものが一気に老朽化し、地震による倒壊リスクも生まれます。
もちろん神奈川県だけではありません。日本全体で考えていかなければならない問題ですが、具体的にどういった取り組みを行っているのか、見ていきましょう。
神奈川県による空き家への取り組み
神奈川県空家等対策計画(各市町村の取り組み)
これは、平成27年5月26日に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、空き家対策特別措置法)」に基づくものです。
まず、各市町村が空き家の実態調査を実施し、「倒壊などの危険がある空き家」「衛生上問題がある空き家」「適正に維持管理がなされていない空き家」などを「特定空き家」に指定します。
「特定空き家」に対し、はじめに「助言・指導」を行い、所有者が自分の意思で改善するよう促します。
万が一応じないときは、一定の猶予を設けて改善を促す「勧告」を行います。
この時点で、固定資産税や都市計画税の特例の対象外となります。
つまり税金が跳ね上がるということです。
それでも改善が見られない場合、命令が下されます。
命令に応じなければ、最終手段である行政代執行(基本的には強制解体)へと移行します。
その際にかかった費用はすべて、空き家の所有者へと請求がいきます。
空き家バンクの設置
「空き家を譲りたい人」と「空き家を求めている人」をマッチングさせるサービス、空き家バンクも運用されています。
しかし、実際に運用している市町村が多くない(令和2年1月時点でわずか11市町村)うえ、登録されている空き家も少ないなど、有効活用できているかと言えば疑問です。
有用な打開策はまだない
- 空き家の所有者などから相談を受ける窓口を設け、ニーズを把握する
- 空き家を活用した事業を展開しようとしている事業者に登録してもらう
これらをマッチングさせるプラットフォームを策定しているところのようですが、具体的に空き家件数を減らす効果があるかどうか、といったところはまだ不透明です。
神奈川県の空き家まとめ
神奈川県の空き家件数や空き家率、空き家対策などを、ポイントを絞ってお伝えしてきました。
空き家対策は、どちらかというと都道府県より市町村に重きが置かれています。
民間団体や企業による空き家活用サービスも続々と登場していますが、空き家件数が年々増加しているのも事実です。
特に空き家件数が多い神奈川県や各市町村が、今後どういった取り組みを行っていくのかは、他の都道府県や市町村にとっても大きな意味を持つでしょう。
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