深刻な空き家問題
空き家は増加の一途を辿っています。
その中でも特に注目を集めているのが「マンションの空き家」が急増しているという点です。
戸建ての空き家は、雑草が生い茂っていたり人がいる気配がないなど、それとなく一目で分かるものも多いのですが、マンションの空き家(空室)となるとそうは行きません。
マンションの空き家問題は戸建てとはまた別の問題が潜んでいます。
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「放置されたままの空き家」が問題なのです!
空き家には大きく2種類に分けることができます。
「問題ない空き家」と「深刻な空き家」です。
問題ない空き家
例えば別荘として所有していて、利用する期間以外は特に誰も済んでいないという空き家は、定期的に(とはいえ頻度は極端に少ないと思われますが)人が住んでいる・管理されていると捉えることができます。
また、賃貸用あるいは売却用に購入した分譲マンションで、入居者や購入者が見つからずに一時的に空き家状態となっている部屋なども「問題ない空き家」含まれます。
深刻な空き家
早急に取り組まなければならないのはこちらの「深刻な空き家」です。
所有者が単身高齢者で施設に入ってしまったり長期入院していたり、あるいは死亡するなどして誰も住んでいないばかりか、管理も行き届かなくなってしまっている空き家です。
また、賃貸用・売却用に購入した分譲マンションで一時的な空き家となっているケースは「問題ない空き家」とお伝えしましたが、こちらも長期間に渡って入居者・購入者が見つからない場合は「深刻な空き家」と捉えることができます。
総務省統計局の「平成25年住宅・土地統計調査」では、この「深刻な空き家」、つまりほぼ放置状態にある空き家は、空き家総数819.6万戸のうち318.4万戸、実に38.8%にものぼるとされています。
放置されたままの空き家が増えるとどうなるのか?
今回は特に「マンション」にスポットを当てて解説をして行きます。
増え続けるマンションの空き家
マンションの空き家率は、その物件が古いほど高くなる傾向にあります。
例えば1971年~1980年に完成したマンションでは9.2%、それ以前に建てられたマンションでは11.1%という具合です。
2023年には、築30年を超えるマンションが全体のおよそ40%にまで達するというデータも出ています。
ニッセイ基礎研究所・金融研究部不動産市場調査室長である竹内一雅氏が2016年10月27日に公表した「【図解】あなたの隣の家、実は空き家かも?-都市別・エリア別に空き家率を見える化してみた」によりますと、各都道府県のマンションの空き家率は次のようになります。
東京都区部
最も空き家率が低い…江東区(3.3%)
最も空き家率が高い…世田谷区(12.8%)
北海道札幌市
最も空き家率が低い…清田区(2.9%)
最も空き家率が高い…東区(16.2%)
愛知県名古屋市
最も空き家率が低い…中川区(5.5%)
最も空き家率が高い…北区(15.5%)
大阪府大阪市
最も空き家率が低い…東住吉区(4.2%)
最も空き家率が高い…浪速区(36.1%)
福岡県福岡市
最も空き家率が低い…博多区(4.8%)
最も空き家率が高い…東区(13.1%)
人口や住宅数が異なりますのでパーセンテージだけでの単純比較はできませんが、東京都世田谷区などは特に高級住宅街のイメージがあるにも関わらず、都区部の中では最も空き家率が高くなっています。
また大阪市浪速区においては実に36.1%という驚きの空き家率が明らかになっています。
さらに、木造アパートの空き家率を見るとマンションのそれよりも高くなります。
■東京都区部:19.0%
■北海道札幌市:26.4%
■愛知県名古屋市:33.9%
■大阪府大阪市:43.4%
■福岡県福岡市:28.0%
今回はマンションにスポットを当てていますので詳細は避けますが、このように日本全体の空き家問題は戸建て住宅のみならず、共同住宅にまで大きな影を落としているのです。
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マンションの空き家が増えることで懸念される問題
では、マンションの空き家が増えてくることで、どのような問題が浮上してくるのでしょうか?
老朽化・陳腐化が急速に進む
住宅は、人が住まなくなると一気に老朽化が進みます。
空気が流れなくなりますので腐敗やカビの発生などが進んだり、水が流れなくなりますので排水管がサビたり穴が開いたりという問題が生じます。
賃貸用・売却用で購入したまま入居者が見つからないという物件も同様です。
特にオーナーが遠方に住んでいるケースではより適切な管理が難しくなります。オーナーが単身高齢者などで、病気や死亡により突然放置状態になってしまうことも少なくありません。
マンションに空き家が増えることで【マンション自体の老朽化・設備の陳腐化】が加速してしまうのです。
健全な運営が困難になる
また、マンションは、そこに入居している人たちが共同で運営しているものです。
管理費・維持費・修繕費などを出し合ったり、管理組合によって適切に運営されています。
しかし空き家が多い=入居者が少ないマンションでは管理費・維持費・修繕費などを十分に積み立てることができず、結果として大規模改修工事ができず、かといって建て替えもできず、老朽化して行くのを黙って見ているしかないという状況になってしまうケースも少なくありません。
しかし、もし管理費・維持費・修繕費などが適切に積み立てられており、かつ管理組合も健全に運営されている場合でも問題があるケースもあるのです。それは区分所有者が高齢者となってしまっているケースです。
大規模改修工事をしたり、建て替えをすることによって「入居者が集まる」可能性もあるのですが、高齢者の区分所有者の中には「面倒」「今さら立て替えなくて良い」という考えを持っている方も少なくありません。
その場合はやはり静観せざるを得なくなってしまいます。
犯罪の温床になりかねない
空室となっている部屋が多いマンションは、しばしば犯罪の温床となってしまうケースもあるのです。
特に1階部分に空き家は多い、同じフロアに空き家が多いなどという場合、侵入しやすい・侵入しても人目に付きにくいという、悪意を持った者には好都合な条件となってしまいます。
一軒家の空き家ほどリスクは高くないかも知れませんが、空き家である以上、マンションであってもこのリスクは排除できるものではありません。
マンションのスラム化
空き家が増えたマンションのことを「マンションのスラム化」「スラム化した老朽マンション」などと言ったりもします。
もちろん国も行政もこのことは把握していますし、例えば東京都においては「良質なマンションストックの形成促進計画」を策定し、今後10年間の目標として・・・
・管理組合による自主的かつ適正な維持管理の促進
・管理状況の実態把握と管理不全の予防・改善
・管理の良好なマンションが適正に評価される市場の形成
・マンションの状況に応じた適切な再生手法を選択できる環境の整備
などを掲げています。
しかしながらこれにより適切に管理がされるのは健全に管理組合が運営されているマンションがメインになると予想されており、すでにスラム化が始まっているマンション、始まりつつあるマンションなどに対する問題解決には至らないであろうと言われています。
自分が住む地域の空き家率に興味を持つことも大切
すでにマンションを購入している方は、今、自分が住んでいる地域の空き家率はどれくらいなのか?
ということに興味を持ち、把握しておくことも大切です。
またこれからマンションの購入を検討している方は、管理組合が健全に運営されているか、大規模改修工事などのメンテナンスは適切に行われてきたかなど、運営面もしっかりと確認をするようにしましょう。
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