「土地を売却したいけど、建物があるからなかなか買い手がつかない」という方で「建物の解体費用を用意するのが難しい」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか?
この記事では「土地売却費用から解体費用を捻出することは可能なのか?」といった疑問や「解体費用の税務上の扱いはどうなるのか?」といった疑問について解説しています。
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土地売却費用から解体費用を“直接的”に捻出することは難しい
結論から申し上げますと、解体費用に相当する費用を、土地売却費用から “直接的”に捻出するのは難しいです。
例えば一つの案として「解体費用に相当する額を売却価格に上乗せ」すれば可能かもしれません。
しかし、その場合は「その金額で買い手が無事に見つかれば」という話になってきます。
それに、相場を踏まえて土地の売却価格を設定している場合、解体費用を上乗せすると相場よりも高くなることになるため、買い手がつきにくくなることが想定できます。
また、土地を含めた不動産の売買には“値段交渉”が欠かせませんので、値下げ交渉によって解体費用に相当する額あるいはそれに近い額を値引きした場合、実質的に“捻出”できなかったこととなってしまいます。
※土地の売却価格を設定する際は「理想の価格」「周辺の相場も含めたボーダーライン」「これ以上妥協できない価格」を決めておき、その中で交渉を進めていくことが大切です。
土地売却にともなう解体費用は「譲渡費用」になる!
土地売却における解体費用を、売却費用から“直接的”に捻出することは難しいですが、土地売却にともなう解体費用は経費として計上することが可能です。
結果として、課税対象となる譲渡所得を小さくすることができますので、節税という形で還元される可能性があります。
少し詳しく解説します。
土地を売却して得た利益を「譲渡所得」と言います。譲渡所得は、純粋に土地の売却価格から
- “取得費(その土地を取得したときにかかった費用)”
- “譲渡費用(その土地を売却するにあたってかかった費用)”
の2つを差し引いた残りの金額です。
仲介手数料の相場などはいったん無視し、分かりやすい金額で計算すると次のようになります。
《売却金額》3000万円
《取得費》2000万円
《譲渡費用》500万円
譲渡所得=A:3000万円−B:2000万円−C:500万円=D:500万円
ということで、譲渡所得はD:500万円ということになります。
ここに所得税や住民税などが課税されます。
そして、解体費用は上記Cにあたる「譲渡費用」に含まれます。
つまり、直接的に解体費用を“捻出”することはできませんが、経費に含めることで課税対象となる譲渡所得を小さくすることができます。
解体したのがマイホームなら「3000万円の特別控除」が受けられるかも?
「マイホーム」あるいは「マイホームと土地」を売却した場合、所有期間にかかわらず最高3000万円までの特別控除を受けることができます。
マイホームと土地を売却して、残った譲渡所得が3000万円までであれば、所得税や住民税を納めなくて済むというわけです。
この特別控除は、原則として「マイホーム」または「マイホーム付きの土地」を売却した場合ですので、建物を解体して土地だけを売却した場合、特別控除は適用されないと考えられます。
ところが、ある要件を満たした場合に限り「建物(マイホーム)を取り壊した後、土地を売却した場合」であっても、3000万円の特別控除を受けることができるケースがあります。その要件とは次の3つです。
- 解体した日から1年以内に土地の売買契約をしていること
- 住まなくなった日から3年が経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること
- 解体してから土地の売買契約をした日まで、貸付けその他の用に使用していないこと
※マイホームの一部を解体してその分の土地を売却したとき、残ったマイホーム部分が居住可能だった場合、この制度は適用されません。
参考:国税庁 No.3320 マイホームを取り壊した後に敷地を売ったとき
3000万円の特別控除を受けられると仮定してシミュレーションしてみると、次のようになります(仲介手数料の相場等は鑑みず、分かりやすい金額で単純計算しています)。
《売却金額》5500万円
《取得費》2000万円
《譲渡費用》500万円
譲渡所得=5500万円−2000万円−500万円=3000万円
通常であれば3000万円に対する所得税(復興特別所得税)・住民税などが課税されるわけですが、3000万円の特別控除が受けられれば、それらは課税されません。
やはり解体費用を捻出できるわけではありませんが、解体費用を譲渡費用に計上したことで、結果として節税できたということになります。
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土地売却における解体費用は誰が負担する?更地にするかの判断基準は?
ところで、そもそも「土地売却における解体費用は誰が負担するのが基本なの?」「解体するかどうかの判断基準は?」といった疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
いずれもケースバイケースとなりますが、基本的な部分は把握しておいた方が良いでしょう。
土地売却における解体費用の負担者は?
土地が「現状渡し」であれば、建物の解体費用は買い手側が、「更地渡し」であれば、建物の解体費用は売り手側が負担するのが基本です。
しかし、法律などでどちらが負担するか決められているものではありません。
つまり、理論上は売り手と買い手が合意すれば、どちらが負担しても構わないということです。
ただし、前述したように建物付きの場合、買い手がつきにくいといった現実があります。
また「こちら(買い手)が解体費用を負担するから、その分、土地の価格を下げてくれ」など価格交渉のネタにされやすいといったリスクもあります。
そのため、売り手側が解体費用を負担して売却するケースが多くなっています。
解体するかどうかの判断基準は?
建物を解体して更地渡しにするかどうか、判断に迷っている方もいることと思います。
一般的に、木造住宅の場合は築25年を過ぎると、多くの不動産業者がゼロ査定すると言われています。
建物としての価値がないため、査定額がつかないということです。
※ただし、あくまで一般的な例です。25年以上経過していても居住用として十分使える建物も多く、その場合は査定額がついたり、建物付きで買い手が見つかったりするケースもあります。
こうした一般的な基準を踏まえながら、不動産業者に査定を依頼して最終的に解体するかどうか判断すると良いでしょう。
なお、建物を解体すると固定資産税が最大6倍に膨れ上がります。
固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に対し、その年1年分の税金がかかってくるものです。
たとえば1月10日に解体すると、残りの11ヶ月分、建物がないにもかかわらず固定資産税を支払わなければなりません。
解体する場合はタイミングも重要になってくると覚えておきましょう。
解体費用を土地売却で捻出のまとめ
土地売却にともなって生じた解体費用は、売却費用の中から直接的に捻出するのは難しいものです。
しかし、土地売却のためにかかった解体費用は「譲渡費用」に含められることや、要件を満たせば「3000万円の特別控除」が受けられることがあるなど“税金面”という違った形で還元されることがあります。
建物付きの土地の売却を検討している方、すでに解体したあとの土地の売却を考えている方などは、こうした基礎知識を蓄え、国の制度を上手に活用していくことで、節税といった還元を受けられるようにしておきましょう。
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