古民家の解体費用と補助金
日本全国に存在する古家や古民家。解体するとなった場合、その費用相場はどれくらいなのでしょうか?
自治体から受けられる補助金や、解体せずに利活用した事例などと併せて解説します。
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住宅・古家・古民家…まずはそれぞれの違いを知ろう!
住宅、古家、古民家いずれも「家」を指しますが、それぞれ微妙に意味合いが異なります。
ここでは次のように区別をして記載します。
住宅
現在も居住用として使われている建物、あるいは空き家であっても築年数が浅いものを住宅と言います。
古家
築年数が経って古くなり、住宅としての機能性が著しく低下し、資産価値もほとんどない建物を古家と言います。
一般的な空き家も古家として記載します。
古民家
築50年以上が経過した建物で、例えば釘を使わないなど伝統的な日本の建築方法で建てられた建物を古民家と言います。
この3者に明確な定義はありませんが、ごく一般的にはこのような線引きがなされていますので、本記事内でも上記のように区別します。
今回は、この中の古家と古民家の解体費用や受けられる補助金、利活用の例などを解説して行きます。
古家や古民家の解体費用相場は?
古家の解体自体は一般の木造住宅の解体とさほど変わりません。
坪あたり25,000円~35,000円程度が相場と言われています。
また、古民家については若干高めと言われていて、坪あたり30,000円~50,000円が相場のようです。
ただ、この相場は様々な条件によって変動します。
例えば古家の中には長屋なども含まれています。
両隣が住宅に挟まれている場合、外壁を復旧させる工事が必要となりますので、解体費用の総額は相場より高めになります。
また、一軒家として建っている古家や古民家でも、狭小地に建てられているため重機が使用できない場合などは人力での解体となるため、工期が長くなって解体費用の総額が相場よりも高くなる可能性があります。
地域や建物の周辺環境、その他の条件によって解体費用は変動するということを覚えておきましょう。
古家や古民家を解体すると固定資産税が上がるって本当!?
家が建っている土地の場合、その土地にかかる固定資産税が軽減されるという特例があります。
古家や古民家であっても同様で、空き家となってしまっていても軽減措置の対象となります。
解体して土地だけになった場合は特例措置が受けられなくなりますので、条件によっては固定資産税が最大で3倍~4倍程度になる可能性があります。
ただし例外もある!
2015年に完全施行された「空き家等対策特別措置法」によって、改善勧告の対象となってしまった場合は、たとえ家が建っている状態でも固定資産税の軽減措置対象から外れてしまいますので覚えておきましょう。
ちょっと待って!古家の取り壊し。解体以外にもある古家の活用方法
古家は、そのままであれば住宅としての機能性も低下していて、資産価値などもほぼゼロに等しい建物です。
しかし、アイデア次第では解体しなくても利活用でき、資産価値を高めることができるケースも少なくありません。
もし「解体しかない」ほど老朽化している建物でない場合、次のような活用方法を検討してみてはいかがでしょうか?
DIY型の賃貸物件に!
近年、田舎暮らしが見直されて都会から地方に移住する人が増えました。
特に若い人の間では古家や古民家を購入して自分の手でリノベーションを行ういわゆるDIY人気が高まっていて、居住用のほか、カフェや民宿など様々な利活用を始めています。
住むのに支障が出てしまう状態はさすがに修繕しなければなりませんが、そうでなければ借主が自由にDIYできる賃貸物件として貸し出すのも一つのアイデアです。
ただしその場合は事前にDIY可能な箇所や範囲などの取り決めをしっかりと行う必要があります。
改装OKにして店舗用賃貸物件に!
立地など条件は限定されてしまいますが、昔ながらの家屋の趣を残しつつ商売をしたいと考える人もいますので、特に市街地などであれば改装OKの店舗用賃貸物件とすれば借り手がつく可能性があります。
ただし改装OKとなると、ほぼスケルトン状態(柱・壁・床・梁・基礎など躯体のみが残る状態)で貸し出すことになりますので、古家や古民家への思い入れが強い場合は不向きかも知れません。
シェアハウスに!
ここ数年で人気が急上昇しているシェアハウス。これもやはり立地に影響を受ける部分もありますが、比較的利便性が高い地域であれば借り手がつく可能性は高くなります。
ただしシェアハウス用に改装したり、老朽化・陳腐化している箇所は修繕しなければなりませんので、ある程度の投資は避けられません。
上記のような賃貸物件では入居者の管理やトラブル対応なども必要になりますので、じっくり検討することをお勧めします。
地域のコミュニティスペースとして提供!
集会所やこども食堂など、地域の住民が気軽に利用できるコミュニティスペースとして自治体やNPO団体などに提供するのも一つのアイデアです。
賃貸と違って収益にはなりませんが、地元への貢献という意味ではとても意義のある活用方法と言えます。
文化施設として提供!
例えば
- 歴史的な出来事があった土地に建っている
- 自治体が古くからの町並みを大切にしている
- 伝統的な日本の建築方法で建てられていて風情がある
などという場合は、資料館や図書館などの文化施設として自治体やNPO団体に提供するという方法もあります。
また、一般社団法人・全国古家再生推進協議会では様々な「古家活用成功事例」も掲載されています。
このように、古家や古民家は必ずしも解体しなければならない訳ではありません。
老朽化の度合いや立地など条件は限定的ですが、アイデア次第では有効活用できるということもぜひ、覚えておきましょう。
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古家や古民家に解体助成金(補助金)はあるの?
古家や古民家は基本的に空き家ですので、各自治体が独自に行っている助成金・補助金制度を活用することは可能です。
ただ、各自治体ごとに助成金や補助金を受けるための「要件」や「受け取れる時期」「限度額」などが異なります。
古家や古民家の解体助成金(補助金)制度の例
木造住宅密集地域がある東京都北区では「燃え広がらない・燃えないまち」へと改善するために、老朽建築物(ここでは古家や古民家と解釈します)を解体する際にその費用の一部を助成しています。
- 古家や古民家の解体および整地に要した実費
- 毎年公表される国が定める単価に、古家や古民家の助成対象床面積をかけた額
- 160万円
上記のいずれか少ない額を上限として助成してくれます。
愛知県豊橋市では、木造住宅無料耐震診断(豊橋市)または木造住宅耐震診断(愛知県)のいずれかを実施して「倒壊する可能性が高い」と診断された住宅に対して、解体費用の一部を補助しています。
古家や古民家は築年数が経っていますので、この要件に当てはまる可能性が高くなります。
- 解体工事費用の23%の額
- 20万円
上記のいずれか少ない額を上限として補助してくれます。
このように自治体ごとに異なりますので、助成金や補助金制度の有無、要件などの詳細は古家がある住所を管轄している自治体に問い合わせてみましょう。
古民家再生補助金とは?
「解体」に対する助成金・補助金がある一方で、古民家の「再生」に対する補助金制度を設けている自治体もあります。
古民家再生補助金制度の例
新潟県では歴史的文化や伝統的木造建築技術の維持・継承、再生現場を通じて建築技術者の育成を推進するなどの目的で「ふるさと古民家再生事業」を取り入れています。
「軸組構法」「伝統的な継ぎ手や仕口」「湿式工法」「草葺き屋根」などの伝統的木造建築技術によって造られ、概ね50年以上が経過した住宅の解体・再築・全面改修などが対象となります。
補助金は設計および工事監理に要する費用が対象で、100万円を上限としてかかった費用の2分の1までを県が補助するというものです。
兵庫県丹波市では、現存する古民家を有効活用することで伝統的木造建築の維持・継承、および歴史的文化やまちなみ景観形成の普及・推進を目的として「古民家再生促進支援事業補助金」を取り入れています。
補助対象経費が500万円~1,000万円未満であれば250万円を、1,000万円以上であれば333万円を上限ん補助を受けることができます。
岡山県倉敷市では、古き良き町並みを守り続けるために古民家や町家の再生整備費用の一部を支援しています。
対象は「町並みの保全や創出」「エリアの再生」「町おこし」のきっかけとなることが期待できる事業で、古民家や町家の再生整備がそこに含まれています。
300万円を上限に、事業総費用の2分の1までを倉敷市が支援するというものです。
このように古民家の再生に関しては各自治体ごとに独自の支援制度を設けています。
思わぬ利活用方法が見つかるかも知れませんので、解体の前に一度、管轄の自治体がどのような支援を行っているか確認してみてはいかがでしょうか。
知っておきたい「古家付きの土地を買う際の注意点」とは!?
中古物件を探していると「古家付き」の文字を見かけることがあります。
これはそのまま、土地の上に古家が建っているという意味になります。
古家をリノベーションして居住用として利用できるのであればまだ良い方ですが、残念ながら解体するしかない古家であることが多いのが現実です。
古家付き土地の場合、周辺相場と比較すると価格が割安に設定されていることがほとんどですので、地域などによっては買い手が殺到することもあります。
しかし、ここで注意しておきたいポイントがありますので押さえておきましょう。
解体費用がいくらになるのか?
前述のようにリノベーションして居住用として利用できる古家は良いとして、解体をしなければならない場合、その解体費用がいくらかかるのかは最重要ポイントと言っても過言ではありません。
解体費用が高くついてしまえば割安で購入したお得感がなくなるどころか、土地だけを購入した方が安かった、となってしまうケースもあるためです。
解体費用は地域や床面積、立地条件など様々な要因によって大きく変動しますので目安となってしまいますが、古家はほとんどが木造ですので坪あたり25,000円~35,000円程度を見ておくと良いでしょう。
50坪程度の古家とすると125万円~175万円という計算になります。
この費用を支払っても割安となる場合はお得に購入できたと言えますが、そうでない場合は逆に高くついてしまったということになります。
残置物の処分費用は別!
古家の中に家財道具やリサイクル家電、その他の残置物がある場合、その処分費用は解体費用とは別になります。
地中障害物にも注意!
建物を解体した後、地中(1m~1.5m程度)に不要な物がないか確認します。
これは、次に基礎工事をする際にきちんと行えるようにする目的があります。
ここで…
- 以前建て替えを行った時のコンクリート・木材・瓦・基礎・その他ゴミ
- 浄化槽
- 大きな石や岩
などが見つかると、それを撤去するための費用が必要になります。
これらの費用が発生したため高い買い物になってしまった、ということを避けるためにも、契約前にその土地について調べておく、あるいは解体費用は折半、残置物や地中障害物の撤去費用は売主が負担するなど決めておきましょう。
古家や古民家の解体業者の選び方のポイント!
古き良き日本の伝統的な古民家や、まだまだ利活用できる可能性がある古家はできれば継承して行きたいものですが、何らかの事情によって最終的に解体を選択しなければならないこともあります。
事情は何にせよ大切な建物を解体することになるのですから、やはり信頼のおける解体業者に依頼したいものです。
古民家の解体実績がある
建物はその構造や周辺環境など、一つ一つが異なります。
職人さんの経験や、色々なタイプの建物を解体しているという「実績」は信頼に繋がります。
まずは古家や古民家を解体したことがあるかどうかがポイントです。
地域密着企業である
その地域に根付いて営業している解体業者は、やはり信頼性が高いと言えます。
それに加えて実績があれば、ほぼトラブルは皆無と考えて良いでしょう。
スタッフの対応が良い
営業マンや施行担当者の対応、疑問点に明確に答えてくれるか、近隣にも配慮してもらえるかなど、気持ち良く解体工事を終えるにはスタッフの対応もとても重要なポイントです。
解体費用が明確
総額などの大ざっぱな見積もりではなく、項目ごとに費用が記載されているか、追加費用の可能性などをきちんと説明をしてくれるかどうかも押さえておきたいポイントです。
不要なトラブルを防ぐためにも、これらのポイントを踏まえて信頼できる解体業者を選ぶことが大切です。
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